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蔵谷 弘子 院長の独自取材記事

みのりクリニック

(坂出市/坂出駅)

最終更新日:2022/06/30

蔵谷弘子院長 みのりクリニック main

坂出駅から徒歩3分の「医療法人然 みのりクリニック」は、訪問診療を中心とした地域密着型のクリニックだ。蔵谷弘子院長が2003年に開業。生活習慣病や認知症などの診療を手がけており、女性を中心に幅広い患者から厚い信頼を集めている。認知症の高齢者、末期がん患者などの生活支援や看取りに心血を注いできた経験から、「人生の最期を見届けて差し上げるのは、医師の大切な役割の一つ。看取りは悲しいばかりではなく、喜びもあると思います」と話す蔵谷院長。一人ひとりの価値観を尊重しながら、「自分らしい生き方、死に方」をサポートすることに努める。気取らず、自然体だが、診療の話になると熱い思いがあふれ出す。人間味のある人柄も魅力的な蔵谷院長に、じっくりと話を聞いた。

(取材日2022年4月27日)

生活習慣病、認知症の診療を中心に、在宅看取りも

こちらのクリニックは、どのような患者さんが多いですか。

蔵谷弘子院長 みのりクリニック1

開業したときは外来診療だけだったので、夕方などは若い方も多かったですが、昨年から水曜、木曜・金曜日を訪問診療日としたため、今はご高齢の方が中心ですね。男女では圧倒的に女性が多いです。同性だからということが大きいでしょうね。主訴としては、高血圧や糖尿病などの生活習慣病、それから生活習慣病に加えて認知症を患っていたり精神的な不安を抱えていたりというケースが多いです。私は琴平町出身で坂出市にはなじみがなく、初めは知らない人ばかりでしたが、開業して16年、おかげさまでたくさんの患者さんに来ていただき、知り合いや仲間も増えて、今ではよく見知った土地になりました。

訪問診療をメインにされているのですね。

訪問診療は、開業当初、時間に余裕があったので始めたんです。そのうちケアマネジャーさんから「動けなくて病院に行けない方や病院に行きたがらない方を診に来てもらえませんか」と依頼を頂くようになり、今では訪問診療のほうが多くなりました。困っている方がいてニーズがあるのに提供する人がいないなら、自分でやろう。私ってそういう性格なんです(笑)。訪問診療の中でも特に力を入れているのは、在宅看取りです。高齢の方には住み慣れた所で最期まで暮らしていただきたいですし、若くしてがんを患ったとしてもできる限り良い時間をご自宅で過ごしてもらいたい、そんなふうに思ってサポートしています。

医療的ケア児の支援にも力を入れているそうですね。

蔵谷弘子院長 みのりクリニック2

医療的ケア児は、生まれつき心身の機能に障害があり、人工呼吸器や胃ろうなど医療的な処置が必要なお子さんのことで、医療技術の進歩を背景に増えています。多くの場合、在宅でケアしますが、そうすると、ご両親、特にお母さんの社会的な役割が奪われてしまいがちです。じゃあ、その二人の幸せって何? 二人だけで完結していいものなの?と考えると、彼らを受け入れる社会も必要なはずですよね。老いていくときも同じで、お年寄りが病気になって治療を受けたけど寝たきりになってしまった。じゃあ、残りの人生の幸せって何? 私たちの法人名の「然」には「然るべき人生」という意味を込めていますが、然るべき人生はご本人だけがつくるのではなく、一人ひとりの価値観を尊重しながら、自分らしく生きていける社会をどうつくっていくかだと思うんです。なので、今の私のモットーは「病を診る、人を診る、地域を見る」です。

最期も人それぞれ。死に対する考え方を変えていきたい

そのモットーに対する思いを聞かせていただけますか。

蔵谷弘子院長 みのりクリニック3

「病を診る、人を診る、地域を見る」というのは、病気を診るだけでなく、人も診て、さらにその人が住んでいる地域も見るという意味です。中国の格言「上医は国を治し、中医は人を治し、下医は病を治す」に由来しているようですけれども、日本の医学界でも同じようなことを教わるんですよ。住み慣れた地域で暮らし続けたいという方が多いと思いますが、それは医療体制が整っている住みやすい地域があって初めて実現するもの。ですから、私はこの地域の中で医師としてできることはなるべくやっていきたいと考えています。

