尾畑 俊和 院長の独自取材記事
おばたデンタルクリニック
(姶良市/重富駅)
最終更新日:2024/11/15

JR日豊本線・重富駅から徒歩5分、釣り人や海水浴客でにぎわう姶良市脇元にある「おばたデンタルクリニック」。「生まれ育ったこの地に貢献したい」との思いで、院長の尾畑俊和先生が2003年に開業した。以来、地域に根づいた歯科医院として、この地に住む人々が年を重ねても食事を楽しめるよう、20年間尽力し続けている。主に予防歯科やメンテナンスに力を入れるほか、訪問歯科診療にも対応。診療では患者に治療方法を提示して選択を促し、患者が納得して治療に向き合える体制を心がけている。地域への愛情が深く、患者一人ひとりのニーズに応える柔軟性を大切にしている尾畑院長に、診療コンセプトや今後の展望について話を聞いた。
(取材日2024年10月18日)
生まれ育った地元に恩返しするために歯科医師へ
明るくナチュラルな雰囲気の院内ですが、内装や設備にこだわりはありますか?

患者さんが穏やかな気持ちで診療を受けられるよう、床や壁に無垢材をふんだんに使っています。3ヵ月に1回メンテナンスが必要だったり、患者さんにも靴を脱いでスリッパに履き替えていただく手間をかけてしまったりしていますが、無垢材ならではの木の香りとぬくもりに癒やされてもらえたらうれしいです。また、クリニックにありがちな閉鎖的で息苦しい雰囲気を少しでも軽減したいと思い、待合室の天井に吹き抜けを採用し、明るく開放的な空間になるよう意識しています。
この地域で開業した理由を教えてください。
クリニックがある姶良市脇元は、私が生まれ育った地域です。ずっとお世話になったこの地域に貢献したいと思い、何か事業を起こそうと考えた際にひらめいたのが歯科医院の開業でした。実は私が開業するまで、この辺りは歯科医院が少なかったんです。その実情に気づき、お世話になった方々に恩返しするなら歯科医師になるのが良いだろうと考え、今に至ります。歯科医師になって開業先を検討した際に地元を選んだのではなく、地元に貢献するために歯科医師になったというのが正解ですね。もちろん、ほかの地域での開業を検討したことはありません。そのため、顔見知りや私の家族とつながりがある患者さんが多く、私を幼い頃から見守ってくださっている方やそのご家族の方も来院されています。
地域の口腔の健康を高めるために歯科保存学を学ばれたとか。

歯科医師をめざした当初から、地域の入れ歯の患者さんをゼロにしたいという目標があり、大学で歯科保存学を専攻しました。今でも、むし歯があるからといって安易に削ったり抜歯をしたりせず、歯の寿命を延ばすという治療方針を掲げています。むし歯ができれば削るなどの処置を行い症状の改善を図りますが、どのような修復を施した歯でも、咀嚼を重ねればかぶせ物が剥がれて隙間ができてしまいます。隙間はむし歯をできやすくし、再び削ったり抜歯したりする治療が必要になる悪循環になりやすいです。そのため不必要に歯を傷つけないで済む技術を習得するべく、歯科保存学を選びました。もちろん、すでに歯を失って困っている方もいるので、「入れ歯ゼロ」にこだわっているわけではありません。入れ歯を使わないほうがいいのか、入れ歯を上手に使っていただきケアをしていくほうが適しているのか、患者さんの悩みや困り事をヒアリングしながら決定しています。
治療方法は選択肢を用意し、患者のニーズに柔軟に対応
診療方針やコンセプトを教えてください。

