村井 由佳 院長の独自取材記事
Mキッズクリニック
(奈良市/学研奈良登美ヶ丘駅)
最終更新日:2025/12/15
2008年の開業から地域の子どもたちの健康を支えている「Mキッズクリニック」。隣接する病児保育園「mランド保育園」とともに奈良市の住宅街にたたずみ、多くの親子の助けになってきた。院長を務めるのは、自身も2人の子を育てた母親である村井由佳先生。「お子さんやご家族が抱える悩みに寄り添える存在でありたい」と優しくほほ笑む村井院長のもとには、遠方から相談に訪れる人もいるという。子どもを第一に考え、楽しく過ごせる工夫を凝らす一方で、育児に追われる母親に寄り添う姿勢も忘れない。そんな村井院長に診療への想いを聞いた。
(取材日2025年11月20日)
子どもが自然と笑顔になる仕掛けがあふれるクリニック
クリニックの特徴を教えてください。

地域に根ざした小児科クリニックとして、新生児から思春期のお子さんまで、それぞれの成長段階で変わる体の悩みを幅広く診療しています。開業当初にお子さんだった方が親になり赤ちゃんを連れて来てくれたりと、長くお付き合いさせてもらっていますね。小児科の診療範囲は幅広く年齢制限もありませんので、大人になっても継続して診察させていただきます。お子さんと一緒に保護者の方の風邪を診ることもありますし、妊婦さんの発熱にも対応しています。PCR検査やAIを用いたインフルエンザ検査、カメラを見つめるだけで視機能の状態を確認できる機器など先進の検査機器を積極的に導入し、早期発見にも注力しています。お子さんの不安を取り除き、ストレスなく過ごしていただける工夫を凝らしているのも特徴ですね。当院の隣には子育てと仕事の両立をサポートするために「mランド保育園」という病児保育園も併設しています。
クリニックの随所に、お子さんを笑顔にするための工夫を感じます。
院内には至るところに遊び心を取り入れています。エントランス前の通路や階段にはカラフルなビー玉が埋め込まれていたり、夜になると待合室の小窓が7色に光ったりなど、入る前から笑顔になれるような仕掛けがあります。診察室や処置室の扉にはテントウムシやトンボといったお子さんに馴染みのあるイラストを描き、診察中もリラックスできるようにしました。予防接種の際は、痛みや怖さを少しでも和らげるためにしりとりをしたり、壁に貼った切り絵やキャラクター、野球選手と背比べできる身長計の話をしたり。気づけば「もう終わった!」となるように工夫しています。さらに診察室の壁は磁石になっていて、パズル遊びもできるんですよ。ここに来るだけで「できたよ、頑張れたよ」といった子どもの成長が実感できるようにしています。
看板や扉に描かれているテントウムシには、どんな想いが込められているのでしょうか?

日本でも海外でも、テントウムシは縁起の良い虫とされています。子どもというのは、大切に育てなければならない命。臨床実習でさまざまな子どもの病気を知り、私は健康に恵まれて幸せに生きてきたのだと実感しました。小さいお子さんが何の心配もなく元気に生きていくための助けになりたい。そんな想いで小児科医を志した私にとって、「病気の人にテントウムシが止まると病を持って行ってくれる」というジンクスは、クリニックのシンボルにふさわしいと感じました。娘が幼稚園に行く途中でテントウムシを捕まえて、「皆に見せるんだ」と手に握りしめていたことが印象深かったのも理由の一つです。私自身も育児を通して学んだのですが、保護者は本当にちょっとしたことで悩みます。日々お子さんに向き合っている保護者の方の心配が少しでもなくなるよう、どんなことを聞かれても答えられる小児科医でありたいと思っています。
子育て経験を生かした母親目線の診療と院内設計
オリジナルのワクチン手帳を作っているそうですね。