今やりたいことがおありだとお聞きしました。

地域の皆さんの死に対する考え方をもっと柔軟にしていきたいんです。「孤独死」という言葉がありますが、私はこの表現はなくなったらいいなと思っているんですよ。一人で亡くなっていくのは「かわいそうだ」「寂しかっただろう」などと考えられがちですが、孤独が良いか悪いかなんて、その人にしかわからないですよね。例えば、高齢の方が誰の手を煩わせることもなく自分で納得して生活していて、ある日、倒れて亡くなったとしても、それは「ピンピンコロリで良かったんじゃない?」という見方もできます。生き方にそれぞれ価値観があるように、亡くなり方にもそれぞれ価値観があって当然のはず。これは認知症でも似たようなことが言えます。

「認知症でも似たようなことが言える」とは、どういうことでしょうか。

蔵谷弘子院長 みのりクリニック4

認知症になると、困ることがたくさん出てきます。でも、誰にも何も言われなかったら、ご本人はハッピーだと思うんですよ。きっと「これ忘れてる」「おしっこ失敗してるよ」などと周りから指摘されるから、「そうなんだ。私、できてないんだ」と悲しくなってくるんです。過剰な心配が不適切な行動を引き起こしてしまうこともありますので、ご家族など周りの方はぜひ温かく見守ってあげてください。それは社会でも同じで、例えば、認知症の方が町を歩いていて困っていたら、「おばあちゃん、おうちに帰ろうか」と優しく声をかける、そんな社会になっていったらいいなと思っています。

患者本人の話に耳を傾け、隠れた不安にも寄り添う

診療時に大切にされていることを教えてください。

蔵谷弘子院長 みのりクリニック5

患者さんが主体ですから、ご本人の訴えをしっかり聞くということですね。高齢の方や認知症の方の場合、診察にご家族が同席されることが多いのですが、ご家族はあくまでも家族から見た状態をお話しになられます。でも、患者さんはご本人ですから、できるだけご本人のお話を聞くようにしています。とりとめのない内容であっても、そこに不安や悩み、想いが隠れていることがあるからです。このように心がけるようになったのは、介護保険の主治医意見書を書くようになってからですね。ご本人の困り事などをよく聞いて、例えば「軽度だけれど、日常生活に支障を来している」と書くと、介護度が上がって、より適切な支援や介護を受けられることがあるんですよ。だからこそ、患者さんご本人の意見をきちんと聞きたいと思っています。

ところで、ご自身の健康管理はどうなさっていますか。

実は7年前に乳がんの手術を受けたんですよ。そのときから健康についてはさらに気をつけ、考えるようになりましたね。同時に、仕事面では人生や死に関わることをもっとやらなければと気持ちを新たにしました。医師であっても病名を告知された時は戸惑いましたし、寛解したものの今も再発の不安を抱えています。そういった気持ちを受け止めて寄り添うことができる医療者になることが、今の目標の一つです。また、再発して抗がん剤治療を始めるとエンドレスに続けなければならないことがほとんど。ただ、それがわかっている患者さんは少ない。末期で抗がん剤治療ができなくなったから在宅で、という意味をわかっている方も少ない。こういった認識のずれは、医療者側がきちんと説明できていないからだと思います。患者の立場を経験したからこそ感じることを、日々の診療に生かしていきたいですね。

最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

蔵谷弘子院長 みのりクリニック6

当院は、患者さんを見放すようなことはしません。その方が必要とされる医療ならば、私に今まで経験がなかったとしても、勉強したり他の先生に相談したりしながら提供できるようにして、最期まで希望を持って生きていただけるようサポートします。ご高齢の方だけでなく、お子さんもできるだけご自宅で暮らしていけるよう支えていきます。0歳から100歳まで、いつでもおうちに帰ってきてください。私たちがしっかりと見守ります。

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