下吹越 正紀 院長、下吹越 公美恵 さんの独自取材記事
えちごクリニック
(吹田市/北千里駅)
最終更新日:2025/03/25

春は新緑、秋は紅葉が美しい三色彩道に面した「えちごクリニック」。北千里駅から徒歩7分という場所にあり、地域の子どもから高齢者まで長年愛されてきたクリニックだ。そんなクリニックを2024年10月に継承した下吹越正紀(しもひごし・まさき)院長。前院長夫妻が築いてきた温かい空間や病児保育室を大切にしながら、従来からの小児科・内科に加え、アレルギー科やさまざまな相談ができる外来の設置など、新たな取り組みも。2025年4月からは保育士として豊富な経験を積んだ下吹越院長の母、下吹越公美恵さんを保育室長に迎え、病児の保育体制を強化していく予定だ。「みんなが笑顔になれるクリニック」をめざして尽力する下吹越院長に、継承までの経緯やクリニックの強み、今後の展望などを聞いた。
(取材日2025年3月15日)
憧れの世界で知ったのは、チーム医療の重要性
医師をめざしたきっかけや、小児科を選ばれた理由をお聞かせください。

【正紀院長】私は生まれつき顔に血管の異常によるあざがあり、幼い頃から定期的に病院に通っていました。そこで見た医師の姿に憧れたのが、最初のきっかけですね。診察を終えた患者さんが笑顔になって帰っていくところを見られるのは、かっこいい仕事だなと子ども心に感じたんです。また、学生時代は医療物のドラマをよく見ていたので、すてきな仕事だなと思っていました。保育士をしている母の影響や、昔から子どもが好きで保育園をインターン先に選んだこともあり、いずれは子どもに関わる道に進みたいと考えたことが、小児科を選んだ理由です。
急性期医療の現場で、医師としてのキャリアをスタートされたそうですね。
【正紀院長】はい。大学卒業後は大阪急性期・総合医療センターに入職しました。最重症の患者さんも受け入れる病院で、忙しくも多くのことを学ばせていただきました。特に、医療の現場に初めて携わって感じたのは、チーム医療の重要性です。ドラマではスーパードクターのような存在がいますが、実際は、患者さんが退院するまでのサポートは医師だけではできません。多くの職種が関わり、コミュニケーションを取りながら支えていく重要性は思った以上に大きく、チームで動く大切さを学びました。
クリニックを継承されるまでの経緯を教えてください。

【正紀院長】5年間臨床の現場で経験を積んだ後、大学院に進学し研究をしていました。新しい発見をすれば世界中の人たちのためになるという点で、やりがいは大きかったです。ただ、やはり自分は目の前の患者さんとコミュニケーションを図りながら診察を行うほうが性に合っていると思い、いずれは開業することを念頭に臨床に戻りました。そんな時、たまたま知り合いから継承者を探している医師がいると聞き、こちらのクリニックと出会ったんです。共働き世帯が増え、核家族化が進む中で、病気のお子さんを預かる場所があれば保護者が安心してキャリアを積むことができるので、開業するなら病児保育室を造りたいと考えていました。一方で、行政の認可やスペースの確保など、一から始めるには課題も多くあります。すでに設備が整っているクリニックを引き継げるチャンスはなかなかないので、今しかないと継承を決意しました。
長年愛されてきた強みを生かし、さらなる発展を誓う
継承後、新たに始められたことはありますか?

