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松原 究 院長の独自取材記事

松原クリニック

(桑名市/桑名駅)

最終更新日:2020/09/16

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桑名駅西口から見える、スイミングスクールの1階にある「松原クリニック」。2005年に東口近くに開院し、2019年5月に現地へ移転した。クリニックに入ると、1人掛けの椅子が熱帯魚の水槽を向いて並び、手作り感のあるクッションが乗っていて、どこか家庭的な雰囲気だ。廊下には、植物好きな松原究(きわむ)院長が育てた観葉植物が20鉢ほども並ぶ。診療は、うつ症状や不安症状の患者が主で、松原院長と妻の松原規佐子先生による二診制。薬は、抗うつ薬よりも気分安定薬を多く用い、ゆっくり休み、時には環境を変え、元気になっていく生活を勧めている。「頑張らなくてもいいんだよ」というメッセージを体現したような穏やかな人柄の松原院長に、心の病気の考え方や診療内容などを聞いた。
(取材日2020年8月27日)

じっくりと患者の話を聞く、医師夫妻による二診制

こちらに開院した経緯と、患者層についてお聞かせください。

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桑名に開院したのは、以前、僕が勤務していた北勢町の病院と四日市の病院のちょうど中間だったからです。患者さんを紹介する時、勤務していた病院にお願いしたほうが安心ですから。当クリニックには桑名・四日市・いなべ市などの近隣地域から、中学生から80代の高齢者までの幅広い年代の患者さんが来てくださいます。症状として多いのは、うつ症状や不安症状です。30年ほど診てきて感じるのは、高齢者のうつ症状が増えてきたということでしょうか。軽い症状などは、内科の先生に相談して、お薬をもらうことも多いようですが、長引く場合はやはり精神科の医師が直接診たほうがいいと思います。

診療はどのように進めていかれるのですか?

まず患者さんのお話を聞くことが何より大事なので、初診では1時間ほどかけて、体調・病状・家族関係・仕事の話などをじっくり聞いていきます。問診として、やはり精神科の医師である僕の妻が話を聞きます。話をするだけで、気分が落ちつかれる方もいるんですよ。また、心の病気ではなく、体の病気のこともあるので、判別するために血液検査をしたり、脳の画像検査を他の病院に依頼したりもします。結果、うつ症状と診断できて、仕事に行けないようならば、休職の診断書を書いて、休んでいただきますし、「残業を減らしてください」などの要望を職場に伝えて、復帰後の仕事の負荷を減らすようにしていきます。うつ症状の方は、環境を調整してあげることが大切なんです。

奥さまと二診制で取り組まれているのですね。

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女医さんのほうが話しやすい患者さんもいますし、2人でそれぞれの患者さんを担当しています。ですが初診はどうしても長くなりがちなので、問診のところは妻に担当してもらい、とても助かっています。僕が長く担当している患者さんをたまたま妻に診てもらったことがあったんですが、その患者さんが犬を飼っていることを、妻から聞いて初めて知ったということもありました。一体どんな聞き方をしているのか一度、見てみたい気もします(笑)。あとは週に2日、臨床心理の先生にも来ていただいているので、診療と併せて保険適用のカウンセリングを行っています。すべてを1人で抱え込まなくていいのは、心強いですね。

回復の鍵は、ゆっくり休むことと、環境を変えること

治療は投薬が中心だと思いますが、工夫されていることはありますか?

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当院の場合は、抗うつ薬はあまり多く使わずに、気分を安定させるための薬を使うことが多いです。なぜなら、うつ症状になる患者さんは真面目な完璧主義の方が多く、気分を上げる抗うつ薬を飲むと、また無理して頑張っちゃうからです。「今までの遅れを取り戻さなきゃ」と思ってしまう。するとまたネルギーをすり減らして、ガクッときちゃうんです。だから、抗うつ薬よりも、気分安定薬で、気分を落ちつかせて、ゆったり過ごしていただいたほうがいいと思っています。また元気になっても1ヵ月、2ヵ月たつとまたつらくなることがあるので、復帰後もしばらく薬を続けていただいて、安定したら徐々に減らしていくようにしています。

ほかに回復するための方法はありますか?

