山口 和巳 理事長の独自取材記事
汐入駅前歯科
(横須賀市/汐入駅)
最終更新日:2025/07/15

汐入駅目の前の商業施設内に入居する「汐入駅前歯科」。電車でのアクセスはもちろん、施設は地下駐車場を要しているため車での通院がしやすく、遠方からも通いやすい好立地だ。1999年開業という長いキャリアで、予防歯科に注力をしてきた。特に出産前からの予防や、小児矯正など小児歯科に力を入れている。多数スタッフが在籍し、歯科医師・歯科衛生士の担当制によるチーム医療で対応するのが特徴。「患者さんが健康寿命を全うできるように伴走することをコアの理念に掲げ、メンテナンス受診率を増やしていきたい」と話すのは、柔和な笑顔と優しい語り口が印象的な山口和巳理事長。同院の診療の特徴や長年携わってきた予防歯科へのこだわりについて話を聞いた。
(取材日2025年6月18日)
治す歯科から守る歯科へ、時代に先駆けた予防の選択
歯科医師を志したきっかけや、開業に至るまでのお話を聞かせてください。

公務員一家で生まれ育ったので、自分も教師になるのかとぼんやり思っていました。ところが、中学3年の時に父が病気で他界して意識が変わり、医療分野に興味が出て、手に職を持ちたいとも思うようになりました。そんな時、母の教え子が営んでいた歯科医院を見学できる機会があって、歯科医師を志すようになりました。新潟大学の歯学部へ入学。歯科について学ぶ中で予防歯科へ進もうと考え、研究や勉強を重ねました。その後、歯科医師として正しい情報を含め予防が大切ということを伝えていこうと考え、1999年に予防専門歯科のクリニックを開業しました。
特に予防歯科に注力してきたのはどんな理由からだったのでしょう。
私が歯学部に在籍していた1985年頃は虫歯になる子だらけで、虫歯治療をしに歯科医院に行くという感じでした。ほかの先進諸国はかなり減っていたのに比べ、日本だけがまだ子どもの虫歯が多い状況で、予防歯科に遅れを取っていることがわかりました。そのため、卒業後は口腔衛生学教室に残り、虫歯予防の研究をしました。その中で、フッ素をどう使うかが鍵とわかりましたが、当時は無根拠のネガティブな情報も出ていたせいで、親御さんの中にはフッ素治療をしたがらない人もいましたし、フッ素配合の歯磨き粉もほとんどありませんでした。少しずつフッ素について周知が進み、今は虫歯はかなり減りましたが、反面、時代や社会の移行とともに歯並びの悪いお子さんが増えました。しかしそれも、小さいうちに矯正することでその後のトラブルを招きにくい、「予防」につながりますので、今は特に小児歯科に注力しています。
クリニックの特徴を教えてください。

大人子ども問わず、予防歯科の要であるメンテナンスを受けやすい環境を整えています。歯科衛生士の人数も多く、メンテナンスの専門ルームがあることも特徴です。治療面では、虫歯治療後は8年くらいで状態が悪くなることが多いため見続けていく必要があります。当院ではマイクロスコープを4台そろえ、精密な検査をして虫歯の再発防止に取り組んでいます。子どもは生後半年から診ていますので、長いお付き合いの方がほとんどです。患者さんが何を望まれているかを大事にしたいので、トリートメントコーディネーターを採用し、初診カウンセリングで歯科医師や歯科衛生士の間に入ってもらいしっかりヒアリングすることもこだわっています。また、その後患者さんに情報を提供し、チームで動くことも当院の特徴だと思います。
子どもの未来のために、正しい発育に貢献したい
チーム医療へのこだわりをお聞かせください。

歯科医師、歯科衛生士、トリートメントコーディネーターによるチーム体制を敷いています。例えば、保険適用内が良いとか、自費治療で良いなど、それを選んでいただくためには内容を正しくご理解いただけるような説明が必要です。正しい情報を提供することは、患者さんがご自身にとってベストマッチな治療をご選択いただくための大事なポイントです。また、患者さんには治療後もしっかりメンテナンスを受けていただくことが大事だと考えているので、患者さんとの信頼関係を築くことも大切にしています。技術だけでなくコミュニケーションにも重きに置いた、寄り添った医療を提供するため、チーム医療にこだわっています。
小児歯科へ注力している理由は?
文部科学省の調査結果で、ここ10年ほどで児童の数は10%ほど減少しているのに特別支援学級に入学する児童数はおよそ2倍に増えているというデータがあります。発達障害児が増えている一番の要因は、前頭葉が育たない子が増えたことだといわれています。口呼吸は脳への酸素供給量が10~40%減少します。脳も育っている成長期に酸素供給量が減ってしまうことが影響しているといわれています。脳の成長と上顎骨の発育は密接に関連しています。当院では、どんな食生活をしているか、口呼吸になっていないかといった生活環境をまず見直し、口腔筋を鍛えるためのトレーニングも行っています。虫歯予防も大切ですが、近年は口腔筋機能の発達を支援したいと思い注力しています。
正しい成長への導きのためにどのようなことをしていますか?

