全国のドクター8,884人の想いを取材
クリニック・病院 161,496件の情報を掲載(2020年1月18日現在)

  1. TOP
  2. 神奈川県
  3. 川崎市中原区
  4. 武蔵小杉駅
  5. メンタルクリニックエルデ
  6. 坂本 誠 院長

坂本 誠 院長の独自取材記事

メンタルクリニックエルデ

(川崎市中原区/武蔵小杉駅)

最終更新日:2019/08/28

16278 df 1 main 1417500836

JR・東急電鉄武蔵小杉駅から徒歩2分。駅前からすぐのビルの3階に「メンタルクリニックエルデ」はある。精神科のクリニックということもあり、患者のプライバシー管理は厳重だ。待合室はボックスシートで、他の患者と顔を合わせずにすむなど、いたるところに配慮が感じられる。そして同院の特筆すべき点は、日本で数少ない対人関係療法を行っているということ。院長の坂本誠先生は、日本での対人関係療法のパイオニアである水島広子先生のもとで学び、6年前に開院した。精神科は激務であり、勤務医時代は「過労死寸前だった」という坂本先生。今も忙しい毎日だそうだが、治療への熱いエネルギーが伝わってくる。インタビューでは、対人関係療法について、精神科医療のこれからの展望を熱心に語ってくださった。
(取材日2014年11月14日)

プライバシーを厳重に守る、安心のクリニック

6年前に開業されたそうですが、こだわった点はありますか?

16278 df 1 1 1417500836

最近ではだいぶ敷居が低くなりましたが、精神科はやはり入りづらいものですよね。患者さんが気軽に来院できるようなクリニックを作りました。精神科は1階や、クリニックモールの中は嫌がられます。精神科に入る姿を、皆さん見られたくないですからね。この場所は本当にたまたま見つかったのですが、ビルの中にすっと入れて、どの階に行ったのかわからない、そういう理想の場所と言えます。それから、やはり精神科ですから来院された患者さんのプライバシーについては特に気をつけています。待合室はボックスシートで半個室になっていますから、他の患者さんに姿を見られる心配はありませんし、番号制ですのでお名前を呼ばれることもありません。診察室は防音仕様に加え、BGMを流していますから、話し声が外に漏れることもありません。

患者層について教えてください。

武蔵小杉は多くの路線の分岐点になっている駅ですから、一般外来の患者さんは会社帰りの途中の方が多いです。当院は駅から近いですからサッと来られますからね。うつ病の場合ですと、年齢層は男性だと働き盛りの40代。女性はそれよりも少し若くて30代で、会社員の方もいれば主婦の方もいらっしゃいます。原因は、会社員ですとやはり仕事や会社での人間関係のストレスが多いです。主婦の方は産後うつ病、それからご主人やご家族の問題が多いですね。他には地元の患者さんも多くいらっしゃいますが、昔からの住民の方たちや中原区からがほとんど。ここ数年で武蔵小杉は再開発で激変しました。昔はもっとのんびりしていたので、私も驚いています(笑)。タワーマンションが次々に建てられて人口も増えていますね。あとは私がドイツ精神学会の認定医師で、ドイツ大使館からの推薦をいただいているので、多くはありませんが日本で働いているドイツ人の患者さんも来院されます。

最近の患者さんの傾向について教えてください。

16278 df 1 2 1417500836

やはり現代はストレス社会ですから、うつ病が増えているのは実感しますね。それからうつ病の手前の適応障害も多いです。適応障害とは、簡単に説明すると緊張するストレスが多い場面、例えば会社・学校ではうつうつとして調子が悪いけれども、安心できる環境では元気という状態。この病気で会社に行けない人もいます。精神科を必要とする患者さんは増えていますが、やはり来院する最初の一歩が怖いようです。自分が病気かもしれないと悩んでいる方は気軽に来てほしいですね。患者さんの中には「私は正常でしょうか?」と確認に来る方もいます。よく話を聞いてあげて「あなたは問題ありませんよ」と言うと安心されて、ニコニコと帰っていかれますね。

科学的に治療効果があると立証されている対人関係療法

対人関係療法とはどのような治療法なのでしょうか?

16278 df 1 3 1417500836

対人関係療法(Interpersonal Psychotherapy: IPT)は科学的な研究の結果、治療効果があると認められている精神療法です。私の指導者である水島広子先生が日本での第一人者で、アメリカで学ばれた後、日本で広げていらっしゃいます。この治療法はアメリカが特に盛んで、アメリカ精神医学会では認知行動療法と並んで推薦されています。世界でも行われているのですが、日本は薬物療法が中心で、この分野に関してはまだまだこれから。対人関係療法を受けられる精神科はほとんどありません。対人関係療法は、疫学つまり統計学の専門家が、さまざまな治療のデータを集めて、その中で有効なものを選出し、生み出されました。そこからさらに丹念に研究が重ねられ、どの病気に効果があるのかが常に研究されているのです。うつ病、不安障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、摂食障害などに有効性が示されています。摂食障害では、過食症に特に効果がありますね。当院を訪れる患者さんで対人関係療法を希望される患者さんは、摂食障害とPTSDの方がほとんどです。摂食障害に薬物療法は有効ではありません。さまざまな治療を受けても効果がなく、当院にたどり着いたという患者さんもいらっしゃいます。

対人関係療法の治療は、具体的にどのように進めていきますか?

