榮樂 信隆 院長の独自取材記事
榮樂内科クリニック
(鹿児島市/中郡駅)
最終更新日:2025/03/14

3階建ての清潔感ある「榮樂内科クリニック」には、近隣のみならず遠方からも患者が受診。院内に入ると落ち着きのある空間が広がり、榮樂信隆院長の恩師が描いた立派な日本画に目を奪われる。幅広い診療を行う地域のクリニックとしてスタートした同院では現在、専門性を生かしたリウマチ・膠原病の治療や神経内科診療も数多く実施。専門分野が2つあるからこその強みが至る所で発揮されており、「リウマチ患者を助ける」という開業当初の目標は達成されているようだ。鹿児島のリウマチ・膠原病治療をけん引する存在でもある院長に、同院の特徴や検査体制、現在の課題や今後の展望などを聞いた。
(取材日2024年10月30日)
リウマチ・膠原病の診療に注力するクリニック
クリニックのコンセプトを教えてください。

最初は「とにかくリウマチの患者さんを助けたい」という思いがありましたので、それがコンセプトですね。昔は、リウマチは治療がほぼ不可能な病気とされ、1999年に承認された治療薬が出るまでは高い寛解率は望めませんでした。関節が変形して動けなくなったり寝たきりになったりするケースも多かったのですが、当院を開業する少し前の2003年頃、リウマチの治療に更に有用な生物学的製剤がやっと誕生したんです。リウマチを早期に発見し、生物学的製剤によって治療すれば日常生活に戻れるまでに回復することも望めます。そのためやりがいは非常に大きく、「なるべく早く寛解に持っていき、普通の人と同じような生活を送れるようにサポートする」というのが当院当初の目標でした。
先生のご経歴を伺います。
私はもともと神経内科の出身で、初めは鹿児島大学で診療の傍ら、脊髄の免疫疾患であるHTLV-1関連脊髄症(HAM)という難病の研究にも携わっていました。留学先の米・ロックフェラー大学でも研究員として勤務した後、国内でリウマチ・膠原病の治療を担当することとなり、その後大学での長い勤務を経て責任ある立場も経験してきました。さらに鹿児島大学保健管理センターの助教授などさまざまな現場で研鑽に努めてきました。開業当初は自身の専門分野の診療を幅広く行おうと考えていましたが、現在はリウマチや膠原病の患者さんが大半を占めており、近隣のみならず宮崎県や離島からいらっしゃる方もいます。
医院づくりでこだわった点や、各階の機能について教えてください。

1階は17台分の車を止められる駐車場で、2階には受付と待合室、診察室があります。待合室の一角にはリウマチ患者さん同士がコミュニケーションを取れるスペースがあり、内装は白と茶色を使って落ち着いた雰囲気に仕上げました。膠原病の方は感染症のリスクが高いため、通常の患者さんと感染症の患者さんを分離できる動線設計にはこだわりましたね。来院時から感染症患者さんは完全に隔離して別空間で診るスタイルなので、新型コロナウイルス感染症のまん延時も適切に対応できたと思っています。また、当院の診察室は隣接する問診室とペアになっているのも特徴で、初めに看護師が患者さんのお話を丁寧に伺い、状態を把握した上で診察室にご案内します。そして3階は主に各種画像診断の検査スペースとなっています。
専門家として痛みを鑑別し、適切な治療へつなげる
こちらでのリウマチ診療における強みをお聞きします。

