上枝 宏和 理事長の独自取材記事
うえだ眼科
(綾歌郡綾川町/陶駅)
最終更新日:2025/08/29

優しい語り口で笑顔を絶やさない、上枝宏和先生が理事長を務める「うえだ眼科」は、2001年5月に綾川町で診療を開始した。赤れんが調の建物は遠目にも目を引き、東西に18台分の駐車場を備えているため、車での通院にも困らないだろう。天井が高く、開放感あふれる院内はワンフロア完結型。目の不自由な患者も、待合室から手術室、回復室まで徒歩で移動しやすい設計だ。上枝理事長は、香川医科大学(現・香川大学医学部)の附属病院で長く研鑽を積んできたベテラン医師。現在は一般的な眼科診療に加え、白内障や緑内障の手術にも対応しながら、「目が見える喜び」を届ける治療を志している。開業から20余年。今日も笑顔で地域住民に寄り添う上枝理事長に、患者へのメッセージなどを聞いた。
(取材日2025年7月7日)
目が見える喜びを、患者と分かち合いたい
眼科の医師をめざした理由は?

人の役に立ちたい、困っている人を助けたいという想いから医師をめざしました。眼科を選んだのは、「人は情報の約80%を視覚から得る」といわれていたからです。日常生活を送る上で欠かせない、目の健康を守ることで人のお役に立てればと考えました。加えて、目の手術に興味があったことも眼科を選んだ理由の一つです。目が見えづらく、ご家族に手を引かれて歩いていた患者さまが手術後にお一人で歩けるようになれば、それはご本人にとってもご家族にとっても、そして私にとっても喜ばしいことです。私は目の疾患の手術に取り組むことで、目が見える喜び、目の見える生活を送る喜びを、患者さまと分かち合いたいと思っています。
開業された経緯を教えてください。
大学卒業後は大学院で博士号を取得し、その後は眼科の病棟医長を務めていたのですが、勤務医ではいろいろな面で制約があり、「自分の理想とする治療を行いたい」との想いから開業を決意しました。大学病院で過ごす期間が長かったので、開業前には淡路島の総合病院で眼科部長を務めながら、地域医療を学ばせていただきました。開業場所として綾川町を選んだ理由は、家内の親族が多くなじみ深い地域であったということと、眼科の数が不足したエリアだったからです。綾川町は温厚な方ばかりですし、この場所で開業することができて本当に良かったです。
クリニックの設計や、検査機器のこだわりはありますか?

愛媛県で勤務していた際にお世話になった先生のクリニックがとてもすてきであったため、同じ設計事務所に連絡を取りました。特徴的な赤いれんがタイルの外観や、開放感あふれる高い天井は設計士の方と決めたものです。設計の中で最もこだわったのは、目の見えにくい患者さまがつまずいてしまわないよう、バリアフリー設計にしたことですね。待合室から手術室まで歩いて行けるように、院内はすべてワンフロアで完結させています。検査機器については、患者さまへの負担の少ないものを導入しました。例えば眼底を隅々まで調べる場合、一般的には散瞳薬によって瞳孔の拡大を図った上で何枚も写真を撮ることが多いのですが、当院の広角眼底カメラは散瞳薬を使わずに、一度の撮影で広範囲の眼底を捉えることができます。
他院とも連携し、ベストな治療の選択をめざす
こちらのクリニックの特徴をお聞かせください。

白内障や緑内障、翼状片などの日帰り手術に対応していることです。最も多いのは白内障ですが、大学病院時代は緑内障を専門としており、手術も数多く経験してきました。毎週火曜日の午後に加え、月曜日の午前中にも、代診の先生のお力を借りながら手術を行っています。手術の様子は気になるものでしょうから、手術室の壁には、患者さまのご家族が様子を見られる小窓を設けました。窓の隣のモニターでは顕微鏡の映像を見ながら、スタッフが状況説明をすることも可能です。回復室は半個室と個室の2タイプがあり、手術前後の時間をくつろいでお待ちいただけます。
手術は、複数の病院やクリニックと協力関係にあるそうですね。
眼科は内科などのように細分化されていない、一つの診療科です。しかし、その中にもさまざまな専門分野があり、それぞれの分野で専門性を高めた医師が存在します。大切なのは、患者さまにとってベストな治療を選択することですから、より良い治療成績が期待できる場合や入院が必要な場合には、適切な医療機関をご紹介しています。当院の手術は現在、数ヵ月待ちの状況であり、手術を急がれる方も他院をご紹介させていただく場合があります。診療についてもお待たせすることが多くなっているため、少しでも有益に待ち時間を使っていただけたらと、待合室には多ジャンルの本を並べ、院内無料Wi-Fiを設置。患者さまに対しては外出や一時帰宅をご提案したり、車での待機を希望される方には順番をご連絡したりといった工夫も続けています。
患者さんが最初に受診する理由として、多い症状は?

