ハンディキャップも「個性」
一人ひとりとともに歩む障害者歯科
MIZUHOデンタルクリニック
(直方市/中泉駅)
最終更新日:2023/10/13


- 保険診療
多様性を重視する昨今、ハンディキャップもまた当たり前の「個性」と捉える人も増えてきた。直方市にある「MIZUHOデンタルクリニック」はそんな個性を持った患者が通う歯科のクリニック。介護者のレスパイト(休養)や利用者同士の交流もできる医療型特定ショートステイも併設し、患者一人ひとりの個性を尊重した医療を提供している。「大学時代に障害者歯科に出合い、縁あって直方に参りました。摂食嚥下を診てくれる場所がほしいという声もあってショートステイも始めたんです」とはつらつと語るのは、理事長を務める川端貴美子先生。さまざまな経験で得た知見と幅広い視点で患者と向き合う理事長に、障害者歯科の基本的な考え方などについて詳しく話を聞いた。
(取材日2023年7月31日)
目次
患者の個性と意思が第一。患者が安心できスタッフが効率良く動ける環境を整え、愛情あふれる医療を提供
- Q障害者歯科診療とはどんな医療ですか?
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A
▲永満寺団地バス停から徒歩1分。駐車場も広く、車での通院も可能
お子さんから年配の方まで、幅広い世代の患者さんがおられます。耳が聞こえない、体をうまく動かせない、コミュニケーションが取りづらいなどの先天的な要素を持つ方、そして年を重ねて認知症の症状が出てきた方もおられます。当院ではそれらをその方の個性と考えます。この方は大きな声が苦手だから小さめの声で、この方は人の多い場所が苦手だから最低限のスタッフで対応しようなど。科を問わず診察は基本的にルーティン化されていて、障害のない人にとっては苦痛ではありませんね。しかし強い個性がある人にとってはルーティンが苦痛になることが多い。だから当院ではそれぞれの個性に「当たり前に」対応できる環境を整えています。
- Q具体的にどのような工夫をされていますか?
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A
▲患者とスタッフ両方が使いやすいよう、ペーパーは2ヵ所に設置
私は大学院では麻酔科で勉強していたため、障害が重い方の場合の全身麻酔下での治療にも対応しています。診療はすべて予約制で、他の患者さんと不用意に接触しないようなスケジュール、車いすを前提とした院内の導線を整えています。また車いすのままでもゆったり入れるトイレや治療用のユニット、そして女性スタッフでも作業しやすく疲れにくい高さの棚、使いやすいトイレットペーパーの位置、専用ゴミ庫など、改装前の環境や新型コロナウイルス感染症流行を経て必要と感じたものは、オーダーメイド製のものも含めすべて採用しています。患者さんの個性を大切にするためには医療者が気持ち良く仕事ができる環境も大事なのだと思います。
- Q訪問診療や送迎サポートも行っているそうですね。
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A
▲エレベーター完備のため、車いすでも通いやすい
お年を召された親御さんの通院のために仕事を休むのはなかなか難しいですよね。でも外出は特に認知症の方にとって非常に有用ですから、「通院すること」も大切にしています。また入院され、ご家族や病院の許可をいただけた場合は、入院先にも訪問診療に伺います。前述したように年齢に制限はありませんから、口腔ケア、摂食嚥下のケアなど、年齢やその方の個性に応じ、長期的に、安心して通っていただけるような治療を提案できるよう心がけています。また初診では治療をせず、当院の説明やごあいさつだけになることも多いですが、お互いの距離感と患者さんの個性を尊重するための大切な時間です。急がず、ゆっくりと治療をしていきましょう。
- Q医療型特定ショートステイも併設されていますね。
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A
▲患者が楽しめるよう、さまざまなイベントが実施されている
利用者さんの多くは当院の患者さんです。ご家族以外の利用者さんとの外出や食事会、ご家族の体調不良時のサポート、介護をするご家族のレスパイトとして、日曜と年末年始以外に受け入れています。朝9時にお迎えにあがり、入浴、ボール遊びやプール、レクリエーション、お昼寝、おやつなどを通して外の環境にふれ、18時頃にご自宅へお送りするのが基本的なスケジュール。床暖房も完備しています。直方市は自然豊かな地域。そこで暮らす方々もまたおおらかで温かい心をお持ちです。歯科の治療だけではなく、患者さん、そしてそのご家族が少しでもゆとりを持って日々を送っていただけるようにと考えています。
- Q患者さんだけでなくご家族も安心できるようにしているんですね。
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A
▲患者の個性やペースに合わせ、ゆったりと治療をする
いつもそばにおられるご家族と同等の内容を完璧にご提供するのは正直難しいですが、個性を理解することでそれに近づけられると考え、必ず事前に「何が苦手で、どういう環境だと安心されますか?」など詳しくお話を聞いています。例えばご自宅でお布団を使っている方には施設でもお布団で、ベッドならばベッドでと、普段の生活とあまり違いが出ないよう、こちらも準備を整えています。そうすると皆さん安心されリラックスして過ごせるので、こちらとしてもうれしいですよね。ご家族にとっては物足りないところがあると思いますが、できる限りの対応をいたしますので遠慮なくご希望をお伝えください。