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三枝直樹 院長の独自取材記事

中野なおクリニック

(中野区/中野新橋駅)

最終更新日:2019/08/28

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中野新橋にある「中野なおクリニック」は3つの大きな特徴を持つ在宅診療のクリニックだ。1つ目は、院長の三枝直樹医師が外科の医師であるということ。2つ目は、小規模のクリニックながら医師、看護師、理学療法士、薬剤師、メディカルソーシャルワーカーといった在宅診療に必要なスタッフをすべて自院にそろえているということ。そして、3つ目が長生きすることに注力するクリニックということだ。「どんな人の輪にもすぐなじめる」という三枝院長の指揮のもと、スタッフ同士が1つのチームとして非常にまとまっており、明るい雰囲気に包まれている中野なおクリニック。三枝院長が外科から在宅医療に転身したのはなぜなのか。医療にかける思いやスタッフの体制について、三枝院長に詳しく話を伺った。
(取材日2014年11月25日)

患者に喜んでもらうという原点に返るために在宅診療の世界へ

外科の医師で在宅診療をされている方に初めてお会いしました。

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僕自身も外科の医師で在宅診療をしている方には会ったことがありません。しかも、心臓血管外科というジャンルから在宅診療に転じた医師はそうそういないでしょう。僕が在宅診療に関わるようになったのは、2002年の時。在宅診療が専門の新宿ヒロクリニックで週1回働くようになったのがきっかけです。当時僕が常勤の病院で主に診ていたのは心臓血管外科でした。在宅診療との共通点は、生死の境目を行き交う患者さんが治療対象であることでしょうか。

なぜ外科から在宅診療に転身しようと思われたのですか?

心臓外科は治って当たり前の厳しい世界になりつつありました。そういった中で、失敗を恐れるあまり医師が治療に消極的になってしまうディフェンシング・メディスンも問題視されるようになっていたんです。病院の治療において、患者さんが喜ぶ顔を見られなくなっていったのは自分にとって大きなストレスでした。しかし、在宅医療は違いました。ご自宅を訪問すれば、患者さんから必要とされる医療があり、僕も医師として提供できる医療があったのです。開業当初のスタッフは薬剤師兼事務長、僕、1ヵ月遅れで入ってきた看護師の3人のみでした。僕以外は在宅医療の経験のない者ばかり。初めの4年間は夏休みも取れず、体力勝負でしたね。僕自身は医師になってから体を壊したことがなく、24時間体制で患者さんを支えなければならない在宅医療の現場も乗り切ることができました。大学時代にボート部で体を鍛えていたので、体力には自信があったんです。

外科の医師が訪問診療を行うメリットを教えてください。

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訪問先で傷口を縫うなどの外科処置がすぐできるという点です。認知症の患者さんの場合、自分が頭を切っていることもわかっていないことがあります。家に入ったらそこらじゅう血まみれで、なにか事件に巻き込まれたのかと思ったこともありましたね。でも、本人は傷口に気がつかずに平然とガラスを拾っているんです。「おばあちゃん、頭切れてるよ」とその場で縫合処置を行いました。このように、1人暮らしの高齢者の場合は本人が怪我していることを理解しておらず、医師やホームヘルパーが訪問して初めて発見するというケースもあるんです。こういうときに、外科の医師だと処置まで手間がかかりませんね。ただし、外科の医師といえども訪問先で外科処置がなんでもできるというわけではなく、骨折などは病院で処置しています。

家族の気持ちに触れて気付く患者の命の重さ

先生のポリシーを教えてください。

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僕のポリシーは「生」にこだわるということです。患者さんには1日でも長生きしてほしい。もちろん、患者さんの意志次第ですけどね。在宅医療であっても、医療の質は極力落としたくないんです。病院レベルとまではいかないまでも、自宅の医療でもここまではできるんだ、ということを患者さんには示しているつもりです。やはり僕は医師なので、患者さんの最期の看取りに立ち会えることよりも、少しでも元気になってもらえるほうがうれしいんですよ。ですから、僕は胃ろうも点滴も迷うことなく処置します。家族がすべきかどうか悩むぐらいなら、後で後悔しないように処置します。こうした処置を意味がない、とは思わないんですよ。患者さんがこの世に存在していることに意味があるのですから。

先生が「生」にこだわるようになったのはなぜですか?