【正紀院長】継承のタイミングで、小児科・内科に加えアレルギー科も標榜しました。風邪などの感染症と違い、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎、喘息などの症状は継続するものです。適切なケアで改善を図り、つらい症状で苦しんでいる方のサポートをできればと考えています。また、一般診察とは別に予防接種と乳幼児健診、さまざまな相談のための外来の時間を設けました。例えば、アトピー性皮膚炎などの症状や薬の使い方を説明するためには時間が必要なので、この枠を活用しています。加えて、最近は不登校や起立性調節障害などで悩んでいるお子さんも多いので、背景をしっかりと聞き取るための時間としてもこちらの外来の存在を知っていただければうれしいです。
病児保育室は新体制になるそうですね。
【正紀院長】前院長夫妻が行政との交渉を重ね、まだ吹田市内での病児保育室が一般的でなかった頃に立ちあげた病児保育室は、当院の特徴であり強みです。これまでは前院長が診察、奥さまが病児保育室長を担当されてきましたが、2025年4月からは私の母が保育室長を引き継いでくれることになりました。
【公美恵室長】私は長年保育士として働いており、働く保護者の方たちの頑張りを見てきました。自分自身も働きながら子育てをした時期は本当に大変でした。 預けている子どもたちに体調不良が起きると、保護者の方はすぐにお迎えに行って自分がそばで見守りたい思いの中、お仕事にも向き合わなければならず苦しい思いをされています。 なんとか力になる方法はないかと考えていたところ、息子が継承した医院に病児保育室があり、手伝ってもらえないかと声をかけてくれました。前院長夫妻の強い思いも引き継ぎ、地域の皆さんの力になれたらと思います。
病児保育室の特徴を聞かせてください。

【正紀院長】病児保育室には保育士と看護師のスタッフが約10人在籍しており、全員で情報共有しながら保育にあたっています。クリニック併設のため、預かっているお子さんが急変した場合など迅速に対応できることが強みです。
【公美恵室長】保護者の方は、心配で後ろ髪を引かれる思いで仕事に行かれます。ですから、お迎えの際には1日の様子や帰宅後の注意点などを細かくお伝えし、不安を少しでも軽減できるように心がけています。体調不良のお子さんはもちろんですが、保護者の方の心身の負担を減らすサポートをすることもわれわれの大切な役割だと思っています。
チームワークで地域の親子に寄り添うわけですね
【正紀院長】現在働いてくれているスタッフは、前院長夫妻とともに十数年を歩んできた方たちばかりです。幼い頃から通われている患者さんに久しぶりに会い「もう高校生になったの!」などと話している場面を何度も目にしました。皆さんから 信頼され、地域との関わりがとても深いクリニック・病児保育室なのだと強く感じています。長年愛されてきた当院の強みを生かし、今後も地域の方のお役に立てるよう、努力を重ねていかなければと思っています。
親切で丁寧な対応に加え、笑顔になれる環境づくりを
患者さんとの関わりで気をつけていることはありますか?

【正紀院長】お子さんが何に興味を持ち、何に怖さを感じているのかをしっかりと見て判断するようにしています。落ち着いて診察できることがお子さんにとっても大切ですから。 その一環として当院の医師や看護師は白衣やスクラブを着ていません。受付のスタッフも私服にエプロン姿なので、良い意味で医療機関らしくないことが特徴です。これは前院長時代からのスタイルで、 お子さんからご高齢の方までが居心地良く過ごせる工夫だと感じ、私も踏襲しています。診察室に入るだけで泣いてしまうお子さんをこれまでよく見てきましたが、当院は進んで診察室に入って来る子が多いんですよ。
今後の展望を教えてください。
【正紀院長】前院長夫妻が大切にされていた「親切に接し、丁寧に説明する」という理念を引き継ぎ、今まで来られていた患者さんに今後も愛されるようなクリニックにしたいと考えています。加えて、この地域は子育て世代に人気のエリアなので、新たに住み始めた方にもクチコミが広がっていくよう、尽力していきたいです。私は人の笑顔が好きなので「みんなが笑顔になれるクリニック」も目標に掲げています。そのためには、スタッフが気持ち良く働けることも大切だと考えています。楽しく働ける環境づくりにも取り組んでいきたいですね。
読者へのメッセージをお願いします。

【正紀院長】できる限りわかりやすい説明に加え、病気の名前や今後どうなっていくと考えられるかなどをしっかりとお伝えすることを心がけています。クリニックだけではできないこともあるので、必要時には地域の病院と連携を図っていきます。 まずは何でもご相談いただければと思います。
【公美恵室長】保育士として、また働きながら子育てをしてきた一人の経験者として、「子どもが病気の時、こんなサポートがあったらいいな」を形にしていきたいです。子どもたちの病状を把握し寄り添うことはもちろんですが、毎日頑張る保護者の皆さんの気持ちにも寄り添っていきたい。困った時は気軽に私たちを頼っていただければと思います。