神経内科とリウマチの経験や専門性を生かし、痛みの原因を細かく鑑別できることが何よりの強みと考えています。関節痛はリウマチの代表的な症状のため、首や腰が悪い患者さんの中には自分はリウマチだと思って受診する方も少なくありません。しかし実際は神経痛だったり、リウマチと神経痛の両方だったりするケースも存在します。痛みの原因を見分けることは難しいのですが、私の場合は神経内科もリウマチも専門に診ることができ、いかなる症例でも痛みの原因を特定し、必要な医療につなげるということを大切にしています。また、鹿児島はリウマチ・膠原病の専門家が不足しており、当院はそれらを診ることのできる医院として貢献ができているものと思います。繰り返しになりますが、痛みの原因なのが何なのか?先ずはそこにアプローチすることがこのクリニックの一番の強みだと思います。
リウマチの治療や、受診の目安について教えてください。
当院ではさまざまな薬物療法に対応しており、生物学的製剤や新しい抗リウマチ薬も扱っています。先端の技術を駆使して、患者さんにとってより良い治療となるよう心がけています。内科的な感染症や悪性腫瘍などとの兼ね合いも考え、薬の副作用を予防しながら治療するのがポイントですね。リウマチの治療で患者さんに一番呼びかけたいのは、関節の腫れや痛みが生じたら、なるべく早く専門のクリニックに足を運んでほしいということです。関節が変形してからでは遅く、壊れた関節は残念ながら元に戻ることはありません。痛みはさまざまな病気の可能性を考えながら鑑別する必要があり、生物学的製剤なども患者さんごとの使い分けが重要ですので、正しい診断・治療のために専門のクリニックへ相談しましょう。
検査体制が充実しているそうですね。

検査スペースには、画像診断のためのエックス線装置やMRI、超音波検査装置などを備えています。エックス線はリウマチの診断の基本ですが、超音波検査装置はリウマチの診断と活動性の評価に不可欠で、この機器でどれだけ状態を正確に把握できるかが重要なポイントとされています。今も超音波でわからない箇所はMRIで診断しており、結果的により精密な検査が可能になっています。加えて、リウマチ患者さんは骨粗しょう症のリスクが伴います。リウマチが治っても骨折しやすくなっては本末転倒ですので、フォローのために骨密度測定装置も導入しています。他にも毎週土曜は呼吸器専門の先生に来てもらい、肺の合併症も診てもらっています。リウマチ患者さんは合併症の危険性が非常に高いため、包括的に検査できるのもクリニックの特徴だと思います。
患者の幸せのため、早く見つけて早く治すのがモットー
診療は完全予約制なのですね。工夫されていることはありますか。

当院は基本完全予約制ですが、急変した患者さんも受け入れております。そうなると十分に対応するだけの時間を確保しなければなりませんが、どうしても待ち時間が長くなってしまうときがあるんです。加えて、曜日ごとに診療を手伝ってくださる先生と二診制を取ってはいるのですが、内容によっては私が診る必要があり、そこで診療の流れがストップしてしまう日も。人員体制に関しては過渡期にあり、多くの患者さんをお待たせしてしまっていることをたいへん申し訳なく思っています。現状の工夫としては、待合室に待ち時間についての注意書きを掲示しているほか、患者さんの容体によって対応する医師を決め、スムーズな診療を心がけています。そして、とにかく早く治すことに重きを置いているからこそ、悪い状態の方ほど1週間ごとなど高い頻度でお越しいただき、症状の落ち着いた方は2~3ヵ月先まで日程に幅を持たせて次回の予約を受けつけるようにしています。
今後の展望をお聞きします。
PsA(乾癬性関節炎)という、乾癬に伴って起きる関節炎の治療に一層取り組みたいと考えています。PsAは症状がひどくなるケースが多いのですが、最近まではリウマチとの区別が困難な病気でした。しかし欧米のように「PsAの患者さんはリウマチ患者さんと同じくらいいるのではないか」といわれるようになり、私も改めて注目するようになりました。PsAはリウマチとは治療法が若干異なりますので、今後はPsAを患う患者さんの発掘に尽力し、しっかりとアプローチしていく予定です。
読者へのメッセージをお願いします。

リウマチは、早期発見・早期治療が最も患者さんのメリットにつながると考えています。繰り返しにはなりますが、関節は変形してからでは手遅れで、痛みのある関節を無理に動かす行為も関節破壊を促します。最初の対応が肝心だからこそ、関節の痛みや腫れが長引く場合は一度専門のクリニックへ相談しましょう。当院もリウマチ専門の医院として、豊富な経験のもと診断・治療いたします。リウマチは長期にわたって治療が必要な疾患ですが、当院はいずれ息子に受け継ぐ予定です。息子もリウマチを専門としており、神経内科は優秀な先生がサポートしてくださるため、安心して通っていただきたいです。