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井上 佳也 院長の独自取材記事

井上こどもクリニック

(深谷市/深谷駅)

最終更新日:2025/12/15

井上佳也院長 井上こどもクリニック main

深谷駅南口から車で6分の場所にある「井上こどもクリニック」。院長の井上佳也先生は、群馬大学医学部附属病院や深谷赤十字病院など大規模病院の小児科で診療をしてきた日本小児科学会小児科専門医で、小児科の少ない深谷市の小児医療を支えるため、2008年に開業。子どもの病気で困った際、頼れる地域のかかりつけ医の役割を果たすべく努めている。深谷赤十字病院と緊密に連携し、病院での治療や検査が必要な症状の見極めも行う。自身のスキルや経験におごらず、常に新しい医療情報を学び、他の医師との意見交換も欠かさない。「時代の変化に対応しながら地域の需要に応えていきたい」と穏やかな口調で語る井上院長に、コロナ禍を踏まえた変化や、小児科医として大切にしている想いについて聞いた。

(取材日2025年11月19日)

スタッフの自主性を尊重したチーム医療で患者を迎える

明るい吹き抜けと手作りの装飾が目を引く、温かい雰囲気の院内ですね。

井上佳也院長 井上こどもクリニック1

小児科として必要な機能を備えた上で、患者さまやそのご家族がリラックスできる空間をめざしました。コロナ禍前から隔離部屋を設けていて、感染症の疑いなどがある患者さまと慢性疾患の患者さまが接触しない動線を心がけています。またこの地域には小児科が少ないので、当院でできる限りの検査ができるよう、エックス線撮影装置やエコーなどの検査設備も導入しています。院内の装飾は、スタッフが自主的に行ってくれています。スタッフが折った折り紙を患者さまにプレゼントすることもありますね。スタッフのこまやかな心遣いを見ると、小児科は医療提供だけでなく、お子さまが喜んで通える環境にするのも大切なんだなと感じます。

チームの仲間としてスタッフを信頼し、自主性を大切にされているんだとか。

開業当初5人だったスタッフも、今は10人に増えました。私が何か教え込むというよりはスタッフの自主性を重視しています。看護師も受付も、それぞれの部門でどうしたら円滑に業務が進むか、自分たちで考えてもらっています。この17年間、その形でスムーズに仕事ができている印象ですね。やはりそのポジションで働いている人たちが一番事情を把握しているので、自分たちにとって働きやすい環境を整えてもらったほうがいいと考え、信頼して任せています。当院のスタッフは部門を超えた連携も円滑で、看護師が足りない時には受付スタッフが手伝い、受付スタッフが足りない時は看護師が入ってくれます。当院が円滑に稼働しているのは、スタッフたちの努力によるたまものだといつも感謝しています。

コロナ禍を踏まえて、新たに導入された設備や取り組みはありますか?

井上佳也院長 井上こどもクリニック2

来院される前にウェブで症状を記入する、ウェブ問診を導入しました。あらかじめ情報をいただけると、それをもとに看護師が詳細な病歴を聞き取ることが可能なため、より詳細でスムーズな問診になります。感染症の疑いがある場合は、家族内に感染者がいるかなどの情報も得られるので、入り口から慢性疾患の患者さまと動線を分けられるという点もメリットです。またコロナ禍に始めたオンライン診療も、継続して行っています。基本的には慢性疾患や舌下免疫治療など、定期的に同じ処方を受けている方が対象です。発熱などの急性疾患の方は、直接診て判断したいので来院していただきます。オンライン診療はコロナ禍と比べると利用者が減少していますが、今後の医療に重要な存在になっていくと考え、継続していくつもりです。

ドアノブコメントを重視し、患者の心配事を逃さない

深谷地域で開業された経緯や、来院する患者の主訴を教えてください。

井上佳也院長 井上こどもクリニック3

開業前に勤めていた群馬大学のある地域は、全国的に見ても小児科クリニックが多い地域なんです。だから大学近くよりも、小児医療が少ない地域で開業したほうがお役に立てると思いまして。もともと大学にいる頃から深谷赤十字病院で診療していたこともあり、なじみのある土地だったというのも一つの理由です。当時は小児科を標榜するクリニックが1件しかなく、現在も人口あたりの小児科の数がかなり少ない地域として問題になっています。それでも少子化の影響もあり、乳児健診や予防接種の数は減っています。その一方コロナ禍が影響し、さまざまな検査をするために小児科を必要とする場面は増えているように感じています。来院される患者さまも以前は0~5歳の乳幼児がメインでしたが、近年は喘息やアレルギー性鼻炎、夜尿や便秘など慢性疾患で受診する学齢期のお子さまが増えています。

