井上 普文 院長の独自取材記事
ピュア形成外科医院
(高松市/瓦町駅)
最終更新日:2021/10/12

高松市の中心部で2003年から診療を続ける「ピュア形成外科医院」。院長の井上普文先生はレーザー治療のエキスパート。手術の質にこだわる形成外科の医師だからこそ、手技ではなし得ない治療に役立つと判断し、先進のレーザー治療機導入に向けて奔走。県立中央病院の勤務医時代では為し得なかったものの、その後に三宅病院において実現。レーザー治療を開始するきっかけをつくった立役者でもある。以来、自身のクリニックを開業してからも、ケロイドなどの傷痕に悩む多くの患者の治療にあたってきた。美容分野でも多くのレーザーを駆使する現在も、形成外科医師として矜持を保ち、手術の押し売りはしない。繊細な技術とおおらかな人柄のギャップも印象的な、ベテランドクターにたっぷりと話を聞いた。
(取材日2021年6月16日)
手技とは異なる、レーザーのメリットに着目
明るい雰囲気の院内ですね。

当院の入るこの建物は、僕の前勤務先が経営母体のメディカルビルで、建築企画の段階でお話をもらったので、最上階の1フロアを使わせてほしいとお願いし自分でデザインしました。入居は18年前で、当時の流行を取り入れつつ、白を基調としてカラフルに差し色を施しました。患者に受けるかどうかよりも自分の趣味を反映させ、熱帯魚の水槽を置いたりゴルフ場のイメージを取り入れました。長年勤務医でしたので、当時の僕にとってここは初めての「自分の城」です。部屋を細かく分けすぎないようレイアウトして、開放感が出るような設計にしました。
患者さんの傾向や多い主訴があれば教えてください。
最近はホームページを見て来られる方が増えてきましたが、開業当時からクチコミで来院される方が圧倒的に多いです。来院する目的はレーザーを使った美容ケアと形成外科に分かれます。オフィス街が近いので、17時を過ぎると仕事帰りの患者さんもたいへん多く、予約が難しいほどです。ニーズとして一番多いのがレーザーによるしみのケアで、手術のほうは皮膚の良性腫瘍やアテローマ、ほくろなどの切除術です。年齢層としては30代、40代を中心に上は90代まで、形成外科では赤ちゃんも受診されます。性別は女性が8割と圧倒的ですね。18年前の開業当初は「きれいになりたい」という受診動機が多かったのですが、最近はエイジングを気にされて来院される方が多くなりました。
レーザーは何種類もあるそうですね。

現在当院では、複数種類のレーザーを使っています。しみのケアのほか、赤あざ、赤ら顔、傷痕の治療、ほくろや入れ墨の除去、脱毛など、目的に応じて使い分けています。今でこそ多くのクリニックでレーザーが導入されるようになりましたが、日本にレーザー治療器が入ってきたのは、1990年代の中頃と記憶しています。当時僕は香川県立中央病院の形成外科に勤務していたのですが、公立の医療機関ですから予算も限られていて、高額なレーザーを購入するのは厳しかったんですね。そこで三宅医学研究所の理事長にレーザー治療の魅力を語ったところ、快く協力を買って出ていただき、香川県内でも先進のレーザー機器が三宅病院に導入されることになったのです。そのことが地域で知られるに至り、朝から新患が多数、受付に並ぶようなうれしい状況になりました。その縁があって三宅医学研究所に誘われ、形成外科部長として入職することになりました。
診療方針は「ネガティブから、ポジティブに」
形成外科ではどんな治療をするか、知らない人も多いのではないかと思います。

