中村 正 院長の独自取材記事
なかむら耳鼻咽喉科クリニック
(横須賀市/横須賀中央駅)
最終更新日:2024/08/30
横須賀中央駅から徒歩8分ほどの場所にある「なかむら耳鼻咽喉科クリニック」。待合室にはゆったりと座れるソファーが複数台並び、患者が診療前に感じがちな緊張をほぐしてくれそうな穏やかな空気が流れている。中村正院長は山形大学卒業後、耳鼻咽喉科に入局し、30年近く山形の地域医療に携わってきた。その後、2006年に地元横須賀に戻り、めまい治療に特化した耳鼻咽喉科クリニックを開業。自信を持って、めまいの検査、診断、治療を行うことはもちろんのこと、患者の心理面にも繊細に心を配り、ケアを行うことにこだわるめまいのスペシャリストをめざしている。何でも相談しやすい雰囲気づくりにも努める同院。今回は中村院長にクリニックの特徴や今後の展望について話を聞いた。
(取材日2023年9月28日)
独自のノウハウを活用し治療や検査の精度向上を
クリニックの特徴を教えてください。
地元横須賀で開業するにあたり、私がめざしたのは「めまい専門のクリニック」。ここにこだわった私は、今まで一般診療から手術まで幅広く診療していましたが、相当な覚悟をもって、めまいを専門とした当院を開業しました。大学時代から現在に至るまで、国内外で多くの時間を「めまい研究」に費やし、技術の研鑽を積むのと同時に人脈も構築してきました。おかげで現在は自信を持って「めまい」の検査、診断から治療を行うことはもちろんのこと、患者さんの心理面にも繊細に心を配り、ケアをすることに努めさせていただいています。もちろんクリニック名にもあるように耳鼻咽喉科ですので、一般的な診療も行っていますが、今ではめまいに悩む患者さんは全体の4割を占めています。
めまいに悩む患者さんの傾向と心がけていることを教えてください。
「めまい」に悩む患者さんの中には、内科や耳鼻咽喉科などさまざまなクリニックを受診するうちに症状をこじらせてしまっている患者さんや、原因がわからずいろいろな薬を服用している方、それでも改善の目途が立たず、当院の話を聞いて這うようにして来院される方などもいらっしゃいます。「めまい」の原因の多くは、耳鼻咽喉科疾患ですが、その中には、ストレスによる自律神経の乱れを強く感じている方や、精神的に不安定になっている方も多いので、「めまい」に関する相談者には“心療内科的な接し方”を心がけています。納得してもらうまで丁寧に説明し「そういうことだったんだ」と思っていただいてから、検査・治療計画を進めるよう努めています。
検査について教えてください。
当院で最初に行う「めまい」検査は、目の動きを見る眼振検査です。赤外線CCDカメラを利用した特殊な検査用眼鏡を着けて、目の状態をモニターに映し、眼振の有無を観察します。めまいを起こしている人は眼球がくるくると動いているので、目の動きを診る検査がとても重要なんです。また、難聴があるかどうかを判定するために聴力検査も必ず行います。症状によっては、坐位と立位で血圧を測ったり、体のバランスを判定する重心動揺検査、その他多彩な機器を用いた検査を症状に合わせて組み合わせて、総合的かつ多角的に診断しています。目の動きはビデオで記録しているので患者さん自身も見ることができます。その他の検査所見も画像で記録しているので、これらを患者さんに供覧することで自分の病気を理解することに役立っているかと思います。
めまいが起こった時、どのように対応したほうがよろしいのでしょうか。
「めまい」が“急に”起きた時は、動くと吐き気がひどくなるので、また、転倒する危険性もあるので安静にすることが一番です。もちろん症状が改善しない場合には早い時点で医療機関を受診してください。徐々に症状が改善に向かい1~2日ほど様子を見て落ち着いたら動いたほうが治りは早いので、多少気持ちが悪くなっても、「体操」「歩く」などして体を動かした方がよいです。「めまい」というのは、正しい診断と適切な治療を行うことで治すことがめざせますので、重症化させないためにも、通院できる状態であれば信頼できる専門の医師の診察を受けることを推奨します。
勤務医時代、どんな症状でも来いと言えるよう鍛錬
