酒井 雅人 理事長の独自取材記事
さかいペインクリニック
(柏原市/柏原駅)
最終更新日:2025/09/12

柏原駅西口すぐの複合施設4階にある「さかいペインクリニック」は、「痛み」に対してさまざまな方面からアプローチし適切な治療を行う。酒井理事長は、大阪医科薬科大学病院で麻酔科の医師として手術室やICUでも研鑽を積んだ豊富な経験を持つペインクリニックの専門家。開業当初はブロック注射を中心とした痛み治療を行っていたが、「ブロック注射だけでは限界があった」と考え、開業から7年経過し、リハビリテーションと融合したペインクリニックという新しい形にたどり着いた。一時的な痛みの緩和だけでなく、再発防止まで見据えた根本的な治療をめざす。生まれ育った柏原の地で「痛い時にすぐ診る」診療にこだわり、予約に縛られない柔軟な診療体制を整えた。その診療哲学や、麻酔科の医師だからこそできる安全性への配慮について聞いた。
(取材日2025年8月19日)
痛みの根本解決をめざすリハビリ融合型の診療
先生がペインクリニックを専門に選んだ経緯を教えてください。

専門分野を決める前に、強く感じていたのが「開業医になりたい」ということでした。そこで、今後どの分野でニーズが高まるのかを考えていた時に、大学で私が後に師事する麻酔科の教授と出会ったのです。麻酔科の教授でしたが、専門はペインクリニックで、その治療方針は東洋医学なども融合し、さまざまな手段を使って痛みの治療を行うというものでした。そこから、痛みを持つ患者さんを専門に診るペインクリニックに興味を持ちました。当時ペインクリニックはマイナーの麻酔科の中のさらにマイナーな領域でした。でもだからこそ、近い将来、開業医として痛みに苦しむ患者さんのお力になれるのではないかと。ただ、当分野の研鑽を積める環境は少なかったので、大学病院の手術室やICU、救急救命などさまざまな部署を回りながら学びを深め、10年以上かけてやっとペインクリニックの診療に専念できるようになりました。その経験が今の診療につながっています。
この地での開業を選んだのはなぜですか?
私は生まれた時から柏原に住んでいて、両親もこの地域の住人です。育った場所だからこそ、地域の特性もよく理解していました。柏原は昔ながらの人が多く住む、ほのぼのとした田舎町です。新興住宅や若い世代の流入が少ない分、本当に昔からの住民が多い。実際、患者さんの中には私の両親の知り合いや親戚の知人も来られます。そういう人とのつながりを大切にする土地柄です。また、医療面では整形外科クリニックも少なかったこともあり、痛みの専門医療を提供する意義があると考えました。40歳という年齢もあり、開業するなら今だと、2008年にこの地で開業しました。駅直結という立地も、痛みを抱える患者さんが受診しやすいという点で理想的でした。
リハビリにも力を入れていると伺いました。

開業当初はリハビリ施設がなく、ブロック注射だけで治療していましたが、根本的な解決につながっていないことに気づいたのです。ブロック注射は対症療法なので、一時的な痛みの改善は図れたとしても痛みが出ないような状態を継続するものではありません。根本的な解決を図るにはリハビリが不可欠なんです。そこでリハビリ施設を作り、今では当院の基盤として非常に力を入れています。一旦ブロック注射で痛みの改善を図った後、リハビリで筋力強化や姿勢改善を行うことで、次のブロック注射までの期間を延ばしていき、痛みが出にくい状態をめざしていくというのが基本的な流れです。
麻酔科医師の専門性を生かした安全性に配慮した治療
どのような症状の患者さんが多く来院されますか?

