高橋 泰生 院長の独自取材記事
たかはしファミリークリニック
(天理市/前栽駅)
最終更新日:2025/10/02

天理市西井戸堂にある「たかはしファミリークリニック」は、2006年の開設以来、小児科・内科・アレルギー科分野において地域の健康を支えてきた。院長の高橋泰生先生は、研修医時代に幅広い診療科を経験し、小児腎疾患や喘息治療に尽力してきたベテラン医師。独立開院後は、成長した子どもたちが大人になっても通えるよう一般内科も診療し、血液による炎症反応の検査であるCRPの測定などによって精度の高い診療をめざす。また、自らプログラミングを学び、電子カルテを自在に操り、漢方処方システムや小児アレルギー問診票・栄養指導票・生活習慣病の療養計画書を独自に開発するなど、医療のデジタル化にも注力。さらに漢方をはじめとした東洋医学を取り入れ、新しい診療の形を模索し続けている。地域貢献をめざす高橋院長に話を聞いた。
(取材日2025年8月7日)
小児診療に尽力、成長後も診られる環境を整える
はじめに、医師をめざしたきっかけを教えてください。

私は岡山県の出身ですが、子どもの頃から家族と天理の地を何度も訪れており、ゆかりを感じていました。進学にあたっては京都に関心があり、理工学部を志望していましたが、高校3年の夏に父からは大学進学自体を拒絶されました。家が貧しく進学は諦めていたのですが、翌年の1月末に父が天理で、天理よろづ相談所病院(よろづ病院)の開設を目にしたことで、医師の仕事も「人救けの道」と感じたようです。天理から戻ってすぐに、医学部ならばと一度きりの条件で受験を許してくれました。思いもしていなかった進路でしたが急きょ受験勉強に取り組み、岡山大学医学部に合格しました。こうして天理との縁が重なり、医学の道を歩み始めました。
開業されるまでの経歴をお聞かせいただけますか。
はい。医学部6年生の時、父から「よろづ病院に海外医療科があるから行ってみないか」と勧められました。父の言葉に従う形で翌年入職しましたが、そこで貴重な経験を積むことができました。当時はまだレジデント制度がなく、制度づくりの一端を担いながら、各診療科を回り、多くを学びました。もともと小児科に関心はあり、ラオスという辺境の地で海外医療も経験しながら、自然な形で4年後に小児科に配置転換になりました。当時は発症数の多かった小児腎臓病や、アレルギー疾患の診療・研究にも携わり、京都大学から博士号も頂き、およそ30年にわたって小児科で勤めました。そうして研鑽を積ませていただいた後、58歳の遅さで開業に踏み切った形です。
小児科、アレルギー科に加えて、開院後は一般内科も診療されています。

はい。小児腎臓病やアレルギーを専門にしていましたが、小児患者さんが成長されても診療を続けてきた経緯から、開院を機に子どもから大人まで診られる場をつくりたいと考えたのです。その思いを込めて「ファミリークリニック」と名づけました。よろづ病院にいる頃からですが、耳鼻咽喉科や眼科なども幅広く学び、あらゆる症状に対応できるよう努めてきました。開業して19年になりますが、ありがたいことに当初から多くの患者さんが途切れることなく来院されています。きっと、よろづ病院で築いた患者さんとの信頼関係や、クチコミなどがあってのことではないでしょうか。天理は私にとって、幼い頃から訪れていた故郷のような町であり、この地域の皆さまが安心して通える医院でありたいと思っています。
豊富な知識や先端の設備で、多角的に患者を支える
診療のモットーについて、お聞かせください。

