渡邉 巌 院長の独自取材記事
渡邉内科外科クリニック
(生駒市/学研北生駒駅)
最終更新日:2024/09/24

近鉄けいはんな線北生駒駅から東へすぐ、ならやま大通り沿いの住宅街にある「渡邉内科外科クリニック」。開業から22年になる同院で診療を続けてきたのは、渡邉巌院長と妻の渡邉愛子副院長だ。渡邉院長は専門の大腸肛門疾患を中心に消化器領域を担当し、上部・下部内視鏡検査に注力。長年の経験や日々の研鑽から見逃しのない検査に努め、疾患が見つかれば適切な治療ができる県内外の病院へスピーディーに紹介する。また循環器が専門だという愛子副院長とともに、日常疾患や生活習慣病の診療、各種健診などにも対応。近隣の診療所との連携や医師会活動にも力を入れ、幅広く地域の健康を支える。「手術を終えた患者さんからお礼を言われ、明るい笑顔を見るのが大きな喜びです」と笑う巌院長に、診療のポリシーや地域医療に対する今の思いを聞いた。
(取材日2024年8月22日)
地域の中で早期発見・早期治療を担う
最初に、クリニックの歩みをご紹介いただけますか。

私は奈良県立医科大学を卒業した後、関連病院や大学の付属病院で臨床や研究に携わりました。その後は臨床に本腰を入れ、高の原中央病院で9年ほど、大腸や肛門の診療を行っていました。開業を考えるようになった頃には、北生駒駅はまだありませんでしたね。でもこの辺りはすでに住宅街でしたし、近鉄けいはんな線が登美ヶ丘まで延伸することも決まっていて。また、今まで診てきた患者さんも車で通える立地でしたので、こちらで2002年6月に開業したんです。近隣の商業施設は入れ替わりもありますが、住宅街は当時も今も落ち着いた街並みで、当院も地域とともに歩んできました。
診療内容を教えてください。
私は主に、自分の専門である消化器や肛門の診療を担当していて、特に胃や大腸の内視鏡検査や日帰り手術には力を入れています。院内の内視鏡室では、がんなどの異常が見つかれば手術のできる病院へ紹介します。また小さなポリープなどは、日帰り手術で治療することもできます。大学の後輩でもある妻は循環器内科が専門で、心房細動などの循環器疾患の早期発見や管理、またカテーテルアブレーションなどが必要であれば適切な病院への紹介も積極的に行います。もちろん地域のクリニックですので、風邪など日常疾患の診療や、生活習慣病の管理、各種健診やワクチン接種などには2人で対応しています。
ご専門の内視鏡検査では、どのような点を重視していますか。

現在、内視鏡検査は主に地域のクリニックで実施して、大きな病院では手術や化学療法などを行うという流れになってきています。私自身は22年前に開業した当初から「内視鏡検査で胃がんや大腸がんを早期に見つけて、病院での早期治療につなげる」ことをビジョンにしてきました。だから「極力見落としのない検査をする」ことと、「すぐに適切な医療機関へ紹介する」ことにはこだわっています。人が行う検査ですから見落としは完全には防げませんが、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医の資格を維持・更新し、新たな知見を学び続けています。また勤務医の時代から約40年にわたって膨大な数の検査を行い、トラブルが起きやすいタイミングはよくわかっていますから、そこに注意を払いながら見落としや合併症のない検査に努めています。
迅速かつ適切な紹介で、不安な時間を最小限に
紹介に関しては、どのように進むのでしょうか。