矯正は12歳以降というのが一般的ですが、顎の成長は12歳頃で完了するため、特に上顎骨の成長が悪い子ほど歯並びが悪くなります。顎が正しく成長しないとその後の歯並びに影響するため、当院では開業時から床矯正を行ってきましたが、今は歯並びの悪さが深刻で、床矯正では追いつかない子がほとんどです。そんな中、マウスピース型の器具を用いた小児の咬合育成にたどり着き、2017年からは完全にそちらに移行しました。小児の咬合育成はかなり前から不正咬合に対する根本的なアプローチといわれていたものの、臨床では行うことができなかったため、顎の成長が完了した12歳以降に歯を抜いてワイヤー矯正を行うという手法が主流だったんです。しかし今は「極力抜かずに自分の歯を生かして矯正していく」という考え方にシフトしてきています。当院では口腔筋機能療法にも取り組み、トレーナーと一緒に鏡を見ながら行うトレーニングも提供しています。
知られにくい正しい情報を提供し続けるために
親御さんがお子さんの歯並びのためにできることは?

顎の骨が成長しない根本的理由は口呼吸で、口呼吸だと脳への酸素供給量が少ないんです。小麦粉に含まれるグルテンは呼吸中枢を刺激し、呼吸数が増えますが、呼吸数が増えると鼻呼吸では追いつかず、浅くて早い口呼吸が増えているといわれています。食生活の変化でやわらかいものばかりを食べて噛む力が弱まっていることや母乳哺育の減少も、鼻呼吸ができない子が急増している問題だと考えます。咬筋や唇を閉じる筋力など口周りの筋肉が育たず、高齢者並みに筋肉が衰えてしまう小児の口腔機能発達不全症は、国も問題と捉え、対策が急務とされています。子どもは成長とともに筋力も発達するため、小児のうちから対策しておくことが大切です。口呼吸が増えているかを確認するには、就寝中のいびきや歯ぎしり、寝起きの悪さなどを観察してみてください。お子さんが睡眠時に以前と変わったことがあれば、口腔機能発達不全症の予兆かもしれません。
今後の展望についてお聞かせください。
歯科に関する正しい情報をもっと多くの人に届けていきたいですね。例えば、矯正のタイミングや方法などもそうですし、脳の発達が口腔内の状態に大きく関わっていることもそうです。そして、口腔内のトラブルは生活環境や生活習慣が大きな要因となっていますから、トラブルを予防するには日常でできる方法があることをもっとお伝えしていかなくてはなりません。そのために勉強を続けて患者さんに還元し、有益な情報を発信し続けていきたいです。お子さんも成人の患者さんもできるだけ自分の歯を残せるようにサポートし、長いお付き合いのできるクリニックでありたいです。
読者へのメッセージをお願いします。

当院では、予防歯科をメインに老若男女すべての患者さんに寄り添って対応することを心がけています。また週に3日、ご高齢や障害のある方で来院が難しい方を対象に、訪問診療での口腔ケアも実施しています。歯を失えば健康寿命に関わりますし、ご高齢の方に多く年間4万人も亡くなっている誤嚥性肺炎を予防するには、お口の中を清潔にし歯周病を防ぐ口腔ケアを行うことが重要ですので、ぜひご相談ください。子どもの矯正の目的は、歯並びを整えることだけでなく、脳の成長支援にもなります。12歳までの成長段階で矯正を行うことで、その後に歯列にも良い影響が期待できますので、ぜひ早めにご相談いただきたいです。
自由診療費用の目安
自由診療とは成人矯正/ワイヤー71万5000円(検査・診断料4万4000円)、マウスピース型装置を用いた矯正66万円(検査・診断料2万2000円)、小児矯正/マウスピース型装置を用いた矯正46万2000円(検査診断料含む)、オフィスホワイトニング/9900円~、インプラント治療/49万9400円
※歯科分野の記事に関しては、歯科技工士法に基づき記事の作成・情報提供をしております。
マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。