患者やその家族と信頼関係を築くために、大切にされていることをお聞かせください。

患者さまやそのご家族が、何を一番心配しているのかは逃さないようにしたいと思っています。例えば、診療が終わって立ち上がった時に質問してくる保護者の方って結構多いんです。「ドアノブコメント」というんですけど、きっと保護者の方が本当に聞きたかったことはその質問なんですよね。だから、診療が終わった後の質問を蔑ろにせず、丁寧に応えるように心がけています。そのため、疑問に思ったことは何でも聞いてください。他にも、私自身の経験とスキルに頼りすぎて、独りよがりな診療にならないよう注意しています。

現状に満足せず、常に先進の小児医療を学ばれているとか。

井上佳也院長 井上こどもクリニック4

クリニックで医師一人で診療していると、私を指摘できる医師がいないのが難点です。その環境は非常に危険だと思っているので、他の小児科の医療現場はどうなっているのか、最近の研究はどう進んでいるのか常にアンテナを張り、正しい情報で患者さまの診療にあたるよう心がけています。現在は研究会などへ積極的に参加し、いろいろな活動に携わっています。北から南の端っこまで、全国の小児科医の先生方と仲良くさせてもらい、クリニック内だけでは知ることのできない症例などの意見交換ができるので、非常に有意義です。

子どもたちの健やかな成長を地域全体で守っていきたい

近年は突発性発疹の研究に力を入れていたそうですね。

井上佳也院長 井上こどもクリニック5

突発性発疹は3日間前後の発熱の後、全身に発疹が出現する感染症で、生後4ヵ月から2歳頃までに多くの方が感染します。突発性発疹の主な感染経路は、過去に発症したことのある成人や子どもからの唾液経由だとされてきましたが、実際のところ誰からうつるのかは不明でした。そんな中、コロナ禍では他の感染症は激減したにも関わらず、突発性発疹については発生数の減少が見られず家庭内で感染する可能性が高いという論文や、成人よりも年長児のほうが原因ウイルスの排泄量が多いという論文を読む機会があり、これが本当であれば、先に生まれたお子さまよりも後に生まれたお子さまのほうが発症月齢は早くなるはずだと推測しました。そこで、出生順と発症月齢の関係について研究を行い、その結果、出生順が発症月齢に影響する可能性が高いという結果を得られました。この結果は、小児科医が発熱したお子さまを診る際の貴重なデータになると思っています。

先生ご自身が健康のために大切にされている習慣はありますか?

どれだけ忙しくても睡眠時間を確保することです。最近も地域で講演する機会があり、睡眠の大切さについて話しています。日本人は他国と比較して、睡眠時間が非常に短いですよね。特に私は、塾や習い事で夜遅くまで外出している小中学生に問題を感じています。学校に行って、塾に行って、スマートフォンを見て、そんな生活の中で睡眠時間を確保するのはとても無理です。でも、それを「仕方ないよね」で済ませるのは間違っています。家庭や医療現場だけでなく、社会で子どもたちの睡眠時間を確保しようと働きかけるべきだと。そのため、何かを教えるよりも、学校や保護者の方と一緒に子どもたちの睡眠について真剣に話し合っていきたいと考えています。

今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

井上佳也院長 井上こどもクリニック6

何か特別なことを始めるよりも、今までどおり、深谷地域の患者さまが必要としてくださる時に、それに応えられるクリニックでありたいと考えています。そのために必要な知識やスキルは常に取り入れていきますし、専門的な診療や検査が必要な場合は迅速に病院へつなげるなど、患者さまにとって最善の対応を行います。特に私が勤めていた30年前から付き合いがある深谷赤十字病院は、現在信頼できる医師がそろっているので、まめに連携を取るようにしています。やる気のある若手医師がそろっていて、私もとても頼りにしています。地域のかかりつけ医として小児疾患へ網羅的に対応できる体制を大切にし、この地域の患者さまやそのご家族が長く必要としてくれる存在であり続けられたらいいなと思います。

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