中川 元典 院長の独自取材記事
さわらぐち胃腸肛門クリニック
(福岡市早良区/藤崎駅)
最終更新日:2021/10/12

福岡市営地下鉄空港線・藤崎駅のすぐそばに位置する「さわらぐち胃腸肛門クリニック」は、明治通り沿いの藤崎メディカルビル5階にある。胃や大腸といった消化器から肛門までに起こるさまざまな症状に対応しており、中川元典院長は「患者さんが何に困っているかをしっかりと伺いながら、納得のいく説明と治療を行うことが重要」と話している。そのため便秘などの身近な悩みをはじめ、ストレスを原因とした過敏性腸症候群の治療にも取り組んでいる。一方でクリニックには経鼻胃内視鏡や大腸内視鏡を備えており、がんといった重大な病気の早期発見などにも尽力。そんな中川院長に、胃腸肛門に関する疾患や診療コンセプトなどについてじっくりと話を聞いた。
(取材日2021年4月23日)
診査診断、説明、治療を当たり前に提供していく
大学卒業後は小児外科の道に進まれたそうですね。

久留米大学医学部を卒業し、そのまま小児外科に入局しました。福岡市立こども病院や聖マリア病院に勤務して、いわゆるでべそと呼ばれる臍ヘルニアや脱腸と呼ばれる鼠径ヘルニアの治療に携わりました。それから一般外科へと移り、大腸グループに所属して大腸がんの治療に関わるなど、胃腸や肛門の疾患を専門的に診るようになりました。肛門疾患というニッチな領域でのキャリアをベースに、2010年に当クリニックを開院。以来、地域の方だけではなく、福岡市内を中心に幅広いエリアから来院いただいています。
クリニックの場所に藤崎を選んだ理由はありますか?
そうですね、特に強い思い入れがあったわけではないのですが、長らく藤崎エリアに住んでいたというのが大きな理由です。地下鉄もありますし、バスも通っているので交通の利便性が高く、また区役所や税務署などの公共機関も集まった場所。少し離れれば住宅地も広がっているので、非常に良いエリアだと思っていますよ。現在は胃腸系であれば、腹痛や下痢、吐き気などの症状、肛門系であれば痛みや出血で来院される方が多く、さまざまな世代の方に利用いただいています。小児外科にも対応しているので、臍ヘルニアや鼠径ヘルニアなどの疾患でお困りのお子さんもいらっしゃいますね。
診療において大切にされていることがあれば教えてください。

何か特別に心がけているということはありませんが、普通に治療を行うことを大切にしています。単に病気を治すだけではなく、患者さんがどういうことに困っているかを重視し、その症状を軽減できるように努めています。特に肛門や便秘に関する訴えは一人ひとり違うので、検査データにこだわらず本人の訴えに対して治療を行うようにしています。納得のいく十分な説明と、それを理解していただくこと、そしてその上で治療を行うことが一番。特別なことをするよりも、むしろ当たり前に診査診断、説明、治療を行うことが大切ではないでしょうか。
生活に支障がある痔や便秘を積極的に治療
肛門の疾患では、やはり痔でいらっしゃる方が多いのでしょうか?

確かに痔でいらっしゃる方がメインではありますね。私のスタンスとしては、正常じゃない状態、普通ではない状態であるものに対して、本人が困っているのであればそれを医療で解決すること。切れ痔やイボ痔、感染症である痔ろうなど、一人ひとりの症状に応じて内服薬を処方したり、外科処置を行ったりしながら治療を進めていきますが、基本的に痛みや出血などで困っていないケースであれば積極的な治療はしません。肛門にはがんや潰瘍もできるほか、痛みや出血の原因が大腸にある可能性もあるため、しっかりと検査をすることが重要です。肛門診察の際にも、必要な部分のみ短時間で済ませるなど、プライバシーに配慮した診察を心がけているので、女性の方にも恥ずかしがらずに来院していただきたいです。
便秘の治療にも取り組んでいらっしゃるそうですね。
一概にこうであれば便秘という診断は難しく、便に関して不安がある状態を改善できればと思い便秘の外来を開設しています。便が出にくい状態は、体質や食生活などさまざまな要因が絡んでいますが、病気のために便が出ないということもあり得ます。例えばがんができてしまい、便が詰まってしまうというケースも。そのためまずは内視鏡検査や腹部のエックス線検査、エコー検査を行い、病気に起因する便秘かどうかを判断します。そこで異常が認められない場合には、基本的には薬を使って改善をめざすことになります。一方で、便が出ないことを気にしすぎないのも重要。毎日お通じがないといけないなど、固執することで便秘が悪化してしまうということも十分考えられますからね。治療では、便を出すことではなく、患者さん自身が困っていることを解決することを重視しています。
内視鏡検査にも対応されているとのことですが、どういう病気が見つかるのでしょうか?

当クリニックでは経鼻による胃内視鏡検査と大腸内視鏡検査を行っています。大腸内視鏡検査のみ、希望者の方には鎮静下での検査を実施。どちらもがんや炎症などの病気を見つけるもので、胃がんや大腸がんの検診のために来院される方も多いですね。基本的に胃内視鏡検査は3~4年に1回、大腸内視鏡検査は4年に1回の受診が望ましいのですが、便に血が混じっていた場合に関しては適宜検査を受けたほうがいいでしょう。おおむね1〜2週間前からの予約が必要ではありますが、検査枠に空きがあれば当日の検査にも対応しています。また吐血や下血があるなど緊急性がある時にはすぐに対応しています。
本質を捉え、患者の困り事を解決していく診療を
過敏性腸症候群の治療にも取り組んでいるとお伺いしました。

過敏性腸症候群(IBS)は腹痛や腹部の不快感を伴い、下痢や便秘などの症状を繰り返す疾患です。ストレスなどを原因として、数多くの方が罹患しているともいわれています。例えば怒られる時におなかが痛くなる方、登校前におなかの具合が悪くなるといったお子さんも、過敏性腸症候群の可能性があります。炎症などの器質的な疾患がないため根本治療が難しく、症状に合わせた対症療法が中心となっていきますが、まずは過敏性腸症候群という病気を理解することが大切だと思っています。
小児外科や外科での受診もできるのでしょうか?
小児外科に関しては、臍ヘルニアや鼠径ヘルニアの診断、経過観察が可能です。実際の治療には手術が必要なため、対応可能な病院を紹介するようにしています。また外科としては、痔の外科処置をはじめ、ケガややけどといった外傷、血豆やイボの切除などの小外科領域に対応しています。
最後に読者の方にメッセージをお願いします。

便秘や過敏性腸症候群など、本質を見ること、症状だけにとらわれないことが大事だと思っています。その中でいかに治療に繋げていくかが、私たちの仕事。例えば便秘の方の中には食物繊維を摂取することにこだわる方がいらっしゃいますが、実際に生きていく上で食物繊維は必要ありません。腸内細菌を育てる、あるいは腸内環境を安定させるという意味において必要なものではありますが、生きるという本質的な面にとってはそれほど重要ではありません。それに排便に関しても毎日必要というものでもないんですよ。高齢者の場合、摂取する食事量が減っていきますが、それでも若い頃と同様に毎日排便しなければならないというのはナンセンス。そういった本質をとらえながら、皆さんの困り事を解決していきたいと思っています。