対人関係療法にも適応があり、すべての人に向くわけではないということを、まず言っておかなければなりません。その上で、どういったケースでこの治療法を用いているかご紹介しましょう。わかりやすい例ですと、うつ病の奥さんで、ご主人とうまくいっていないケースがあります。うつ病にかかった当初は、ご主人も世話をしてくれていたのが、病気が慢性的な状態になるとご主人もやる気を失ってしまう。奥さんもご主人に対して自分の気持ちを伝えられない。すると病気もだんだんと悪くなっていってしまうのですね。この点に着目して夫婦間の対人関係を調整し、改善して病気を治していきます。対人関係を使って治療をするのです。治療にあたっては、病気になった背景や、どのような人生を歩んできたのかを問診で詳しく聞いて、患者さんのストーリーを描きます。よくカウンセリングとの違いを聞かれますが、患者さんの悩みを聞いて、整理していくのがカウンセリングです。対人関係療法は、患者さんといっしょに家族や友人、会社での人間関係の問題をどう解決していくか、いっしょに考えて、外で実践してもらいます。この診察室は作戦基地のようなもの。全体的な大きな作戦を最初に立てて、一週間ずつ、行動した変化を報告してもらいます。そしてまた作戦を立てて、外で実践をしてもらう。これを1回50分、全部で16回行いますから、4ヶ月かけて治療していくわけです。時にはご両親や配偶者も一緒にこの作戦会議に同席することもあります。その場合、彼らの話は聞きますが、必ず本人の味方になります。この治療法は本人が主役の治療ですので、精神分析のように患者との距離を取るというようなことはしませんね。

日本で対人関係療法が広まらないのはなぜでしょうか?

16278 df 1 4 1417500836

アメリカのような教育システムがないことがひとつあると思います。精神科医を志す学生で、精神療法を学びたいという人が少なくなっています。更に、精神療法の指導者がおらず、大学の実習でもほとんど行われていませんね。このため薬物療法が中心となっているのが現状です。きちんとした精神療法と薬物療法の併用が理想ですね。もうひとつは、対人関係療法は本を読んだだけでは理解できないということ。経験し、学んでいかなければわからないのです。私自身も最初、本を読んでもわかりませんでしたね(笑)。トレーニングを常に積まなければならないので、なかなか広まっていかないのだと思います。この治療法の大変なところは、1回学べばおしまいというわけではなく、維持や向上をさせるためには勉強会に必ず出席しなければならないところにありますね。当院の他に日本で対人関係療法を専門に行うクリニックは、水島先生のクリニック、それから生野信弘先生の三田こころのクリニックだけではないでしょうか。このため長くお待ちの患者さんもいらっしゃいます。日本各地からも来院されていて、福岡、仙台、松坂、それから石川からいらっしゃった患者さんもいます。

より多くの患者に対人関係療法を行えるようにしたい

先生が精神科医を志した理由を教えてください。

16278 df 1 5 1417500836

私は聖マリアンナ医科大学の出身なのですが、在学当時、同大学では先進的な医療に積極的に取り組んでいました。精神科もその例外ではなく、そのひとつに精神療法がありましたし、それ以外にもパイオニアと言うべき先生方がたくさんいらっしゃった。例えば、認知症の第一人者である長谷川和夫先生がいらっしゃいましたし、薬物療法でも抗うつ剤の生化学の最先端の研究がなされていました。先生方の授業が本当に面白くて、その人間的な魅力にもひかれて精神科を選んだわけです。

プライベートはどのように過ごされますか?

ドイツ語がわかるので、ドイツのポップミュージックを聞いたりします。それから天体観測。本格的な望遠鏡を持っているのですよ。ただ最近はクリニックが忙しくて、なかなかゆっくり星を見られないのが残念です。武蔵小杉に開業したのは、自宅から近いという点にあります。それというのも、やはり仕事を充実させるためには自分自身の時間も大切にしなければなりません。勤務医時代は非常に激務で、勤務先も遠く、心身ともにボロボロの状態でした。いい仕事をするためには、自分の時間と休養が大切だと痛感しています。

今後の展望について、お聞かせください。

16278 df 1 6 1417500836

対人関係療法をもう少し数多くの患者さんに、待たせることなく早め始めたいです。ひとりの患者さんの治療に4ヶ月必要ですから、どうしてもお待ち頂く。当院には、摂食障害の思春期の患者さんも治療に訪れます。思春期の場合、薬物療法が難しく、治療を受け入れてくれる病院が少ないという現状がありますから、もっともっと診ていかなければいけない。思春期はとても変化しやすい時期なので、対人関係療法がうまくいけば、ちょっとしたきっかけで治る可能性が高いのです。ですから思春期の患者さんを待たせるわけにはいかないのですよ。それが歯がゆいのです。例えば、中学3年生の子が1年お待ち頂くと、高校生になってしまう。思春期は環境が変化しやすく、それにより病状が悪化することもあるので、早い段階で治したいですね。そして大人の方でも、精神科のクリニックを受診するか悩んでいる方たちに気楽に来て頂きたいです。やはり精神科に通うというのは、勇気が必要なのでしょう。当院ではプライバシーはしっかり守りますし、患者さん同士が顔を合わせることはありません。皆さんが安心して、気楽に通えるクリニックをこれからも目指したいですね。

Access