ワクチンの種類が増え、接種のタイミングが複雑になっている一方で、母子手帳ではどれとどれを組み合わせて打てばいいのかがわかりにくいという問題がありました。そこで、漏れなく接種できるよう、月齢ごとにどのワクチンを打てばいいのかをまとめたオリジナルのワクチン手帳を作りました。デザインにもこだわり、お子さんの成長とともに「種」が「木」へと育ち、小学校に入るとリンゴの実がなるイラストを採用。注射後の泣き顔の写真を手帳に貼ってお渡ししています。ここでしか見られない特別な瞬間なので、記念になると保護者の方に喜んでいただいています。
保護者の目線に立って診療されているのですね。
子育てをしてきた経験が生かされていますね。例えば、夜泣きに困っている方には漢方薬の処方も行っています。漢方薬は親子で一緒に飲むことができるので、双方の心を落ち着けることも期待でき良好な関係の助けになる場合があります。女性はどうしても、子育てで疲労やうつ状態になりやすく、心身ともに不安定になることがありますよね。でも、つらいと言えずに一人で頑張っている方も多い。漢方薬は一般的な薬とは作用が異なり幅広い症状に対応できるので、そういった方にはお勧めすることもありますね。助産師さんの協力を得て産後のおっぱいマッサージを行ったり、お肌のお悩みにも対応したりしています。女性にしかわからないお悩みに寄り添って、手を差し伸べたいんです。
他にも保護者の目線に立った工夫がたくさんあると聞きました。

私自身の子育ての実体験から「こういうのがあったらいいな」を形にしました。例えば、小さい子どもがいるとどうしても荷物が増えますが、大荷物で子どもを連れて移動するのは一苦労。そこで、コートや荷物を預けられるロッカーを作りました。お会計の時も赤ちゃんを抱いていると不便なので、受付のカウンターにベビーベッドを設置して、落ち着いてお会計ができるようにしました。点滴ルームにはローベッドを置いて、保護者の方やご兄弟も一緒に座って待てるようにしています。また、感染症対策に個室も2部屋設けています。当院はウェブ問診も導入しているため、ご自宅で症状をご入力いただき、来院後はスムーズに診療を受けていただけます。
子どもが安心して悩みを相談できる存在でありたい
診療で大切にしていることを教えてください。

子どもたちは自分の体調を言葉で伝えられないことも多いです。一見元気そうでも気が滅入っていたり、いつもより走っていなかったり、ちょっと顔色が悪かったりと、普段と少し違ったところがあります。そういう小さなサインに気づいてアドバイスできたらと思っていますね。初めて受診されたお子さんも、どのような症状で困っているのかをご家族からしっかり聞いて、注意深く診ています。子どもたちは診察に時間をかけると嫌がるため、スピーディーさも意識していますね。子どもを第一に考えて、必要であれば厳しいこともしっかりと伝える。「この子たちに何かあってはいけない」という想いで、時にはしっかりと伝えることもあります。
スタッフさんについても教えてください。
当院のスタッフは本当に頼もしいです。院内を少しでも明るくしたいとお願いしたところ、切り絵を作ってくれました。月ごとに作ってくれるのですが、細やかな工夫とセンスが光っていて、毎回驚かされています。診察室にあるキリンの身長計も、私が「身長計が欲しい」と話したことから生まれたものですが、キリンのデザインにしてくれたのはスタッフのアイデアです。子どもたちに大人気で、診察時間が楽しいひとときになっています。スタッフは常に子ども目線を大切にし、私のアイデアを形にするだけでなく、さらに魅力的なものに仕上げてくれます。こうした心遣いとプロフェッショナルな姿勢のおかげで、院内は診療の場を超え、子どもたちが安心できる空間になっています。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

お子さんや保護者の方のニーズに応えられるよう、常にアップデートしていきたいですね。毎年一つは新しいことを取り入れながら、「お子さんやご家族にとって本当に良いことは何か」を模索し、前向きに診療を続けていきたいと思っています。また、小児科で開業している女性医師は多くない現状があります。時代とともに男女の垣根はなくなりつつありますが、思春期のお子さんにとって、デリケートな悩みを相談する際に安心できる環境はとても大切です。そうした気持ちに寄り添い、お子さんが安心して話せる存在でありたいと思っています。受診をためらわず、ぜひ一度ご相談ください。