患者さんの約8割は腰痛、肩凝り、膝痛、肩痛、首痛といった整形外科的な痛みを抱えた方々です。基本的には整形外科に通院しているような患者さんが多いです。残りの2割は、症状がひどい帯状疱疹後神経痛、頭痛・顔面痛・全身痛など「どこに行っても異常がないと言われた」という患者さん。頭が痛くて脳外科、胸が痛くて循環器内科などを受診したけれど異常が見つからないという方が、最終的に当院にいらっしゃいます。痛みの原因がわからない患者さんに対しても、どこの診療科で診るべきかの振り分けができますし、原因不明、治療困難な難治性の痛みで当院で対応できないと判断した場合は大学病院などの適切な痛み治療の専門施設へと迅速に紹介する体制も整えています。
貴院の特徴を教えてください。
先ほどお伝えしたように、局所麻酔薬を用いたブロック治療とリハビリを融合させ、根本的な痛みの解決をめざしていることが大きな特徴です。これは、関西でもあまり多くない形態ではないでしょうか。加えて「痛み」の特性から、予約制をとっていないことも当院ならではだと思います。痛みは急に出るものなので、「来週の予約」では間に合わないんです。来週には痛みがもっとひどくなっている可能性もあります。だからこそ、予約診療が主流の時代でも、あえて予約制はとらずに、「いつでも来てください」という体制を貫いています。その分、待ち時間が長くなることもありますが、痛い人を迅速に診ることを最優先にしていますので、ご理解いただけたら幸いです。ただ、初診時だけは予約ができるようにもしています。
ブロック治療について、こちらの強みを教えてください。

安全性と正確性に配慮した治療を重視していることです。ブロック治療は痛みの改善が期待できる一方で、急に血圧が下がったり、呼吸がおかしくなったりするなど、合併症のリスクもあります。私は大学病院で麻酔科の医師として手術麻酔、救急医療やICUでの経験を長く積んできましたので、万が一何か起こった時でも迅速に対応できます。また、手術室での麻酔でブロック注射を日常的に行っていたこともあり、患者さんに安心して受けていただけるのでは思います。もちろん経験だけに甘えず、安全と正確な治療のために、できるだけ新しい機器を導入し、透視装置やエコーなども活用しています。なお、院内設計に関しても安全性を重視して、院内のどこにいてもできるだけ患者さんを見渡せるような配置にしています。というのも、ブロック注射後に状態が変化することもあるので、常に観察できる環境が重要なんです。
患者目線を大切にしたチーム医療と今後の展望
診療で心がけていることやスタッフ教育について教えてください。

スタッフには常に「自分が患者になった時にどう思うか」を行動指針にするよう伝えています。自分が来院した時、どうされたいか、どういう言葉をかけてほしいかということです。例えば、待ち時間の長い患者さんに目安の時間を伝える、痛みが強い人には待合室でなく、すぐベッドで横になってもらう、エックス線撮影もなるべく短時間で済ますといった配慮ですね。私自身は多くの患者さんを診るため、一人ひとりに長い時間がかけられない代わりに、受付スタッフや理学療法士、鍼灸師など全スタッフが丁寧にコミュニケーションをとり、得た情報を共有してもらっています。クリニック全体で患者さんを支える体制です。また、西村先生と中尾先生という信頼できる医師にも週1回来てもらっています。さまざまな視点で診療する体制もあり、患者さんにとってより良い医療を提供できると考えています。
今後の展望についてお聞かせください。
現在のクリニックはある程度完成形に近づいていますが、今後はデイサービスのような運動習慣をつける施設も検討しています。運動習慣は痛みの予防にとても大事なので、その手助けをしたいんです。また、最近分院の「なかお三国ペインクリニック」を開設しました。ペインクリニックにはさまざまなスタイルがありますが、私はリハビリ施設と融合したペインクリニックには、これからもっとニーズが高まっていくと確信しています。痛みに苦しむ方を少しでも減らせるよう、この考えに賛同してくれる医師とともに同じスタイルのクリニックを展開していけたらいいですね。地域に専門的な痛み治療ができる場所を増やすことが、私の使命だと思っています。
読者へメッセージをお願いします。

ペインクリニックは聞き慣れない診療分野かもしれませんが、どんな痛みに対しても提案できることがあります。整形外科的な痛みはもちろん、原因不明の痛みでもまずは相談してみてください。「何科に行けばいいかわからない」という方も、痛みを我慢せずに一度飛び込んでみてください。当院ではブロック注射で痛みの緩和を図った上で、リハビリによる再発防止までを一貫してサポートします。地域の皆さんの痛みに寄り添い、根本的な解決をめざして診療にあたっていますので、気軽にご相談ください。