行動的なアプローチとしては、認知行動療法などもあります。例えば、手を何度も洗ったり、何かを確認せずにいられない強迫神経症の方が、それを我慢するという療法です。でも、患者さんの負担が大きく、うちではあまりうまくいかないですね。それよりも無理せずに、自然に楽になっていくのが理想だと思っています。回復するきっかけは、社会人ならば職場環境を変えてあげることが1つ挙げられます。若い患者さんはデリケートな人が多く、厳しい叱り方をする上司から、そうではない上司に変わることで、元気になられることがあります。また不登校のお子さんでも、中学校は行けなかったけれど、環境の違う高校なら通えることがありますね。

無理をせず、自然に楽になっていけたらいいですね。

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私はよく「果報は寝て待てですよ」と患者さんにお話しをするんです。先ほども言いましたが、うつ症状の方は完璧主義の人が多く、何でも自分で克服しなきゃと思ってしまう。うつ症状でエネルギーが低下しているのに、自分でさらにストレスをかけて、余計にエネルギーをすり減らしてしまいます。だから、できるだけ何もしないで、ゆっくり休んでくださいという意味で言っています。ゆっくり休むと、人間には自然治癒能力が備わっているので、またエネルギーがたまっていくんですね。エネルギーがたまってこないのは、何か減らし続けるものがあるからで、それを取り除いてあげる。完璧主義者は100点を求めますが、70点でいいんです。

患者を診ると自然に「助けたい」という気持ちに

院長はなぜ、精神科の医師になられたのですか?

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一度は大学の農学部に進学したんです。でも、将来のことを考えた時に不安になり、親の助言もあって、進路を変更しました。勉強が大変だった医学部時代は、当時、教授をしておられた笠原嘉(よみし)先生の精神医学の本に出会い、心が救われました。それまで医学は知識と技術で治療するイメージがあったのに、考えたり、想像することで治療できる医学の分野があると知り、興味を持ちました。元々「医者になって人を救う」という信念を持っていたわけではありませんが、患者さんを診ていると自然に「助けてあげたい」という気持ちが沸き起こってくるんですね。そういう気持ちにさせてもらえるところは、医師になって正解だったかなと思っています。

とても大変なお仕事だと思いますが、どうリフレッシュされていますか? ご趣味も教えてください。

一時は農学部をめざしたように、植物を育てたり、園芸をすることが好きです。家でも観葉植物を育てていて、時々クリニックに持ってきて、入れ替えたりしています。趣味は旅行で、学生時代は中国や東南アジアをまわるバックパック旅行をよくしました。今はなかなか時間がとれませんが、引退して時間ができたら、リュックを背負って中南米辺りを回りたいと思っています。

心療内科について知っておいてほしいことはありますか?

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心療内科は、曖昧模糊とした分野です。体の病気ですと「悪いのはここです」と見せられるけど、心療内科はそうはいきません。確立した疾患概念とは違って、「あなたはアスペルガー症候群です」とも「アスペルガー症候群じゃない」ともはっきり断言できない。「アスペルガー症候群的性格傾向がより強い」とか「強くない」とかしか話せないんですね。もともと、ADHD(注意欠陥多動性障害)なども統計学的な手法で、適当なところで分布図に境界ラインを引いて、そこよりも極端なところをADHDとしているだけなんです。線の引きようによって、いかようにもなる。だからそのように恣意的で曖昧な分野だということを理解していただきたいです。

では最後に、受診する目安と読者へのメッセージをお願いします。

うつ症状の場合ですと、「死にたい」という気持ちになられた時ですね。ほかにも、食欲がなくなったり、逆に過食になったり、眠れなくなったり、逆にすごく長い時間眠ったりするなど、日常生活に支障が出るような時は心療内科を受診していただきたいです。現在は新型コロナウイルス感染拡大など、先が見通せない大変な時期になっています。こういう時はあまり先のことを考えないで、一日、一日を無事に過ごすことをめざして生活してもらえればいいと思います。人間は、今までも大変な状況を克服してきましたから、今回も乗り切れると僕は信じています。

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