川見 伸子 院長の独自取材記事
かわみ皮膚科
(京都市左京区/茶山・京都芸術大学駅)
最終更新日:2025/07/14

茶山・京都芸術大学駅から徒歩3分ほどの場所にある「かわみ皮膚科」は、優しくほほ笑むロゴがトレードマーク。川見伸子院長は、医師になる前、心理相談所で勤務した経験を持ち、健康は身体と心の両面がそろってこそ実現できると考えている。また、人は自己治癒力を持っていて、診療や薬はあくまでそれをサポートする役割だと認識しているという。そのため、患者の生活面まで細かく丁寧に聞き取り、食事や生活スタイルにもアドバイスする診療スタンスを貫く。「患者さんとともに笑顔を交わし合える診療がしたいですね」と、話す川見院長に、クリニックの特徴や自己治癒力、診療の際に心がけていることなどを聞いた。
(取材日2025年5月26日)
さまざまな皮膚の悩みに対応する地域のかかりつけ医
医師を志したきっかけをお聞かせください。

私は先に大学で心理学を学び、卒後は精神科医が営んでいる心理相談所で研鑽を積みました。学生の頃から、電話相談員の経験を積んでいたこともあり、人とじっくり向き合うことが好きだったのかもしれません。しかし、臨床経験を重ねていくうちに、自身の力量のなさと、言葉だけのアプローチに対する壁を感じるようになり、言葉だけではなく身体も診ることができ、薬も扱える職業に就きたいと思い、医師を志すことにしました。
皮膚科を選んだ理由を教えてください。
医師をめざしたときは、過疎地などでの地域医療に携わりたいと漠然と考えていました。医学部卒業後、洛和会音羽病院で研修医として勤務している時、期せずして結婚・妊娠を経験。私生活と仕事の両立をどうするか、ある意味方向転換を迫られていた折、先輩医師から、「皮膚科は診断から治療まで一貫して関われる科で、日々の診療も、さまざまな工夫をしていけるので面白いわよ」と教えていただき、皮膚科を選びました。病院勤務では医師と看護師、検査技師などさまざまな職種が連携して、より良い医療をめざすチーム医療の大切さを教わりました。2人目の妊娠を機に、自分のペースでじっくり患者さんと向き合いたいという想いから開業を決めました。
どのような患者さんが多く来院されていますか?

ここは私の地元なで、周辺には小学校や中学校、さらに大学もあるため学生も来られますが、新生児から90歳を超えるご高齢の方まで、幅広い年齢層の方にご利用いただいています。おむつかぶれや乳児湿疹、やけど、アトピー性皮膚炎やウイルス性のイボに関する相談、ニキビや頭皮湿疹などさまざまです。それ以外にも、乾燥性湿疹や加齢に伴う色素斑、良性腫瘍などがあります。また、たこやうおのめ、巻き爪が痛む、爪水虫で肥厚して手入れができないといった相談にも対応しています。最近は、ご高齢の方が足の爪を切ってほしいと来院されることも多いですね。患者さんのニーズにできるだけ応えたいと思っています。
誰にでも備わる自己治癒力を高めるお手伝いを
クリニックのロゴの由来を教えてください。

お地蔵さんがほほ笑んでいるロゴなのですが、患者さんに癒やしを感じていただくには、「ほっこり」とか「ゆったり」といった空気感が大切だと思い、採用しました。医師になった当初は、癒やせる人、治せる人になりたいと思っていましたが、今は、治っていくのは患者さん自身の力で、そうした力を持っていることに気づいてもらうお手伝いができればと考えています。忙しくしていたり、ストレスがかかって力んでいる時は、気の巡り、血液・リンパの巡りが悪くなりがちです。そのことに「ふっと」気づいて笑顔になると、体全体の巡りが良くなって、いろいろなものが機能し始めると思うんです。そのため、ロゴの下には「笑顔の交わしあい」という言葉を入れています。ふっと笑顔になれば、病も治りやすくなり、笑顔が戻り、それが私の喜びにもつながり、笑顔の循環がつながるといいなと思っています。
自己治癒力について教えてください。
基本的に人間には自然治癒力があると思っています。それがうまく働くための一つのキーワードが、「医食同源」かと思っています。医師のトーマス・M・キャンベル氏の「医師が患者さんに提供するどんな医療よりも、患者さん自身の選ぶ行動や食べ物のほうが、病気を治すにはずっと役立つ」という言葉にも共感し、実践を心がけています。診療の際は、患者さんの声・表情・姿勢・目力・姿勢などを観察し、治癒力を妨げている原因を多角的に探ることを大切にしています。筋肉の緊張や姿勢などによって血液やリンパの流れが滞っていないか、そして夜間の人工的な光を浴びすぎていないかなど、患者さんの身体の状態と生活を診ることに重きを置いています。
自己治癒力を高めるには何が大切なのでしょうか?

