馬場 俊一 院長の独自取材記事
SHUN心療クリニック
(松山市/いよ立花駅)
最終更新日:2023/12/14

市街中心地からも程近い距離にある松山市朝生田の「SHUN心療クリニック」は、間もなく開業15年を迎える心療内科だ。院長の馬場俊一先生は、東京大学教育学部を卒業後、教員、営業職の他、起業したりと、さまざまな仕事を経験の後、医師を志したという珍しい経歴を持つドクター。一つの世界、一つのものの見方にとらわれない柔軟な視野を武器に、正解のない心の病を持つ多くの患者と日々向き合い続けている。そんな馬場院長に、日々の診療に対する思いや、多くの人に伝えたい心の健康を保つ方法について、たっぷりと語ってもらった。
(取材日2022年10月27日)
さまざまな職業を経験した後、医師の道へ
先生ご自身はこれまで、医師としてはかなり異色の経歴を歩んできたと伺いました。

出身は群馬なんですが、幼少期から学生時代は各地を転々としてきました。東京大学の理科II類に進学して、一時期は医学の道に興味を持ったりもしたのですが、諸事情で在学中に教育学部へと文転しまして。大学卒業後は教職に就いたり、会社に勤めたり、起業をしたり、さまざまな職業経験の後、やはり再度医学の道を志したいと考えたんです。その後四国への移住を検討し、34歳の時に徳島大学医学部へと入り直しました。そこで医学部生として再度勉強し直し、卒業後に愛媛へと移住して大学病院などで研鑽を積んだ後、2009年にこの場所で開業、現在に至ります。
愛媛に対する印象はいかがでしょうか。
私は縁があって松山に来ました。もともと愛媛という地に対していい印象を持っていましたが、実際に暮らしてみて、今まで生活した土地の中でもここが一番住みやすいと感じています。気候も温暖で大きな災害も起こりにくいですし、人柄も穏やかな印象を持っています。それに加え、人口もちょうどいいですよね。人が多過ぎず少な過ぎず、ほど良く都会感もありつつ地方ののどかな雰囲気も感じるので、快適に暮らせる街だと感じています。
院内全体は落ち着いた雰囲気の空間ですが、待合室はやや変わった造りになっていますね。

当院の待合室は、患者さん同士が顔が見えないように工夫しています。また受付で呼び出しを行う際は名前ではなくお渡しした受付番号でお呼びし、プライバシーに配慮しています。患者さんの傾向として人の目が気になる方も多く、お一人の空間であるほうが落ち着ける方が多いため、待合室の造りは足を運んでくださる患者さんにも好評だと思います。居心地が良く、待ち時間についうとうとしてしまうという方も時々いらっしゃいますが、それだけ皆さんにリラックスしていただけているのだと思うと、私たちにとってもうれしいことですね。
一見大丈夫そうに見える人ほど心の病に気をつけて
先生が診療の際に大事にしているのはどういった点でしょうか。

基本的には健康教育学や公衆衛生学的な価値観を診療のベースとしています。これらは要するに、地域に暮らす人々全体の健康を維持するための学問ですね。病気を抱えた人々を病院でケアするのは当然なのですが、病院に来られない人・来る気のない人の中にもさまざまな問題を抱えている人は存在します。心の病気は、症状が可視化されている人のケアを優先しているうちに、何の問題もなさそうに見えた人が新たに病気を抱えてしまう、というケースも非常に多いんです。「どう見ても元気そうだったのに心を病んでしまうなんて……」というパターンも決して少なくはありません。それを防ぐための早期発見・予防診断を一番の理想としていますが、当然ぱっと見ではなかなか判断がつきづらいものです。非常に難しい問題ではありますが、諦めることなく向き合い続けていかなければなりませんね。
どのように診療・治療を行うのですか?
まずは患者さん自身に、自分の悩みの本質を知ってもらうこと、これが解決につながると思っています。伝えたいことがあるのに、「言葉ではうまく表現できないな……」という経験は誰しもあるのではないでしょうか? 思っていることが言葉でうまく表現できない時には、非言語的に伝えていく方法もあるんです。当院は、長年にわたって非言語での手法の研究も行っています。
患者さんと向き合う際に、心がけていることなどはありますか?

目の前の患者さんの症状は、すべて個別のものであるということを意識するようにしています。心の病は患者さんとのコミュニケーションの際、「こういう場合はこうすればいい」という決まったパターンは基本的に一切ありません。人は日々変わりゆくものです。先入観にとらわれずその時のその人を診る、という点は日頃意識しながら診療を行っています。また、心身一如です。体の不調の原因が心の不調から来ていることもあれば、その逆のケースもあります。そういった点も踏まえて常に多角的な視点を持ち、必要であれば他の診療科のクリニックの先生方との連携を取るという柔軟な対応も、日頃から行っています。
「自分の居場所」と「そのままの自分」を大切に
心の健康を保つために気をつけるべきこと、大事なことはどのような点なのでしょう。

一言で言えば「自分の居場所をつくること」ですね。職場や家庭、学校、趣味のコミュニティーなど、自分が快適に過ごせる場所、居心地のいい環境をつくることは心の健康を保つための大きなポイントです。さらに言えば、一ヵ所に留まらず、複数の居場所をつくることができていると良いでしょう。居場所づくりが上手で、さまざまなところに自分の居場所が確保できている人は比較的、心の安寧を保ちやすいものです。また、私がよく患者さんにお伝えするのは、「仕事は適度に、人間関係は適当に、運動と食事は適切に」という文言です。不安や悩みがある中でも「まあそんなもんか精神」を持ち、そのままの自分を大切にすることは、安定した気持ちを保つための大事なポイントだと思います。
先生ご自身の休日の過ごし方や趣味についても教えてください。
学生の頃から長年、楽器演奏を趣味としています。大学時代はよく東京のライブハウスに赴き、プロのミュージシャンと共演する機会も多々ありました。今でもライフワークとして続けていますよ。ドラマーですが、一番好きな楽器はベースですね。月に2回、松山市内のライブハウスで地元のミュージシャンの方々とご一緒させていただいています。長年の音楽仲間と一緒に過ごす時間が、憩いのひと時になっていますね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

お伝えしたいことは、小さな困り事や悩み事でも、ぜひ気軽に足を運んでほしいということですね。「大したことはない」と思っていても、気づかないうちにそれが大きな負担になっていたり、心の病に発展してしまうことも少なくはないですから。当院では10歳未満のお子さんから90代の高齢者の方まで、幅広い世代の方々が通院されています。心や身体の不調・違和感をお持ちの方は、いつでも相談にいらしてください。