鍵谷 昌之 院長の独自取材記事
かぎたに歯科医院
(加古川市/厄神駅)
最終更新日:2025/11/14
加古川市八幡町宗佐の県道20号線沿いにある「かぎたに歯科医院」。待合室には副院長や歴代の歯科衛生士が描いた温かみのあるポスターが並び、デジタルサイネージでは歯科の啓発情報が流れる。1996年に開業した鍵谷昌之院長は、大阪大学工学部から歯学部に転身した経歴を持つ。早期に導入した歯科用CTや口腔内スキャナーなど、常に患者のために良い治療を追求する姿勢が印象的だ。2026年2月で開業30年を迎える節目に、「何千回、何万回でも心を込めて治療する」という方針を掲げるクリニックのこれまでの歩みと診療への思いを聞いた。
(取材日2025年10月22日)
工学部出身の歯科医師が追求する理想の診療
工学部から歯学部へと転身された経緯を教えてください。

昭和50年代後半、テレビで歯科医療の特集を見たのがきっかけです。当時の歯科医院は非常に忙しく、患者さんの待ち時間が長い、詰め物やかぶせ物がすぐに取れたり壊れたりするなど、課題が多かったと知りました。私は工学部でエンジニアとして働いていましたが、自分の性格を振り返ると、普通の人なら10回20回で飽きてしまうような作業を、100回でも1000回でも一定のレベルを保って続けられる。この「飽きずにきっちりやる」という強みが歯科治療に向いているのではないかと思ったんです。歯科治療は難しいことばかりではなく、基本的な処置を着実に丁寧に行うことが何より大切。それを自分なら実現できるかもしれないと考え、歯学部への再入学を決意しました。
待ち時間の短縮にこだわってこられたそうですね。
開業当初から患者さんの負担を減らしたいという想いがあり、待ち時間15分以内、来院回数の削減をめざしてきました。当時は「待ち時間の長い歯科医院のほうが、人気があって腕がいいのでは」という風潮があり、「あそこはいつ行っても空いている」と逆に敬遠されてしまうこともありましたが、患者さんから喜びの声をいただくこともあり、患者さんのためになると信じて貫いてきました。今では予約制の歯科医院も増えており、待たないことが当たり前になりましたが、今後も患者さんの負担を減らしていけるような取り組みを行い、ニーズに応えられる歯科医院でありたいと思っています。
設備を充実させることにも積極的に取り組まれてきたとか。

30年近くたちましたので、外観も院内も味が出てきています。ただ、診療は最新のものを提供したいと思い、先進の機器や治療法を積極的に導入してきました。歯科用CTはもう2台目で、地域の中でも早くから導入しています。口腔内スキャナーは、歯の型採りの際に患者さんが苦しい思いをしなくて済みますし、精度も高い。口腔外バキュームは30年前の開業当初から導入していますが、単に設置するだけでなく床下を通して院外に排気するシステムにこだわりました。CAD/CAMシステムも歯科技工所と連携して導入し、精度の高い詰め物やかぶせ物を作れる体制を整えています。設備を充実させることは確かに大変ですが、患者さんにより良い治療を提供したいという思いがすべての原動力です。
歯を長く健康に保つため、丁寧な治療と予防に注力
「保険診療でも10年持つ治療」をめざされているそうですね。

歯を長持ちさせるためには、一つ一つの工程を丁寧にすることが何より大切です。特にこだわっているのが、染め出し液を併用しつつ行う虫歯の除去。30年前、歯科材料の会社の方に「これ何に使うんですか?」と言われるくらい珍しかったんです。でも虫歯を除去した後、全部取りきれたかどうかを確かめるには、この染め出し液を使わないとわからない。私は時間がかかってもきちんと確認することにこだわりました。また、見た目にこだわらなければ無理に自由診療を勧めることもしません。保険診療で扱うレジンという樹脂は、経年とともに欠けや変色が起こることは避けられませんが、10年たっても再治療がない治療を心がけています。保険診療か自由診療かに関わらず、意味のあるものをきちんと提供することが大切だと考えています。
インプラント治療にはどのように取り組まれていますか?
45歳の頃から将来大きく普及すると予見して、講習会に通い続けて技術を身につけてきました。当時はまだ高額で予後の悪いケースもあるとされていましたが、身体的にも金銭的にも患者さんの負担が少ないインプラント治療をめざしてきました。今では精度の高い手術を実現するため、口腔内スキャナーで撮影したデータをもとに作製したサージカルガイドを活用しています。インプラント治療の技術は向上していますし、予後の不安な症例を一つも出さないよう、安全性と正確性にこだわって治療をしています。
予防歯科にも早くから取り組まれてきたそうですね。