患者さん1人を診るのと、その背後にいる家族の存在を含めて診るのとではまったく意味が違ってくるんですよね。それは、在宅医療で家族と関わるようになって痛感したことです。娘さんのためにも、この患者さんもっと生かしてあげたいよね。そういう思いで治療にあたることもあります。診察室にずっと座り続けていたら、わからなかったことでしょう。ご自宅に行き、患者さんの生活を目の当たりにして、初めてわかったこともたくさんありました。薬をちゃんと服用できていなかったり、お風呂に半年も入っていなかったり、そもそも食事内容が適切じゃなかったり。生活全体の様子が見えてくると、普段の健康管理がいかに大事なものかわかってきます。生活を改善した結果、半年、1年と長生きしてくだされば、こちらもうれしいです。91歳で訪問診療を始めたおばあちゃんが97歳になっても元気でいる。そういうのが1番ですね。

先生のおかげで健康を取り戻した患者さんもたくさんいらっしゃるのですね。

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僕がどうこうしたというよりは、おそらく今までご家族・患者さんに合った説明がきちんとなされていなかっただけだと思うんです。しかし、病院ではこれがなかなか見えてこないんですよ。在宅医療を始めて、やっと以前の医師との間にあった誤解が解けたということはよくあります。例えば、病院での入院を断られたというのは決して治る見込みがないという意味ではないんですよ。在宅医療を始めるご家族は不安でいっぱいです。その不安を取り除いて、ご家族の方に自信を持ってもらいたい。在宅医療はどうしても限界のある医療です。だから、何かあった時はしょうがないんです。ケアするご家族のせいではありません。ちゃんと頑張ってきたのですから、それでいいのです。ご家族の方が明るく在宅医療に携われるよう、力になりたいですね。

紹介で集まったスタッフとともに長寿をめざす

スタッフ同士の連携についても教えてください。

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当院には訪問診療、訪問看護、訪問服薬、訪問リハビリを一貫して行えるだけのスタッフが在籍しています。毎朝8時半に、その日の役割毎に集まって会議を開き、患者さん一人ひとりにどう接していくかを話し合います。情報交換はステーションに戻ってきた際などに常に行っていますね。また、何か異常があった場合は携帯電話ですぐに連絡してもらっています。当院のスタッフは、スタッフからの紹介で自然と増えていきました。実は、当院はスタッフの募集をかけたことが一度もないんです。スタッフが自然と集まってきたのは、年齢の近いスタッフが多く、職場がフランクな雰囲気であったからではないでしょうか。スタッフ同士で飲みに行くこともよくあり、とても仲が良いです。フットワークも軽く、休日や夜間に急な応対が必要な場合もすぐ動いてくれ、助かっています。

在宅医療を考えるご家族にアドバイスをお願いします。

在宅医療を始めるか、病院に入院するか、迷ったり困ったりしたことがあればまず相談してみることをお勧めします。結局、「こんなこと聞いてもいいんだろうか」と遠慮して何もしなかったがために処置が間に合わなかった、というケースが1番かわいそうですから。例えば、認知症で誰かの介助がないと通院できず、通院の度に仕事を休んでいるケース、介護保険の申請方法がわからないケースなどもそうですね。おむつなどのケアの方法を知らなかったがために、失禁する度に家中を拭いておられた方もいました。当院にご相談くだされば、こうした状態から普通の生活に戻ることができますよ。

最後に、今後の展望を教えてください。

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病院の負担を軽減し、病院で治療を受けるべき人が病院で治療を受けられるようにしたいですね。そのためにも、当院でも行える治療は積極的に当院内で行っていきたいです。また、当院はここまで大所帯になってきましたが、この先規模をもっと大きくしてフランチャイズ化する、ということは考えていないんです。この地域に根ざして、現在の医療の質を維持していくことを考えています。医療の質の維持とは、どんな患者さんがいらっしゃっても同じ質の医療を提供できるようにするということです。この周辺の地域を日本で1番長寿にする、というのが僕の開院当初からの夢。皆さん一緒に100歳をめざしましょう。

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