羽田 達正 院長の独自取材記事
みみ・はな・のど はねだ耳鼻咽喉科
(横浜市青葉区/青葉台駅)
最終更新日:2022/06/23

青葉台駅から徒歩2分、2010年10月に開業した「はねだ耳鼻咽喉科」。院長の羽田達正先生は、長年にわたり頭頸部腫瘍を専門とする医師としてキャリアを積んできた。診療の際は患者の話に熱心に耳を傾け、症状の原因につながるヒントを探す。また、同院が予約制をとっていないのは、そういったシステムが苦手な患者への配慮から。患者一人ひとりのことを考えているからこその判断だ。開業から10年以上経過したが、初心に戻ることを忘れないよう当初の思いである信念を名札の裏に記す。さまざまな症状の患者と接し、新たな発見が多かったと語る羽田先生に、増加傾向の症状や医師としての思いなどを聞いた。
(取材日2022年5月24日)
開業して知った耳鼻咽喉科の幅広さ
まずは先生のプロフィールからお聞かせください。

1982年に日本医科大学を卒業し、医師になってもう40年になります。卒業後は、日本医科大学付属病院、国立がん研究センター、神尾記念病院で勤務医をしてきました。私は耳鼻咽喉科の中でも舌がん、喉頭がん、咽頭がんなどの頭頸部がんという、首から上の悪性腫瘍を専門にずっと経験を積んできました。神尾記念病院では、頭頸部腫瘍を専門とする医師が当時いなかったため、その時の院長が僕に声をかけてくださり、副院長を務めていました。今も当院の休診日に、神尾記念病院で手術をしたり、月に1回は外来で診察をしています。
開業されて10年以上たちますが、勤務医だった頃との違いなどはありますか。
20年間、大学病院とがんセンターでがんを専門として診察をしてきました。その後神尾記念病院へ移り、頭頸部腫瘍を専門としながらも一般的な耳鼻科の病気も診療をするようになりました。そして開業し、さらに広く耳鼻科の診療をすることになり、新たな気づきがたくさんありました。開業当初は、専門性のある医師のほうがよりレベルが高いというような考えがどこかにあったので、開業することに寂しいような気持ちもありました。しかし、実際に開業すると勉強をさせていただくことがたくさんあり、本当に開業して良かったと思っています。私は耳鼻科の医師です、と胸を張って名乗ることができるような気持ちです。
新たな発見とはどのようなことですか。

例えば、耳、鼻、喉は連動しているということです。開業してからより強く、これを感じました。花粉症やアレルギー性鼻炎の鼻の症状を放っておくと、中耳炎になって耳の聞こえが悪くなることがあります。さらに、喉の症状が出てくることも。全部連動しているんですよね。患者さんが耳の症状を訴えているから耳だけを診れば良いというわけではなくて、訴えがなくても常に耳、鼻、喉の全部を必ず診るようにしています。そうやって診察をすることで、例えば「実は前から鼻が詰まっているんです」など情報が引き出せれば、耳の聞こえが悪くなった原因が鼻からだったとわかり、適切な治療につながることも考えられます。
症状の原因を探して、早めの対応を
患者さんの症状で目立つものはありますか。

今は、アレルギー症状を訴えられる方が圧倒的に多いですね。アレルギー症状の治療においては、その原因物質を体内に入れないということが一番大切です。ただ、その原因物質が何なのかを把握している人は多くありません。花粉症と同じ症状だから原因は花粉、と思ってしまう方もいらっしゃると思います。でも、花粉が飛ぶ時期は決まっているので、一年中症状がある人は他の原因物質の可能性が高い。検査をして自分の原因物質を知る、それがまず第一歩です。また、今は良い薬がたくさんありますので、服用して症状が治ればそれで良いという方も多いと思います。でも、薬で抑えることが見込める以上に原因物質を吸い込んでしまうと、症状は再発してしまいます。お薬で症状を抑えながら、原因物質を体内に入れないという努力が必要です。
具体的にはどうすればよいのでしょうか。
花粉は、昼間から窓を開けていない限り部屋の中に入ってくることはあまりありません。外から帰った際に衣類を払うなど、持ち込まない対策をされていても家の中で花粉症のような症状が出る場合は、ハウスダストアレルギーの可能性があります。自分が花粉症だと思われている方は、窓を閉めきって花粉を家の中に入れないようにされていると思います。ただそうすると、ハウスダストの逃げ場がなくなってしまい、それによってアレルギー症状が出ている可能性があります。家の中でも外にいる時と同じような症状が出る場合は、花粉は夜遅くには飛ばないので換気を夜にされることをお勧めしています。しっかりと換気をして、ハウスダストを外に出す。私は治療よりも、このように生活の中でいかにその原因物質を回避できるか、ということがとても重要だと思っています。
補聴器の相談にも対応されていますね。