昭和の頃は歯磨き指導をしているような歯科医院はほとんどありませんでしたが、そんな中、加古川でも早い段階から予防を啓発してきました。当時、歯科衛生士が「予防指導をしたい」と上司である先生に言ったら「そんなことしたら患者さんが来なくなる」と言われたとか。「他人に口の中を見せるのは恥ずかしい」という時代で、「お口の中のお掃除が不十分です」なんて伝えたら患者さんは二度と来てくれないと思われていたんです。それでもあえて取り組んできた結果、当院の患者さんは高齢の方でも意識が高い人が多いというのが自慢です。患者さんの口腔の健康を長期的に維持するため、予防に早期から取り組んできたことは正しい判断だったと思いますし、続けてきて良かったと思います。
地域と歩んできた30年、これからも続く診療への思い
スタッフの皆さんとはどのような連携をされていますか?

現在、歯科衛生士は3人体制で、皆ベテランで技術レベルが高いスタッフです。とにかく患者さんを大事にすることを第一に、チーム一丸となってケアにあたっています。待合室に掲示してあるポスターは、副院長である娘や歴代の歯科衛生士が描いたもので、症状別のお勧めの歯磨き粉や歯ブラシ、補助具の紹介、歯科に関する啓発など、温かみのあるタッチで患者さんに情報を伝えています。娘は歯科医師として週3日診療を手伝ってくれていますが、イラストが上手で、立て看板なども作ってくれているんです。こうしたスタッフそれぞれの得意分野を生かしながら、患者さんにとって親しみやすく、通いやすいクリニックづくりを心がけています。経験豊富なスタッフが多く、長年通院されている患者さんとの信頼関係も築けていると感じます。
訪問歯科診療も始められたそうですね。
はい。患者さんの中には家の中を見られることをあまり好まない方もいらっしゃって、「何とかして連れて行くからクリニックで診てほしい」と言われることも多かったんです。でも本当に訪問歯科診療が必要な方はいらっしゃいますから、通院が困難になった患者さんのために、できる限り対応したいと思っています。今は当院に通院していない方からの依頼も受けていますよ。融通の利く診療体制を心がけていて、緊急の時も可能な限り対応するようにしています。地域医療に30年携わってきて、これからも地域の皆さんの口腔の健康を支えていく使命があると感じています。
30周年を迎えるにあたって、読者へのメッセージをお願いします。

2026年2月で開業30年になり、多くの方に信頼していただけるようになったと感じています。「何千回、何万回でも心を込めて治療する」ことを大切にしています。特別な技術を持っていることもとても素晴らしいですが、日々来院される患者さんに対して、基本的な処置をきっちり行うことが重要。それを心を込めて丁寧に続けることが一番大事だと思っています。これからも丁寧な治療を心がけ、待ち時間が少なく、予約も取りやすい歯科医院をめざしていきます。診療時間の融通も利きますので、何か困ったことがあれば気軽にご相談ください。患者さんに少しでも良い治療を提供したいという思いで、新しい治療法や設備も随時導入していきたいと考えています。末永く地域の皆さんの健康を支えていけるよう、これからも邁進していきます。
自由診療費用の目安
自由診療とはセラミックの詰め物/5万5000円~、セラミックのかぶせ物/7万7000円~、インプラント治療(1本)/27万5000円

