松崎 晃治 院長の独自取材記事
マツザキ整形リハビリ医院
(神戸市垂水区/垂水駅)
最終更新日:2025/05/01

垂水駅より徒歩5分に位置する「マツザキ整形リハビリ医院」。2024年8月に前身「かんの整形外科」を承継した松崎晃治院長は、近畿大学医学部大学院時代に人工関節に用いる金属素材の研究に携わった後、大学病院やへき地の医療機関、地域の拠点病院に務めるなどの経験を積んできた。「患者さんが笑顔で帰っていただけるクリニック」をモットーに、患者一人ひとりの痛みや不安に丁寧に向き合う。初診では問診に時間をかけ、数値化できない痛みを理解するため、患者の生活背景を丁寧に聞き取る。50~60代の足腰の痛みや骨粗しょう症の予防にも注力し、リハビリテーションや薬物療法を組み合わせて提供。「自分の親や家族だったらどんな診療をしてほしいか」の視点で、患者と家族に寄り添うチーム医療の実践に努める松崎院長に話を聞いた。
(取材日2025年4年2日)
臨床経験に基づく、生活の質を高めるための診療
なぜ整形外科の医師を志されたのでしょうか?

医学部で複数の診療科を順番に回りながら幅広い臨床経験を積むスーパーローテーションが今は主流ですが、私の研修医時代は専門分野に集中して研修を行っていました。整形外科は、治療後に患者さんが帰宅される様子や、患者さんの生活の質はどうだとか、自分の目で患者さんの状態を確認できるので、やりがいを感じられそうだと選びましたね。
大学での研究や地域医療など、さまざまなご経験をされていますね。
近畿大学医学部大学院時代には人工関節の金属材料の研究をしていました。教授が膝や股関節の人工関節の専門家だったこともあり、その後は大学の関連病院で急性期から回復期までの治療に携わりました。また、和歌山県のくしもと町立病院での勤務経験があります。超高齢化が進んだ地域で、整形外科の枠を超えて、内科的な対応や他科の手術に参加することもありました。地域の10人ほどの医師で医療をカバーするという状況でしたので、いわば総合医としてさまざまな経験を積むことができました。こうした経験が今の診療に生かされていると感じています。
どのような点が診療に生かされていると思いますか?

手術の適応を適切に判断できる点ですね。これまで大きな病院の臨床経験を積み、外傷、脊椎、膝や股関節の手術のタイミングを見てきました。手術には絶対適応から相対適応まであります。相対的な場合は患者さんの希望やニーズをくみ取って適応が変わることもあります。そういった判断ができることは大きいですね。また高齢者医療の経験から、介護との連携も重視しています。現在は自治体の介護認定審査会にも参加していて、急性期の対応だけでなく、その後の生活をどう過ごしていくか、リハビリテーションをどう継続するかといった視点も大切にしていますね。
健康余命を延ばすために整形外科でできることを
どのような患者さんが多く来院されていますか?

年齢層は60〜80代の女性の患者さんが比較的多く、60代の方では骨の異常や骨粗しょう症を心配して予防目的で来院される方も少なくありません。痛みやしびれは血圧や血液検査のように数値化できないもの。患者さん自身も適切に表現できないことがあります。そのため初診の方にはゆっくり時間をかけ「平地は歩けるけど階段が痛い」など、具体的なシチュエーションを引き出すよう意識しています。また、手術をしたくない方もいらっしゃいますが、そういった場合でも薬、注射、リハビリテーションなど有用だと思われる選択肢を3つほど提示し、何を選ぶかは患者さんと一緒に相談して決めています。決して一方的に押しつけることはありません。表情や様子を観察しながら、患者さんの潜在的な希望をくみ取るよう努めています。ご本人だけでなく、同席される家族や介護者の方の負担も考慮した提案を意識していますね。
50〜60代の足腰の痛みに対してはどのようなアプローチをされていますか?
まず知っておいていただきたいのは、歩くことで膝や股関節には体重の3〜4倍の負荷がかかるということです。腰に至っては6〜8倍もの負荷がかかるといわれています。さらに筋力は20代を100%とすると、50〜60代で75%程度、80代になると60%程度に低下します。特に女性は男性よりも筋力が弱いため、関節への負担を感じやすくなります。このような状況で必要なのは、関節を保護するために、膝や股関節周囲の筋力を維持・強化することです。当院では理学療法士と連携して、患者さん一人ひとりの状態に合わせたリハビリテーションプログラムを提案しています。「負担を抑えるにはこういう動きがお勧めです」「日常生活ではこう動作すると良いですよ」といった具体的なアドバイスを行い、自宅でも続けられる運動習慣の動機づけを重視しています。こういったことを通し、時には痛み止めなどの減薬もめざしていきます。
骨粗しょう症などの予防や治療においてはいかがですか?

骨粗しょう症の治療では、定期的な検査と適切な投薬が基本となります。骨密度検査や血液検査を定期的に行い、患者さんの状態に合うようなお薬を選んでいます。場合によっては注射による治療も行います。大切にしているのは継続的なフォローアップです。お薬の副作用が出ていないか。腎機能に問題はないか。適切なお薬が選べているかを定期的に確認します。特に60歳前後の女性は骨粗しょう症のリスクが高まりますので、早めの予防が重要です。また、親の介護を経験し、「自分は寝たきりになりたくない」というお気持ちから来院される方も多いです。そういった方々の自立した生活をサポートするために、骨を守ることと同時に、筋力維持のための運動指導も行っています。健康で自分らしく生活するためのパートナーとして、お手伝いできればと思います。
患者のニーズに沿ったチーム医療をめざす
スタッフの教育やチームづくりではどのような点を重視されていますか?

新しい薬や導入する医療機器については勉強会を行いますが、それ以上に重視しているのは、チームとして患者さんや介助者の方々と接するということです。もちろん知識や技術も必要ですが、人となりの部分が欠かせないですね。来院される方々が心地良く過ごせる環境づくりに努めています。患者さんにとって少しでもリラックスして自分の症状や不安を話せる雰囲気をつくれるようにスタッフ一同で取り組んでいます。
リハビリテーションで心がけていることを教えてください。
2025年3月に理学療法士を増員しました。これは患者さんのニーズが増えてきたためです。リハビリテーションでは、生活指導と運動指導を重視しています。電気療法や温熱療法など機器も活用しますが、最も大事なのは患者さんの日常生活に即したアドバイスです。例えば骨折後は「こういう動作をすると痛いけど、こう動くと寝返りがしやすい」「こうすれば起き上がりが楽」といった具体的な指導をします。実は患者さんのご自宅の状況もさまざまです。「段差が40センチある」「急な階段」「和式トイレ」など、私たちの想像と違うことも多いので、時間をかけて聞き取りをし、その方の生活環境に合わせたアドバイスを行います。まずは家庭内での動線の中で、自分らしく以前の生活に戻れることをめざし、徐々に外出するなど活動範囲を広げていく。このようなステップを患者さんと一緒に設定し、サポートしています。
最後に、地域の皆さんへのメッセージをお願いします。

私がいつも心がけているのは、「自分が同じ立場だったら。自分の家族だったらどうしてほしいか」という視点で診療することです。手術の適応を考える際も、治療法を選ぶ際も、常にこの気持ちを忘れないようにしています。小さな症状でも気軽にご相談いただければと思います。患者さんの「自分の健康は自分で守りたい」という気持ちをサポートするのが私たちの役割の一つ。いつまでも自立した生活が送れるよう、地域のかかりつけ医としてお手伝いしたいと思っています。歩いて笑顔で帰っていただけるクリニックをめざして。これからも地域医療に貢献していきます。