古田 賢司 院長の独自取材記事
おおつ内科クリニック
(出雲市/大津町駅)
最終更新日:2023/09/13

国道9号から1本入った住宅街の中にある「おおつ内科クリニック」。周囲には幼稚園やコミュニティセンターなどがあり生活に根差したエリアで、市の中心部へも車で5分程とアクセスも良好。古田賢司院長は、日本消化器病学会消化器病専門医と日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医の資格を持ち、島根大学医学部附属病院や島根県立中央病院などで長年経験を積んできたベテラン医師。2013年の開業以来、地域のかかりつけ医として幅広い診療を行っている。検査から治療までできる限り院内で行えるよう、医療機器の拡充に努め、特に内視鏡検査については患者に合わせて使う機器を変え、挿入時の手技を工夫するなど、患者の苦痛に配慮した診療をモットーとしている。 「気軽に相談できるクリニックでありたい」と話す古田院長に、現在の思いを聞いた。
(取材日2023年5月31日)
「自らの手で治したい」との思いで患者と向き合う
開業に至るまで、大学や病院で長く経験を積んでこられたそうですね。

大学卒業後は島根大学医学部附属病院で勤務していました。その後、同大学の教授が診療に行っていた縁で派遣されたのが、広島の興生総合病院です。そこでは一般内科で幅広い症例の患者さんの診療にあたっていました。その後に勤務した島根県立中央病院では、自分の専門である消化器内科の先進治療に取り組むことが多かったですね。そして教授の紹介で、大阪の淀川キリスト教病院でも勤務しました。こちらは当時、胆のうや膵臓の治療に力を入れている病院でしたので、知識においても技術においても、専門性を高められる多くの経験をさせてもらいました。またホスピスも備えた病院でしたので、医師としての考え方も学んだ場所です。勤務医時代に一般内科の幅広い診療と自分が専門とする消化器内科の知見を深められたことは、とても良い経験でした。現在もその経験を生かし、かかりつけ医としての総合力と自分の専門性を両立しながら、日々の診療にあたっています。
先生が医師をめざしたきっかけをお聞かせください。
中学生の頃には、漠然と「医師になりたい」という思いがありました。周囲に医療関係者がいたわけではないのですが、その頃家族が病気にかかったこともあり、自分が治すことができたらいいのに、と感じたことがきっかけです。大学を卒業して医師になり、何を専門とするかで診療の方法もさまざまですが、じっくり考えた結果、消化器内科を選びました。自分の手を動かして患者さんを治療するのが性に合っていると感じたからです。内科は全身を診療できる科目なので、そこが魅力だとも感じました。
開業を決意した理由は何ですか?

大学での勤務では、専門分野の先端研究に参加することも多くあり、他大学の先生と交流するとともに最先端の情報・知識に触れることで、病気に対する理解を深かめ自分のスキルを向上させることができました。大学での診療、研究、後輩医師の指導も非常にやりがいのある仕事ではあったのですが、大学で学んだ知識や経験を地元の患者さんのために生かしたいという思いが次第に募り、もどかしさがだんだん強くなってきました。そんな時、他の先生が運営していたクリニックを継承する話が持ち上がり、今が転機だと思いました。周囲にも相談して、思い切って開業することにしたんです。
豊富な経験と充実した機器で、幅広い診療に対応を
こちらのクリニックの特徴を教えてください。

