泉屋 成秀 院長の独自取材記事
いずみや歯科医院
(松山市/福音寺駅)
最終更新日:2023/11/02

ヨーロッパの邸宅のようなたたずまいが印象的な「いずみや歯科医院」。院長の泉屋成秀(いずみや・なるひで)先生は、鹿児島大学歯学部を卒業後、山口県萩市と松山市での勤務医を経て、生まれ故郷にて1995年に開業した。歯科、小児歯科、歯科口腔外科を標榜し、虫歯や歯周病治療を中心とした外来診療をはじめ、訪問歯科診療や学校の歯科検診にも取り組んでいる。「この町の歯科医院として、地域の患者さんのお口の健康をオールマイティーに守っていきたい」と語る泉屋院長に、診療において心がけていることや地域における歯科医療への思いなどを、じっくり話してもらった。
(取材日2023年5月24日)
患者の意思を尊重し、納得の歯科医療に努める
初めに、開業までの経緯について伺います。

私は鹿児島大学歯学部を卒業後、山口県萩市の歯科医院に3年ほど勤めました。そこは全国に十数ヵ所ある大きな医療法人の分院で、最初は勤務医として入職し、3年目には分院長を務めさせていただきました。その後、地元松山での開業を見据え帰郷し、松山市内の歯科医院で1年ほど経験を積んだ後、1995年に開業しました。
診療において大切にしていることを教えてください。
地域の患者さんのお口のお悩みにオールマイティーにお応えしたいと考えています。専門の分野に特化した難しい治療はできませんが、私にできる範囲内で可能な治療を患者さんにしっかりとご説明し、ご納得いただいた上で治療に進むことを心がけています。やはり、何よりも大切なのはインフォームドコンセントです。虫歯の治療一つとってもさまざまな選択肢がありますから、それらのメリット・デメリットをお伝えすることは私たち医療人の使命です。例えば、保険診療の虫歯治療では、かぶせ物として銀歯や白いプラスチックがあります。銀歯は比較的丈夫なので長持ちすることが望めますが、審美的にデメリットを感じる方もいらっしゃいます。一方のプラスチックは審美面に配慮していますが、欠けやすいため数年で再治療が必要になるかもしれないというデメリットがあります。それらをすべてお伝えした上で、患者さんの意思を尊重した治療に努めています。
注力されている治療について教えてください。

歯周病の予防や治療、定期検診です。歯周病は治る病気ではなく、進行の抑制を図っていく病気です。手術をして骨を増殖させることをめざす方法もありますが、その治療が全員に適応するわけではありませんから、今残っている歯をいかに大切に維持するか。そのため、当院では歯周病の患者さんに対し、定期検診やクリーニングを行っています。通院の頻度は、歯周病の進行度合いやセルフケアの状況など、患者さんによって異なります。上手に磨けている人は3ヵ月に1回であったり、歯磨きがうまくできていない人は毎月であったり。ただ、それもこちらから一方的に決めることはありません。まずは患者さんにご提案をして、ご納得の上で通院していただけるよう努めています。
定期的な歯周病検診で、大切な歯を守っていく
患者さんの年齢層はいかがでしょうか?

開業当初は若年層の患者さんも多かったですが、近年はこの辺りも高齢化が進んでいて、今は60代以上の方が中心です。上は92歳の患者さんもいらっしゃいます。移転してからすでに20年が経過しているので、当時60代だった患者さんが80代。定期的に通ってくださっている患者さんがしばらく来られなかったりすると心配ですよね。施設に入居したり、入院されたり、長年やっていると、患者さんの人生の節目に接することがあります。中には北吉田の時代から3ヵ月に一度のペースで通ってくださっている患者さんもいたのですが、先日娘さんから「母が亡くなりました。お世話になりました」というお電話をいただいて……。「患者さんが毎回元気なお顔を見せてくださることが何よりの喜びだね」と、スタッフとしみじみと話しています。
スタッフさんも長年勤務されている方が多いそうですね。
そうなんです。当院の歯科衛生士や歯科助手、受付のスタッフは長く勤務してくれていて、中には20年近くになる人もいます。なので、スタッフの平均年齢は年々上がっています(笑)。みんなが長く働いてくれているおかげで「ここの歯科医院はスタッフさんが変わらないから安心して来られるよ」と患者さんに言っていただけることが多く、いい雰囲気づくりをしてくれているスタッフには感謝しています。みんな患者さんのことをとても気にかけていて、スタッフから「最近◯◯さん来られてないですね」と聞くこともよくあるんですよ。特に、定期的なメンテナンスは歯科衛生士が中心で、私は、最終確認とお声がけをするだけですから。
先生は定期的なメンテナンスの場合も患者さんにお声がけされているのですね。

もちろんです。治療の有無に関わらず、当院に来られたすべての患者さんと毎回顔を合わせるようにしています。定期的なメンテナンスの患者さんの場合、歯磨きチェックや口腔内のお掃除は歯科衛生士が行いますが、私も最後に患者さんのお口を診て、お話をするんですよ。そうすることで患者さんの安心にもつながると思いますし、私も患者さんの表情や雰囲気を直接感じることができます。最善の診療をご提供するためには、患者さん一人ひとりをよく見て、深く知ることが大切ですからね。
地域に根差したかかりつけ歯科でありたい
先生は小学校の歯科検診もご担当されているそうですね。

はい。この地区の小学校の校医として、毎年歯科検診を担当しています。最近は親御さんの歯科に対する意識の高さ、またフッ素やキシリトールなども影響しているのか、子どもの虫歯が随分減っていて、虫歯のある子どものほうが珍しいくらいです。しかし一方では虫歯の目立つお子さんもいて、その場合はネグレクトの可能性も疑う必要があります。ただ、子どもが歯科治療を嫌がるために虫歯が増えてしまっている場合もありますので、その判断は非常に難しいですね。いずれにしても、子どもの口の中から生活習慣や環境、背景まで見えてくることもありますから、そこを見落とさず、小学校と連携していかなければならないと考えています。
お忙しい日々だと思いますが、ご趣味などはありますか?
個人の趣味でいうと、高校時代からバイクが好きで、20代からイタリアのバイクに乗っています。今も、天気の良い日なんかは走りに行っていますね。また夫婦で農業もしています。こちらに関しては趣味の域を超えて、もう兼業農家です(笑)。農家になるために必要な3反の農地を譲り受けて、結構本格的に取り組んでいますよ。今はジャガイモやタマネギ、ニンニク、サツマイモなどを育てていて、午後休診の日や休診日には農作業に汗を流しています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

地域の患者さんとのコミュニケーションを大切に、しっかりとご説明をすることで安心の歯科医療をご提供していきたいと考えています。歯に関するお悩みやお困り事があれば、何でも気軽にご相談ください。やはり大切なのは、予防と早期発見。虫歯や歯周病のない状態を維持するのが一番ですが、もし虫歯ができたとしても、軽度なら治療も軽く済むことが望めます。特に歯周病の場合は予防が重要。成人の80%が歯周病になっているともいわれる時代ですから、自覚症状がなくても定期的に検診を受けていただきたいですし、1年に一度は歯科医院で歯石を取ることをお勧めします。松山市では40歳以上を対象に、10年ごとの節目に検診を行っていますので、ぜひ活用してみてくださいね。