歯を食いしばったり、緊張しているときは、息を止めている、呼吸が浅くなるなど、酸素や血液の流れが悪くなっていることもあるので、ゆったりした呼吸が大切です。息を止めていると気づかれた際は、深呼吸するのがお勧めです。また、人間の体とその働きは、ふだん食べている物や飲んでいる物で構成されていて、再生修復に必要な要素も同じです。ですから、患者さんには今朝食べた物や飲んだ物、砂糖やミルクを入れたかどうか、お茶の種類まで細かく問診をします。前日の就寝時間なども振り返っていただいた上で、「ここ数日口にした物の中で、適量を超えているものがあるとしたら何でしょう」とお尋ねします。それがご自身の体の現状を知るきっかけになり、治癒力を回復する手立てになると考えているからです。また、当院では「舌診」を実施しています。舌は言葉で話す以上に体の状態を表してくれると思っており、問診と併せて必ず診させていただいています。
印象に残っている患者さんとのエピソードはありますか?
来院された患者さんの表情が暗いことが気になり、お話を聞いてみると、健康診断で潰瘍性大腸炎の疑いがあると言われたとのことでした。生活スタイルについていろいろ伺った上で、少し食養生についてもお話ししたところ、「ここに来て良かったです」と笑顔で帰られたんです。
悪いループから抜け出すために心身のバランスを整える
スタッフとの関係で大切にしていることはありますか?

私ができることは限られており、スタッフの皆に随分支えられています。以前は、接遇や医療に関することを細かく指示していましたが、いつの間にか、何も言わなくても自然にやってもらえるようになっていました。医師とスタッフの関係が良好である「場」で、患者さんとお会いすることが大切だと思っているので、スタッフには感謝の気持ちを常に忘れず、接するようにしています。給与を渡す時、毎月、必ず手書きのメッセージを添えています。これを18年続けているせいか、長く勤務してくださっている方がほとんどですし、本音で会話でき、何でも話しやすい職場だと言ってもらえるのがとてもうれしいですね。
今後の展望をお聞かせください。
患者さんとの一期一会を大切に、これまでどおりの診療を続けていきたいと思っています。症状は心身の不調を表すサインの一つであることを忘れてしまうと、何度も繰り返してしまう可能性があります。そのループから抜け出すために、皮膚を入り口として、心身のバランスを整えるお手伝いができればと考えています。患者さんの中には、人には話しにくいことや悩みをお持ちの方、気持ちが張り詰めている方もいらっしゃいます。当院で診察を受けたことによって、少しでもすっきりした気持ちで帰っていただけたらと思っています。また、薬は一時的には必要なこともありますが、自然治癒力をできるだけ発揮してもらい、極力薬を出さない医師をめざしたいとも考えています。
読者へのメッセージをお願いします。

病気を治す力が、自分の中にあるということに気づいてもらいたいですね。心身の健やかな状態を保つためには、ご自身の身体の声に耳を澄まし、内側に目を向けることが大切と考えますが、自分の目で身体の内側を見ることはなかなか難しいので、そのお手伝いができたらと考えています。インターネットの情報は一方通行ですから、皮膚に何らかの症状やサインが現れたら、どんな些細なことでもご相談いただければうれしいです。一緒に自らの心身の調整をしてみませんか?