形成外科と比べると美容外科のほうが世間的にも知られていますが、もとは形成外科の一分野なんです。形成外科は、例えば事故などの外傷や先天的な奇形に対して手術で改善を図ったり、やけどや皮膚のひきつれを治療したり、腫瘍の切除やがんの治療で失われた組織の再建を図るという治療をします。形成外科は「元に戻すための治療」でマイナスをプラスマイナスゼロにする、美容外科はプラスマイナスゼロをさらにプラスにすると考えていただくとわかりやすいかもしれません。ですから、形成外科の医師にとって手術を成功させるのは当たり前のことで、それだけの技術が求められる分野でもあります。「ネガティブからポジティブに」という当院の診療方針は、患者さんのコンプレックスを少しでも改善できるようにという願いを込めたものです。
診療の際に心がけているのはどんなことですか?
右から左に処置をするのではなく、患者さんの悩みに向き合い、少しでも助けになるようにという姿勢で仕事をしています。美容系の広告には良いことしか書いてないようなものを時折見かけますが、医師であるならばメリット・デメリットをきちんと患者さんに伝えるべきと僕は思っています。ですので、内容によっては「うまくいかない可能性もありますよ」とはっきり言うようにしています。それと美容は一度のめり込むとスパイラルになる方もいますが、それは止めるほうですね。どう見てもきれいな方がご自分の見た目が気に入らなくて細かくご希望を言われた場合などは、それはやらないでおきましょうと伝えます。精神的にご自分を追い詰めてしまう可能性があることもしっかりお話しします。美容外科については、僕はリスクをしっかり説明した上で、リスクを減らしつつ期待される効果とのバランスを図りながらお勧めの方法をご提案しております。
印象深い経験などありますか?

形成外科にしても美容外科にしても、患者さんの気持ちを優先するのは当然ですが、中には「どうしたらきれいに見えるのかわからないので、先生にお任せします」と言われることがあります。でも、それは患者さんご自身が決めることであって、医師が決めることではないんです。三宅医学研究所で働いていた頃のことなのですが、交通事故の外傷で顔面を激しく損傷した女の子が運ばれてきたことがありました。1度の手術では治りませんので何回も手術を受けていただくのですが、4回目くらいの時に「先生、もしかしたら私の顔、先生好みに変えてません?」と言われたことがありました。長い治療で信頼関係ができていたので冗談交じりでしたが、もしかしたら自分の気持ちを置き去りにされていると感じていたのかもしれません。そう思った時「これではいけない」とあらためて肝に銘じました。当時18歳くらいの患者でしたが今でも印象に残っていますね。
得意なことを続け、形成外科医師として生涯現役を貫く
医師の仕事を志したきっかけや、開業までのご経験を教えてください。

実家が薬問屋なんです。父は子どもたちに医師になってほしかったようですが、医師に対して親が頭を下げる姿を何度も見ていたこともあって、僕は医師にはなりたくなかった。建築家の叔父に影響を受けていたので建築学科に進みたかったのですが、物理が苦手で難しかったのです。それで、国公立は無理だけど私立大学の医学部なら受かりそうだと親に話すと、それなら費用はなんとかするということで医学部に進むことになりました。手先を使う仕事が好きなので、建築家でも医師でもなかったら調理師になっていたでしょうね。形成外科を専門に選んだのは、亡くなる方が少ないことや、悪くなって終わる人はほとんどいないからという理由です。医学生時代は切断された指をつなぐ手術ができるようになりたいと思っていました。
ところで、お肌が日焼けしていますが何かスポーツをされているんですか?
ゴルフが好きなので年中、真っ黒なんですよ。患者さんには必ず日焼け止めを使うように話しますが、僕自身はまったく使わないんです。最初に肌につけたときの感触が嫌だったので「しみができたらレーザーを使えばいい」くらいの軽い気持ちでいましたが、うちのスタッフは「先生に使うのはもったいない」と言って、僕にはレーザーも何もしてくれません(笑)。スタッフは看護師が5人、エステティシャンが4人と僕、それに受付等の事務担当に4人おります。誕生日とかイベントが好きなスタッフもいて職場の雰囲気は良いですよ。
今後の展望をお聞かせください。

僕も含め外科の医師は年を取れば手術の力は落ちていくものですので、細かな手技が必要とされるような手術だと、時間もかかるし疲れてきちゃうんですね。しかし、レーザーはそこまで細かい処置ではありませんから、これからも続けていければと思っています。生涯現役で働きたいので、引き受けられる患者さんの数はこの先減らさないといけなくなるかもしれませんが、引退したいとは思わないですね。この仕事が好きなのでずっと続けていけたらいいなと思っています。
自由診療費用の目安
自由診療とはしみのケア:1CM3000円、赤ら顔のケア:7000円~、ほくろの除去:1個5000円、入れ墨の除去:1万円~、脱毛:両脇1万円~(部位によって異なる) ※詳細はクリニックのHP、または直接お電話等でお問い合わせください。