目が見えにくい、目がかすむ、あとは最近であれば、ドライアイの症状を訴える方も多いです。学校健診で、近視を指摘されたお子さんも来られていますね。スマートフォンやゲームの普及からか、近視と診断されるお子さんは着実に増えており、発症年齢も若年化しています。お子さんは近距離で画面を見がち、集中しがちですから、1日2時間を目安とした屋外活動にあたるとともに、室内の明るさや画面を見る時の距離、画面を見る時間に配慮することが大切です。強度近視の場合は、緑内障や網膜剥離などを発症しやすいといわれていますので、30分画面を見たら30秒以上は遠くを見て、目を休めてほしいと思います。また近年は若い女性などの間で、スマホが原因とされる内斜視の方が増えています。これは目が内側に寄って戻らなくなる状態で、悪化すると手術が必要になることもあります。年齢を問わず、電子機器との付き合い方にはくれぐれもご注意ください。
疾患の早期発見のため、定期的な検査受診を
目の健康を守るため、他にも患者さんに伝えたいことはありますか?

コンタクトレンズは、正しい方法でお手入れしましょう。ソフトコンタクトレンズであれば、専用のケア用品を使って最低20回ずつ、表と裏のこすり洗いをした上ですすぎ洗いと漬け置きをすることが推奨されているのですが、実際は漬け置きしておくだけの方や、4~5回こすって終わり、という方が多いのではないでしょうか。その方法では、汚れやばい菌を落としきることができません。ケースも、濡らして置いておくと容器の口にばい菌が繁殖するため、ばい菌が付着したコンタクトレンズを使用して、角膜に傷をつけてしまうパターンが少なくありません。毎日のこすり洗いを負担に感じる方には、漬け置きするだけでレンズを洗浄・消毒するケア用品もご紹介できますので、一度ご相談ください。
院外では、アイバンクの活動に力を注がれています。
亡くなられた方の眼球をご提供いただき、角膜移植が必要な方へとつなぐ香川アイバンクの理事長を2018年から務めております。これは提供者の目の一部が、別の人間の目となって生き続ける、いわば「命のリレー」です。多くの希望者が移植を待っていますが、県内での移植件数は年間数件にとどまっています。提供者を増やすためにも、まずはアイバンクの存在を広く周知していきたいです。今は角膜だけでなく、強膜つまり白目の部分も緑内障の手術などに使用され、不要になる組織は一つもありません。感染リスクの観点から、新型コロナウイルス感染症や肺炎、重度のアルツハイマー型認知症で亡くなられた方は対象外となりますが、白内障の手術をされた方や強度近視の方などでも問題なくご提供いただけます。献眼でしか光を手に入れることが望めない方々のためにも、この活動が少しでも広がることを祈っています。
最後に、読者へのメッセージをどうぞ。

目の前にあるのが、自分の目だったら。あるいは家族の目だったら。私は常にそう考えながら、目の診療に取り組んでいます。今は高齢化が進んでいますので、皆さまが少しでも視力を維持できるような治療を提供していきたいです。日本人は、40歳を過ぎると20人に1人は緑内障を発症するといわれています。20代、30代の方がコンタクトレンズの購入時に検査を受けたら、緑内障が判明したというケースも存在します。緑内障を筆頭に、目の疾患は自覚症状のないことが多いため、1〜2年に1回は眼科の検査を受けましょう。当院は不安を抱えた患者さまの心に寄り添いながら、お一人お一人に合わせた治療方法で、目が見える喜びをともに分かち合いたいと思います。