まずはかかりつけ医として地域の方々に頼っていただけるよう、訪れやすい雰囲気を心がけています。痛みはもちろん、違和感を感じたらすぐに相談できるようなクリニックでありたいので予約も不要ですし、「病院に行くほどかな?」と思う場合には電話での事前相談なども対応しています。発熱の方の診療も行いますが、基礎疾患のある方やご高齢の方も多いことから別室で対応するなど、他の患者さんにも配慮しながら進めています。来院される患者さんの年齢層は幅広いですね。風邪や胃腸の診療、健診での判定などは比較的若い方も多いですが、慢性疾患は高齢の方が中心です。慢性疾患の主訴として多いのは、高血圧や脂質異常症などの生活習慣病。定期的に来られている方には年に1~2度の検査をお勧めしており、精査が必要な場合はこちらで原因をある程度絞り込んでから、病院を紹介します。
クリニックの設備でこだわったのはどんなところですか?
内装は継承した時のままですが、もともとバリアフリーで、車いすでそのまま入ってこられるような造りでしたので、足腰に不安がある方でも無理なくご利用いただけているようです。院内は吹き抜けで天井が高く、畳のスペースもあるので、リラックスしてお待ちいただけると思います。検査に使う機器類は、必要に応じて随時先進のものを導入しています。患者さんにとっては、1ヵ所で検査ができて治療もできる環境が、一番負担が少ないですよね。そこで、エコーや心電図、血液検査、臨床化学分析装置、内視鏡など一通りそろえ、すぐに結果がわかり、治療に移行できるような環境にしています。内視鏡は太い・細い、硬い・やわらかいなど、メーカーによってカメラに特徴があります。当院では患者さんによってそれらを使い分け、できる限り苦痛の少ない診療に努めています。麻酔での検査を希望されたり、必要な場合は自院での検査にこだわらず病院へご紹介しています。
診療方針や先生が心がけていることを教えてください。

なるべく患者さんの話に耳を傾け、説明するときはわかりやすい言葉で伝えるということです。専門用語をたくさん使って伝えてしまうと、自分の病名を知らない、どういう状態なのかわからない、ということにつながってしまいます。治療する上で必要なのは、自分の状態を患者さんご自身がきちんと理解すること。だからこそ、わからないことを何でも聞けるような雰囲気づくりも大切にしています。診療の時に質問を忘れてしまう場合もあると思うので、メモに書いてきてくださると聞き忘れがなくて安心ですね。また、生活習慣病の患者さんの場合には、毎日血圧を記録するなど、患者さんご自身での管理が重要になってきます。それらも含めて、治療や管理の重要性を丁寧に伝えていきたいと思っています。
患者目線で考えた相談しやすいクリニックをめざす
休日はどのように過ごされていますか?

病院に勤務していた頃は院内を動き回っていましたが、開業してからは運動量がすごく減ってしまいました。運動不足を解消するために、休日はランニングをしています。ルートは決まっていませんが、毎回10km、多いときは20kmほど走っています。いつもは車で移動することが多いので、走る時はあえて細い道を通ったりしています。近所なのに知らない光景に出合えたりして、結構楽しいですよ。普段、生活習慣病の患者さんには「適度な運動を」と伝える立場なので、自分自身が運動不足では説得力がないですからね。
専門である消化器内科について、読者に知っておいてほしいことはありますか?
胃や腸に痛みがあったり違和感があっても、「少し食べ過ぎたかな」「昨日飲み過ぎたかな」とやり過ごすこともあると思うんです。一過性のものなら本当にそれが原因かもしれませんが、もしも症状が長く続く場合は、何か重篤な病気が隠れている可能性もありますから、診察を受けることをお勧めします。また、胃がんの発生リスクを高めるピロリ菌の検査や、40代になったら大腸の検査もできるだけしておいたほうがいいですね。内視鏡検査に恐怖心を持っている方も多いですが、当院では胃の検査の場合、鼻からの内視鏡検査や麻酔を基本に、口からの検査にも対応しており、少しでも苦痛を和らげるために内視鏡挿入時も工夫しています。ぜひ検査についてもご相談ください。異常がないことを確認できれば、安心にもつながりますよ。
クリニックの今後の展望をお聞かせください。

患者さんの中には、体調の悪化などさまざな理由で「そろそろ在宅診療に切り替えたい」という方がいると思います。そのような場合、診療時間外で検査を行っていることもあり、当院では対応ができないため、在宅診療を行っているクリニックと連携して行うようにしています。出雲市はそういった医療の地域連携がしっかりできている地域で、クリニック間の情報提供なども徹底して行っていますので、患者さんの病状を見ながら柔軟に対応していきたいと思います。そしてこれからも、患者さんが気軽に訪れやすい「敷居が高くないクリニック」であり続けたいと思っています。