耳鼻咽喉科の医師になった経緯を教えてください。
父がパイロットだったので、私もパイロットになるのが子どもの頃からの夢でした。そこで、航空大学校を受験したのですが、裸眼視力が基準にわずかに達しないということだけで落ちてしまい、泣く泣く諦めました。その後、友人から山形大学医学部第1期生の募集を聞き、山形に行ったついでに温泉でくつろごうと模擬試験のつもりで受験に臨んだところ、合格し入学することに。予期せぬ進路変更でしたが、入学後は医学の面白さに徐々に引き込まれていきました。大学2年時に2週間の体験研修があり、クジ引きで「耳鼻咽喉科」にあたりました。小さな臓器を扱うため顕微鏡で細かな作業や技術が求められることは手先が器用だった私にとって非常に魅力的でした。しかも航空医学に関わる平衡失調、めまいを研究していたこともあり天職を発見した気分でした。耳鼻咽喉科に入り浸るようになり、卒業後同大学の耳鼻咽喉科に入局し耳鼻咽喉医としての人生が始まったのです。
三十数年の山形での経験は、開業後にどのように生かされていますか。
開業前、20数年間は大学病院、開業前の5年間は山形県立中央病院に勤務しました。そこでは、喉頭がんや舌がんなど頭頸部がんの手術に多く携わり、医療の先端に立って多岐にわたる治療を経験できました。こうした経験をすることで、どんな症状でも来いと言えるほど鍛えられたように思います。
「めまい」は、適切な治療をすることで治すことが望めるのですね。
めまいが耳鼻咽喉科の病気であるという認識は、世の中に浸透しつつあると感じています。そしてめまいは、適切に治療を行うことで改善が望める病気です。ですので私からお勧めしたいのは早めに専門家の門をたたくこと。めまいで悩む患者さんが耳鼻咽喉科外来を訪れても、必ずしもその診療に精通している医師が診察するとは限りません。めまい治療においては、医師の知識と技術だけでなく、患者と医師の相性も大切な要素の一つ。重症化する前に、ご自身が心から信頼できるめまいを専門とする医師を見つけられることを願っています。
めまい専門クリニックとして、より正確な診断をめざす
めまいの研究を始められたのには、何かきっかけがあったのですか?
そもそも医師になるつもりがなかったので、専門にこだわりもなかったのですが、偶然、パイロット志望で飛行機が大好きだった私に「航空医学にまつわる研究をするように」という指示があったのです。勉強する中で、宇宙に関連する研究にも携わることができて非常に面白かったですね。自ら選んだというよりは、巡り合わせによって好きなことに没頭した結果、めまい治療が専門になったという感覚です。
プライベートで長期間にわたり継続していることがあれば教えてください。
学生時代は、航空大学校の入学を断念せざるを得ませんでしたが、今でもパイロットとして空を飛びたいと思っています。実は、6年前にハワイの飛行学校に入学しました。訓練生として操縦技術など学びを深めていたのですが、残念ながらそのハワイの学校は閉校してしまったので、現在はグアムの学校で訓練を継続しています。飛行機の操縦ライセンスを取得するという子どもの頃からの夢を追いかけて、現在も引き続き具体的に活動できる状況をとても喜ばしく思っています。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
現在、先端のめまい検査機器を導入する方向で準備を進めています。この機器で検査を行うことによって、めまいの原因の一つである三半規管の疾患に関して適切に測定できるようになることが望めます。従来の検査では、患者さんに少なからず負担を強いる部分がありましたが、この機器を使用した検査では患者さんの負担が大幅に軽減されることも見込めます。患者さん側のメリットだけではなく、医師にとってもより精緻な検査値を入手することができるので、これまで以上に自信をもって適切な診断を下すことができるようになるのではないかと思っています。めまいで苦しむ患者さんのために、私の経験と知見をフルに発揮し、「ここに来て良かった」という喜びの声をお聞きできたら、私もやりがいにつながりますので、設備の充実も積極的に図っていきたいと思います。