親知らず抜かないとどうなる?
専門家が教える親知らずの対処法
あらい歯科医院
(尼崎市/塚口駅)
最終更新日:2025/07/09


- 保険診療
永久歯の中では一番遅い、20歳前後に生えてくる大臼歯が親知らず。時として歯茎の中で炎症を起こし、痛みや腫れを引き起こす厄介な存在だ。問題となるのは、その対処法。症状がなくても抜くべきなのか、放っておくべきなのか、抜歯手術への不安から迷っている人も多いに違いない。そんな親知らずについてアドバイスをくれるのが、これまで数多くの抜歯手術を手がけてきた「あらい歯科医院」の新井勝貴理事長。親知らずを放置することのデメリット、抜歯を受けるタイミングから治療の流れや術後の過ごし方まで、口腔外科に精通した専門家の立場から詳しく解説してもらった。
(取材日2024年12月2日)
目次
リスクや侵襲を最小限に抑えるポイントは、設備や技術が整った歯科医院で早めに抜歯治療を受けること
- Q親知らずを放置していると、どのようなデメリットがありますか?
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A
▲不安があれば信頼できる歯科医院に一度相談を
親知らずの影響でまず挙げられるのは、歯の一番奥に生えるため周囲に汚れがたまりやすく、虫歯になりやすいこと。親知らずのみならず、手前の歯まで虫歯になるケースが多く、結果として歯の寿命を縮めることにつながります。また、ばい菌によって歯茎が炎症を起こすと腫れや痛みが生じるほか、ひどい例では炎症が気道を圧迫して呼吸困難のリスクを招くこともあります。さらには親知らずが歯列の乱れの原因となるケースも多く、こうした事態を防ぐためにも予防的に抜歯をする必要があるわけです。よほどきれいに真っすぐ生えていて、なおかつ口の中の手入れも完璧という人でない限り、いつかは抜歯するのが基本的な方向性とお考えください。
- Q親知らずを抜くのに適したタイミングはあるのでしょうか?
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A
▲30歳になるまでに親知らずを抜いておくことが理想
年齢とともに顎の骨は硬くなり、親知らずとの癒着が始まると抜くのがますます困難になります。そういう意味でも、まだ骨のやわらかい20代前半が抜歯のベストタイミング。遅くとも30歳になるまでに抜いておくことが理想です。あとは皆さんに多い「今は特に症状はないけれど抜いたほうがいいの?」という疑問ですが、一つの判断基準となるのは、ばい菌が侵入する経路の有無。親知らず自体が外に露出せず歯茎の中に埋まっていたとしても、顎の骨との間に少しでも隙間があると菌が侵入する可能性があります。エックス線撮影や歯科用CTですぐに確認できますので、不安があれば信頼できる歯科医院に一度相談してみるのが良いでしょう。
- Q抜歯治療の際に、特に心がけていることはありますか?
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A
▲できる限り侵襲の少ない治療を心がけている
親知らずの抜歯はあくまで手術ですから、安全性を担保することが何より最優先事項となります。神経損傷や不用意な出血といったリスクを回避するために重要となるのが、歯科用CTによる3次元的な検査です。下顎の場合は骨の中を走っている神経や血管、上顎の場合は副鼻腔までの位置や状態などをしっかりと確認。もし親知らずが下顎の神経管との密着がひどく、骨の切削量がかなり多くなるような場合は、設備の整った病院の口腔外科にて全身麻酔による手術を受けていただく必要があります。当院で抜歯処置を行う場合は、さまざまな専用鉗子を使い分け、術後の治りを意識したできる限り侵襲の少ない治療を行うことを心がけています。
- Q実際の治療は、どのような流れで行うのでしょうか?
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A
▲親知らずの知識、抜歯経験の豊富な歯科医院を選ぶことが大切
まずは問診後にエックス線撮影や口腔内の確認を行い、抜歯が必要と診断されれば歯科用CTで検査をした上で手術日時を決定します。条件によっては即日の抜歯が可能なケースもありますが、安全性に配慮し、しっかりと準備を整えて手術に臨むほうが良いでしょう。また、例えば上下・左右に4本の親知らずがある場合でも、一度に抜けるのは基本的に左右どちらかの上下2本までとなります。当日は部分麻酔後に抜歯となりますが、所要時間は5分で終わることもあれば1時間以上に及ぶこともあり、本数や状態によって大きく異なります。抜歯後は止血用ガーゼを噛んでもらって注意事項の説明を受け、薬や処方箋を受け取ればそのままお帰りいただけます。
- Q抜歯後の生活で注意すべきポイントを教えてください。
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A
▲全身麻酔を要する症例を除く、ほとんどに対応している新井理事長
当日のお風呂はシャワーで済ませ、翌日からは普通に入浴しても構いません。抜歯後の数日間は刺激物を避けて口腔内を清潔に保ち、抗生物質と痛み止めを服用してなるべく安静にしてください。また、かさぶたが剥がれてしまうと出血が止まらず回復も遅くなってしまうため、強いうがいは避けるようにしましょう。痛みや腫れは個人差もありますが、だいたい2日目頃がピーク。時間とともに治まるため、大きく心配する必要はありません。傷口の抜糸は1週間後が目安で、縫っていないケースでも1週間後には必ず受診して傷口の具合や感染の有無をチェックしてもらってください。通常のケースだと、そこで特に問題がなければ治療は終了となります。
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マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。