草場 隆夫 院長の独自取材記事
クサバ歯科医院
(北九州市小倉北区/旦過駅)
最終更新日:2025/08/13

北九州モノレールの旦過駅から徒歩約5分ほどの場所にある「クサバ歯科医院」。スギやヒノキを活用したウッド調の院内は、リラックス感あふれる魅力的な空間だ。院長を務めるのは、九州歯科大学を卒業し、東京・御茶ノ水にある歯科医院で研鑽を積んだ草場隆夫院長。1991年の開業以来、多くの患者の口腔内の健康を支え続けてきた。草場院長は「東京では情報を得ることの大切さを痛切に感じました。だからこそ地元で開業したからには、こちらの患者さんにも歯に関する情報を適切に提供し、ご自分で歯の健康を考えられるようになってほしいと思っています」と話す。多忙な合間を縫って歯科診療の勉強を続けるなど、自己研鑽にも熱心な草場院長に、同院の治療スタンスや、大切にしている点などを聞いた。
(取材日2022年8月1日)
歯に関する情報を知る大切さを、患者にも伝えていく
先生が歯科医師をめざしたきっかけを教えてください。

子どもの頃住んでいた家の斜め前に歯科医院があり、毎日のように遊びに行っていたんです。当時は今とは違って歯科技工士さんも歯科医院に常駐することが多く、その技工作業を見るのがすごく好きだったんですね。そして高校生になって進路を考える時期になり、子どもの頃に何度も歯科医院に訪れていた記憶を思い出したのです。社会に貢献できる仕事がしたい、手先が器用だからそれを生かせる仕事がしたいと考えていたこともあり、九州歯科大学に進学しました。
大学卒業後は、東京の御茶ノ水にあるクリニックに勤務されたそうですね。
「井の中の蛙大海を知らず」ではいけない、先進的な知識と経験を得たいと考え、先輩のつてを頼って就職しました。当時、歯科医師の15%ほどが母校の出身者と言えるほどであり、先輩方が全国各地におられたので、そのご縁でした。御茶ノ水はビジネス街でもありますから、金銭的に余裕のある患者さんが多く、自由診療にも力を入れているクリニックでしたね。特にありがたかったのが、週に1回はどこかのセミナーに参加できる環境であったことです。東京医科歯科大学まで徒歩10分ほどの距離だったので、そこで開催されるセミナーにも積極的に参加するよう教えられていました。当時は九州との情報量の差を痛切に感じましたね。
先進的な治療が勉強できる環境を求めて、東京で勤務されたのですね。

現在は九州でも歯科のセミナーや勉強会が盛んになっていますが、当時は今とは比較にならないほど少なかったんです。都内で就職したからこそ得られた知識は、自分にとって大きな財産になったと思います。そうして4年ほど勤務して九州に戻り、1991年に開業しました。半年ほどは九州のクリニックに勤めたのですが、例えば滅菌に対する設備や意識などが、当時の九州と東京とでは天と地ほども違ったのです。もともと開業は視野に入れていましたが、そういう点もきっかけになり、自分でできる範囲のことは自分でやりたいと考え、開業しました。
患者が当事者意識を持つよう、さまざまな工夫を重ねる
よくある歯科医院とはひと味違う印象の院内ですね。

無垢材でクリニックを作りたくて、スギとヒノキを使っています。スギ・ヒノキは強度もありますし、使っていくうちに味わいも出てきます。当時は合板に使われるホルムアルデヒドなどの人体への影響は今ほど知られていませんでしたが、私はそれらは使いたくないと考え、また自分の手で何かを作ることも好きだったので、自分で手を加えたりしてこういう形になりました。この「物作り」に対する情熱は私の中では治療にもつながるもので、1から10まで私自身が患者さんに向き合いたいという想いの表れでもあるんです。当院は予防にも力を入れていますが、それらも歯科衛生士さんではなくすべて私が対応しています。
診察や治療で心がけている点は何でしょうか?
東京では情報を得ることの大切さを学びました。ですので当院でも、患者さんにいかに視覚的にわかりやすくお口の状況を伝え、それを自分事として捉えてもらうかという点にかなり気を配っています。今でこそパソコンや専用のソフトを使い、患者さんにエックス線画像などを見てもらう歯科医院も多くなっていますよね。当院でも開業当初はパワーポイントなどに口腔写真と説明文を記載した資料を使用したりしました。現在は定期検診に来てくださる方には、ご自分のプラーク(歯垢)を顕微鏡で4000倍にしたものを、32インチのモニターに写して確認していただきます。
どういった目的があるのでしょうか。

もちろん菌などを見るのが苦手な方には行いませんが、この方法で一人でも多くの方が予防を「自分事」として捉えてくださるようになればいいなと考えています。当院の定期検診は通常3ヵ月に1回、1時間の枠で行いますが、患者さんも3ヵ月前のご自分の状況などをしっかり覚えているんですよ。その上で菌は増減したのか、どのような菌がいるのかなどをご自身の目で確かめると、治療・予防を積極的に行ってくださるようになるのではないかと考えています。同時に当院からもお勧めの歯磨き粉をアドバイスしたりと、ホームケアとクリニックでのプロフェッショナルケアを両立させ、口腔環境に好循環をもたらせるように工夫しています。
情報と健康は一生の財産。真摯に患者と向き合っていく
患者さんが予防を「自分の問題」として捉えるのが大事なのですね。

そのとおりです。3ヵ月に1度の定期検診を受けるということは、90日中の89日は、ご自分でケアをしなければならないということ。その重要性を理解するためのツールが定期検診での情報提供であり、歯磨き粉などのアドバイスだったりするんです。それを続けることで患者さんの口腔環境はきれいになっていくと思っています。また、それによってさらに健康になることを意識されて、定期検診にもきちんと足を運んでくださるようになったりという好循環が期待できます。こうして患者さんのデンタルIQもかなり高くなっていくのではないかと思います。
他に診療の際に大事にしていることはありますか?
ラバーダムと呼ばれる、根管治療時に患部以外を覆うゴム製のシートを使用することです。ラバーダムには細菌を含んだ唾液が患部に流入して細菌感染することを防ぐ役目があるのですが、使用しているクリニックは実はかなり少ないのです。ラバーダムを使用すれば治療の精度も上がり、再治療の確率もぐんと減ります。歯は残念ながら、治療すればするほど弱くなっていくもの。治療をゼロにすることは難しくとも、最低限の治療に抑えられるようにする努力がクリニック側にも必要なのだと思います。これらの治療内容やその意図もお伝えしているので、患者さんも理解してくださるのだと思いますよ。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

良い歯科医院を探したいのであれば、「時間をかけて患者さんの状況をじっくりと診てくれる」という点を一つの指標にすることをお勧めします。それだけ患者さんに真摯に向き合っているということですから。また前述したように私は物作りが好きで、機器もできる範囲は自分で修理し、大切に使っています。これが私の生き方です。だからこそ思うのが、患者さんにも、物を大切にしてほしいということ。歯もそのうちの一つです。当院では、そのために何ができるのかという「情報」をお伝えします。患者さんが自分のことを自分で考えられるようになっていくと知識や健康という、一生の財産が得られるのだと思います。