眼内レンズの選択は人生の選択
白内障手術で合わせるべき焦点は?
伊田眼科クリニック
(三田市/フラワータウン駅)
最終更新日:2024/05/15


- 自由診療
目の水晶体が年齢とともに濁り、視力が低下してしまう白内障という病気。現在は医療の進歩もあって多くの眼科クリニックで日帰りでの手術が可能となっており、水晶体の代わりに挿入する眼内レンズにもさまざまな選択肢が用意されている。そのため手術自体へのハードルは下がったものの、いつ手術を受ければ良いのか、どのような眼内レンズを選択すべきか、術後の見え方を含めて疑問や不安材料を抱えている人は多いもの。今回は豊富な知識と経験で先進的な白内障手術にも対応する「伊田眼科クリニック」の伊田宜史(いだ・ひさし)院長に、白内障手術を受ける上で患者が知っておきたい基本となる心構えをじっくりと解説してもらった。
(取材日2024年4月11日)
目次
将来の目の変化やライフスタイルをイメージすることが理想に近づく第一歩
- Q白内障手術は、どの年齢で受けるべきでしょうか?
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A
▲生活の質を大きく左右する白内障手術。日帰りで対応している
白内障は40歳を過ぎた頃から徐々に現れ、80代での発症率はほぼ100%といわれています。今は人生100年時代ですから白内障と付き合う期間は意外に長く、80歳を過ぎて手術を希望されるケースも増えています。あまり高齢になると負担が心配ですから、少し早めに検討するのが望ましいでしょう。白内障手術の目的は十人十色。さらに手術を受ける年齢やタイミングによっても目的は異なるため、術後にどのような生活を送りたいかをしっかりと念頭に置く必要があります。手術では濁った水晶体を取り除き、代わりに人工の眼内レンズを挿入します。眼内レンズの選択一つで、その後の生活が大きく左右されるといっても過言ではありません。
- Q眼内レンズにはどのような種類がありますか?
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A
▲眼内レンズの選択が術後の見え方を決定する
眼内レンズには、1ヵ所だけにピントが合う単焦点レンズと、複数にピントが合う多焦点レンズがあり、長い年月をかけて単焦点から多焦点へ、多焦点も屈折型から回折型へと進化を遂げています。初期の屈折型で多かった光の乱反射による異常光視症が回折型では軽減が見込め、昼間の見え方はかなり改善が期待できます。さらに現在では4焦点レンズ、光の干渉を抑えたEDOF(焦点深度拡張型)と呼ばれる連続焦点タイプも登場し、中間距離での性能は一定の成熟に達したといえるでしょう。30cm以内の手元に関しては依然として課題を残していますが、患者さんの希望に応じて現存のラインナップからレンズを選択していただける状況と考えられます。
- Q眼内レンズを選択する際に大切なことを教えてください。
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A
▲最適なレンズを選ぶために事前相談を大切にしている
高齢になると視野を補正する能力が衰えるため、よく見えないせいで転倒するリスクなどを考えると、やはり単焦点より多焦点レンズに軍配が上がるでしょう。ただし入念な検査を行った上で、将来の変化を見越しながら慎重に選択する必要があります。特に乱視には注意が必要で、乱視の軸は年齢によって変化することが多く、現在の見え方だけで眼内レンズを選ぶと後々になって軸にずれが生じます。それ以外にも加齢による目の変化はどんどん進みますから、手術の計画には高い予測性や想像力が要求されるわけですね。一度の人生で、白内障手術は基本的に一発勝負。再手術に適応しないケースも多いため、事前にしっかりと相談を重ねることが重要です。
- Q手術後の見え方が心配なのですが。
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▲わかりやすく丁寧な説明をし、患者の不安を軽減する
まず眼内レンズを選ぶ際に、遠方視力をあまり欲張らないことです。普段の生活では半径5m以内の中間距離での視力が重要ですから、そこに複数の焦点を合わせることで生活のしやすさにつなげていきます。また、先進の多焦点眼内レンズであれば光視症はかなり軽減が見込めますが、やはり出る人には出てしまうもの。そこには脳の慣れが関わっており、慣れるのが早い方がいる一方で、なかなか慣れない方は1年ほどたっても見えにくいというケースも。目は脳の一部でもあり、脳には与えられた機能を活用しようとする能力が自然に備わっています。そこに期待しながら時間に余裕を持って経過観察することも、年配者ならではの特権とお考えください。
- Q白内障手術後の過ごし方のポイントを教えてください。
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▲人生を見つめ直すきっかけとなる白内障手術。早めに相談を
とにかく早寝、早起きを心がけ、絶対に疲れないように暮らすことです。眼内レンズは昼間にこそ威力を発揮しますから、昼のうちにレンズの力を借りてやるべきことをやり、夜はできるだけ早めに休んで昼間に備える生活リズムが大切です。こうした生活を続けていけば、手術前にたまっていた眼精疲労も徐々に抜けていって、視界も次第にクリアになっていくでしょう。高齢者がハッピーになるコツは、平均点でいいから悪いものをなくすこと。そんなバランス型の生活が望ましいと考えます。白内障手術が、自分の人生を見直す一つのきっかけになるかもしれません。そこまで考えを発展できる積極的な方にこそ、ぜひ手術を検討していただきたいと思います。
自由診療費用の目安
自由診療とは多焦点眼内レンズを用いた白内障手術(選定療養)/13万5000円~