私は、治療をしないで済むならそれが最良だと考えています。例えばむし歯があった場合、そのむし歯は削らないと悪化するのか、それとも削らないで様子見ができるのか診療します。削らなくて済むなら、むし歯が悪化しないようにするためにどのようにケアをしていくべきか、その方法を患者さんと話し合いながら、治療の方向性を決定します。当然患者さんの中には、時間がないので早く削ってほしいという方もいらっしゃいますし、反対に時間をかけてもいいからできるだけ削らないでほしいという方もいらっしゃいます。そのため患者さんとのコミュニケーションを大切にし、患者さんが本当に求めるゴールをめざした治療を心がけています。
特に力を入れている診療についてはありますか?
歯科医療は治療よりも予防の時代だと考えているので、開業当初から予防歯科に重点を置いています。年を重ねてもずっと食事を楽しみたいという方がほとんどだと思いますし、そのためには健康な歯を維持していくことが大切です。予防の内容は、ほかの歯科医院と大きな違いはありません。ただ、当院のスタッフには、クリーニングなどをする前に必ず患者さんの口腔内を全部見渡すよう伝えています。汚れが目立つ箇所によって、歯磨きなど日常のケアが行き届いていない部分がわかるので、どのような状態でどのような問題があるのか患者さんに指導しています。また全体を見渡すことは、患者さんが気づいていない問題を早期発見できるという利点もあります。まれにがんなどの重大な病気を見逃してしまうケースもあるので、患者さんが問題を訴えている場所はもちろん、全体を見て取りこぼしがないようケアしていくべきだと、スタッフ間で共通認識を持たせています。
メンテナンス内容にもこだわりがあるとお聞きしました。

メンテナンスはあくまでメンテナンスという概念で、口腔の健康状態に問題がないかを確認することのみに注力しています。基本的にメンテナンスは数ヵ月に1回程度通っていただき、問題が見つかった場合はできるだけ早い段階で処置をします。ただし先ほどお話ししたとおり、当院は治療をしないで済むならそれがベストという方針なので、患者さんが必要性を感じない治療は行いません。メンテナンスで見つかった問題は必ず患者さんに報告し、治療方法についてご提案しますが、治療を受けるかどうかは患者さんの判断にお任せしています。治療が必要だと決意された場合のみ、次回から治療を進めていきます。患者さんが診断内容をいったん持ち帰り、自宅でゆっくり考えていただくことも可能です。
年齢を重ねても食事を楽しめる口腔をめざす
この20年間で印象深い出来事があったら教えてください。

幼い頃から通っていた患者さんが、お子さんを連れてクリニックに来院してくださった時はとても感動しましたね。私は患者さんのお顔を覚えるのが得意なほうなので、昔からこの地に住まわれている方だけでなく、外の地域から転入されてきた患者さんもだいたい記憶しています。この地で生まれ育った私自身も、ご高齢の患者さんから私の幼い頃の思い出話をされることが多いですが、自分も地域の大人として子どもを見守り続けていくことで、このような感動を味わえるのだと感慨深くなりました。
休日に楽しまれている趣味などはありますか?
釣りですね。脇元は海沿いにある地域で、クリニックからもすぐに海岸に向かうことができます。だから釣りや海遊びが日常にあり、私も幼い頃からずっと海釣りを楽しんでいます。どの魚も新鮮でおいしいですが、釣ったばかりのイカは驚くほど甘いんですよ。診療が早く終わった日は海に行ってイカを釣り、自分でさばいて刺身で食べる。それが、至高の瞬間です。この地域は昔から住み続けている方と、新興住宅地に新しく入ってきた方が住み合っているような町ですが、特に最近は、お仕事などを引退された方が余生をのんびり過ごすために移ってこられます。海や山が近くて、趣味や新鮮な食物を味わえるのが魅力のようです。そのような方々にも、この地域自慢のおいしいものを自分の歯で長く楽しみながら毎日を過ごしていただけるよう、歯科医師としてサポートしていきたいと考えています。
読者へのメッセージをお願いします。

高校までは学校で歯科検診があるのでそれなりに口腔の健康状態を意識できますが、仕事や子育てに忙しい30代~50代になると、なかなか能動的に歯科医院へ行けない方が多いと思います。その間にむし歯や歯周病などが進み、お仕事などをリタイアされて、時間に余裕が生まれた頃には非常に悪くなってしまっているケースが少なくありません。そのため、若い頃から意識的に歯科医院に足を運び、自分がどういうかたちでケアやメンテナンスをしていくのがベストなのかを知るのが大切だと思います。近年厚生労働省でも、子どもだけでなく大学生や社会人も歯科検診を推進する「国民皆歯科健診」の導入を検討しているようです。私も子どもから大人まで歯の健康を意識するのが大事だと思いますし、いくつになっても自分の歯で楽しく食事をしてほしいと願っています。