子どもの病気を診るとき、私はいつもよろづ病院のモットー「笑顔と親切」を第一に考えています。昔は小児腎臓病が多かったのですが、今ではアレルギー疾患、特にアトピー性⽪膚炎や喘息のお子さんが増えています。開院後ピーク時には、院内に20台の貸し出し用の吸入器を用意し、入院をできる限り避けるよう努めました。悪化すれば毎日でも診て、必要なときはすぐ連携する病院での入院につなげます。診察では「今はまだ大丈夫」「そろそろ入院が必要」とわかりやすくお伝えし、保護者の方が安心して対応できるようにしています。よろづ病院をはじめとした先進医療に取り組む病院との連携を欠かさず、お子さんもご家族も心穏やかに過ごせる医療の提供をめざしています。
その他にも、同院の診療の特徴はありますか?
当院ではCBC+CRP測定装置を備え、炎症反応を含む各種血液検査にも対応しています。例えば、咳や熱・腹痛の患者さんを採血すると、CRP値が高い場合は炎症反応があるとみて、肺炎や虫垂炎の早期発見につながることも考えられます。こうした緊急性の高い事例では、いかに迅速に入院紹介や救急搬送を行うかが重要になります。採血は私自らの手で行い、採血が難しい子どもでもおよそ1分で行うよう心がけています。採血後5分で結果が出ますので、早期の判断や適切な治療につなげることができます。
漢方をはじめとした東洋医学にも、力を入れられていると聞きました。

はい。漢方も積極的に使っています。患者さんの症状に合わせた「証」を大事にしていて、西洋薬で求めている効果が見込めない場合や副作用が心配な時に選んでいます。私は長年にわたり診療に携わる中で得た資料に基づき、自分で漢方のプログラムを作っていて、漢方問診表を書いてもらえば、どの漢方薬を処方すれば効果が期待できるかが判断できます。患者さんにも「この薬で体の中がこう変わることが見込めます」と説明できるんです。また指圧に関する研究を重ねていて、片頭痛や腰痛の患者さんには自己指圧を指導、自身でも自己指圧をしながら、いずれは研究論文を出したいという夢もあります。
ゆかりある地で、家族が安心できる「かかりつけ医」に
漢方診療のお話でおっしゃったように、日々の診療にプログラミングを活用されているのでしょうか?

そうですね、デジタル化にも力を入れています。開業時から電子カルテを用いて診療していますし、自分でも多くのプログラムを作りました。院内には20台のパソコンを置き自分で管理、カルテ入力や漢方薬の処方をスムーズに管理できる仕組みを整えています。プログラミングに興味を持ったのは、35歳頃です。心臓外科チームの先生方が、早くからプログラミングを使いこなしている姿にふれたのが大きなきっかけでした。当時の私より若い先生方が活躍する姿に刺激を受け、独学でプログラミングに取り組みました。今では患者さんの情報を1日1枚のカルテに集約し、事務方の簡単な入力だけでカルテ入力の文章が出る仕組みを実現しています。おかげで診療中も患者さんとしっかり向き合うことができます。
幅広く探究活動に取り組まれ、先生のバイタリティーを感じます。趣味についてもお聞かせくださいますか。
趣味はいろいろです。30歳で壁打ちから始めたテニスは、腕を痛めるまで35年間続けました。思えば、学生時代の勉強を含めて、何でも独学してきましたね。ただ、家内に勧められて始めたボイストレーニングは先生が素晴らしく、一流のすごさ・教えられる喜びを実感、10年ほどになりますが、今も続けています。声を出すことで丹田が鍛えられて、体にもすごく良いんですよ。開業から1日も休まずにいる私の健康の秘訣の一つです。そしてもちろんプログラミングも大好きで、医学統計ソフトのホームページを作っています。趣味と実益を兼ねた形ですね。休日もプログラミングや研究に没頭していることが多く、休む暇はあまりありません。踏み台昇降で体を動かしたり声を出したり、パソコンに向かって考えたりすることで、自分の健康を保ちながら診療やクリニック運営にも役立てています。
それでは最後に、今後の展望をお願いします。

ゆくゆくは、現在勤務医として働いている息子にクリニックを継承しつつ、私は自身の探究活動を続けていきたいと考えています。リタイアの立場ではありますが、まだまだ現役として学びと研究を重ねるつもりです。特に、東洋医学と西洋医学の知見を生かし、新しい診療・治療の可能性を追求していきたいと思っています。そして、私にとって第二の故郷のこの天理の地で、ファミリークリニックの名のとおりに地域のご家族の健康を守る「かかりつけ医」としての役割を果たすべく、これからも努めてまいります。