高齢になるとどうしても聞こえにくくなってしまいます。補聴器は、ご自身の聴力に合ったものかどうかが大切です。当院では、1週間ほど補聴器を貸し出してお試しをしていただいています。日常生活の中で実際に使ってみて、初めて自分に合っているかどうかがわかりますからね。人間の耳は、さまざまな音の中から自分の聞きたい音だけを聞き分ける能力があるのですが、補聴器はそれができません。自分が聞きたくない音も入ってきてしまいます。煩わしく感じる方もいらっしゃると思いますが、慣れていただく必要があります。そのため、なるべく早めに着けて練習をされたほうが良いと思います。また、耳が聞こえにくいことが認知症にも関係すると言われていますから、そういった観点からも、早めに着けられることをお勧めします。
安心と安らぎを届けたい。初心を忘れずこれからも
医師になって良かったと思われたことはありますか。

がんセンターで勤務していた時の患者さんで、結果的に救命できなかった方々も多くいらっしゃるのですが、いまだに4家族とお付き合いをさせていただいています。本来であればご家族にとって、私は自分の大事な人を助けてくれなかった医師であるにもかかわらず、今もこうしてお付き合いをしてくださる。これは残念な結果に終わってしまったけれども、私の誠意はご家族に通じていたのかなと思っています。そういう意味では、私の中で自分なりの勲章というつもりでいます。「娘の結婚が決まったんですけど、先生はどう思いますか?」なんてことまで相談してくださるご家族もいらっしゃいます。でもそんなふうに今でも私に気軽に相談しに来てくださるのは、ご家族となんらかの信頼関係を築くことができたのかなと思いますし、うれしいことですね。
診療の際に気をつけていることをお聞かせください。
患者さんの訴えの中に必ずヒントがあると思っています。先ほどお話をしたように、耳の聞こえが悪くなった原因が実は鼻詰まりからだったとわかるなど、患者さんからのお話が解決の糸口になることもあるでしょう。症状があるところとは違う、関係のなさそうなことをおっしゃっていても、どこかにつながりがあるはずです。最初から頭で決めつけないようにし、何らかのヒントがあるはずと思いお話を聞いています。また、お子さんは自分のつらい症状を正確に言えないことが多いですよね。それをうまく引き出すために、どういう言い方をすればよいかを考えて喋るようにしています。つらい症状や今の状態をうまく引き出せるよう、相手によって対応の仕方を変えています。そういった意味では、医師は役者のような要素が必要ですね。
最後に、医師としての信念や思いをお話しいただけますか。

「医療従事者としての喜びと誇りを持って、患者さんに安心とやすらぎを届けます」。このクリニックの診療理念です。何か問題があったときはこの理念に戻れるよう、私や職員の名札の裏に書いています。医療従事者というのは、喜びもあれば大変なこともありますが、そういうすべてのことに対して、喜びと誇り、責任感を持ちつつ仕事を全うするべきだと思っています。あくまで対象は病気ではなく、その病気をもった人間。だからどんなにいい技術で治療したとしても、診療後に患者さんが「ああ、良かった」と心からの安心感が持てなければ意味がないと思います。すべての患者さんに安心と安らぎを届けられるよう、初心を忘れずこれからも診療を続けたいですね。