がんが懸念される異常が見つかれば、患者さんの症状や居住地、ご希望などを加味しながら、想定の治療内容を得意とする病院を必ず3つ挙げて、紹介先を選んでもらっています。多いのは奈良県総合医療センター、大阪国際がんセンター、近畿大学奈良病院などですが、京都寄りにお住まいであれば京都市内の病院を紹介することも。逆に、虫垂炎や胆嚢炎など軽症の病気であれば、これらの手術経験が豊富な近隣の病院を3つ選びます。やっぱり私が病気を見つけて紹介する以上は、自信を持って紹介できる医療機関をお伝えすることが、責任だと思っているんです。また、異常が見つかれば、なるべく検査した当日に3つの病院をお伝えして、ご家族などと考えてもらえるようにしています。
紹介が必要な患者さんとお話しする際に、心がけていることは?
特にがんの可能性については、気を遣いますね。ひどく落ち込ませてしまいかねませんので、初診の方や患者さんの性格によっては、「悪いと思っていたほうがいいですよ」などワンクッションを置いた表現でお伝えします。ただ、医師としては一刻も早く手術などの治療に進んでほしいのです。また、検査結果の確定や病院の初診まで時間がかかると、患者さんの不安な時間も増えてしまう。そこはぱぱっと進めてあげたいというのが私の正直な気持ちです。ですから、今の病状はきちんと説明して、進行がんが想定されれば検査結果が出る前に紹介先を受診していただき、結果は後から送ることもあります。早期診断・早期治療を実現して助けられる人を増やすのは、自分に与えられた使命だと思っています。
ご夫婦で診療をされている点も、こちらの特徴ですね。

開業当時はまだ子どもが小さく、妻には迷いもあったようです。でも「午前診だけでも一緒にやらないか」と話して、そこから今日まで一緒に診療を行ってきました。ご高齢の患者さんが増えていますので循環器疾患も多く、妻も早期発見や早期治療に努めてくれています。また、女性に診てほしいと希望する患者さんは結構いますので、妻が対応してくれることは心強いですね。何よりも、診察や検査が立て込んでいる時にも、妻は長くなりがちな患者さんの話に耳を傾け、穏やかに接してくれています。それは看護師たちも同じで、私の診療や検査を上手にサポートしてくれていますね。彼女たちの優しく丁寧な対応は、当院の良さの一つだと感謝しています。
医療で社会貢献を続けていくことが使命
地域のかかりつけ医として、変化を感じていることがあればお聞かせください。

この近辺は成熟した住宅街ですので、ご高齢の元気な患者さんも増えています。ただ90歳を過ぎると認知症が見られたりして介護が必要になる場合も多く、ご家庭で見るのか、施設などに入ってもらうのか、ご本人もご家族も悩みが深まります。家族や親に対する深い愛情があっても、家庭内で介護をするのは非常に大変なこと。介護者ととも倒れになる可能性さえあります。私自身は家族内の経験も踏まえて、ある程度の年齢になれば施設などで介護を受けていただいたほうが良いと考えています。高齢者を地域全体で支えるのが地域包括ケアの方針でもありますので、私も介護の相談を受けたり、悩んだりするご家族に「施設に入ってもらうのは見放すのではないから、皆が行き詰まるよりは施設のほうがいいですよ」などとアドバイスすることもありますね。ただ費用面の問題もあり、医療介護は地域医療での大きな課題だと実感しています。
では先生ご自身が、健康のために取り組んでいることはありますか?
週末はゴルフなどへ出かけて、体を動かすようにはしています。また、「疲れているから」と家でじっとするのではなく、日頃からこまめに動くように心がけていますね。休診日でも、クリニックへ出てきます。医師会の仕事をしたり、クリニックの事務的な業務も私の担当ですので、銀行に行くといった用事もこなしていますよ。どんな仕事でも、自分でやってみないとわからないことがあります。人に任せるのではなく、自分もある程度動いておくことが大事ですし、それが私の心身の健康維持にもつながると思っています。
最後に、これからの展望をお聞かせください。

医師は、対価をいただいて業務を行い、「ありがとうございました」と喜んでいただける数少ない仕事です。だからこそ、これまで磨いてきた技術を用いて社会に貢献することが、私の使命だと考えているんです。お話ししたように、医療介護の課題もあり、地域医療は大きく変貌しています。その中で私にできるのは、やはり消化器疾患の早期発見・早期治療のスタートをしっかりと担うこと。またかかりつけ医としては、各地の病院に加え近隣の開業医の先生方とも顔の見える関係を大事にしています。お互いの専門性に基づいて紹介ができれば、患者さんが地域内でより適切な治療にたどり着けるわけですから。年齢を重ねていけば仕事の量的な変化はあるかもしれませんが、質の面では専門性や経験を生かしながら、これからも長く診療を続けていきたいですね。