松野 敏文 院長の独自取材記事
松野内科クリニック
(伊予郡松前町/岡田駅)
最終更新日:2021/10/12

田畑が広がる伊予郡松前町にたたずむ「松野内科クリニック」。松野敏文院長が「医療を必要とする地域の人々の役に立ちたい」との思いから2005年、自宅の近くに開業。院内に足を踏み入れた瞬間、吹き抜けの待合室が広がる。色とりどりのステンドグラスや絵画など、訪れた人々を癒やす工夫が随所に。「地域のかかりつけ医」として総合的な診療を展開しているが、特に力を入れているのは、糖尿病をはじめとする生活習慣病の予防や治療。薬に頼るだけでなく、食事や運動を取り入れたを生活指導を通して、患者一人ひとりの健康づくりに尽力している。話を聞くにつれ、松野先生の優しい人柄が伝わってきた。
(取材日2019年8月26日)
地域の人々のために、寄り添う医療の実践を志す
先生がこの地に開業されたきっかけを教えてください。

開業する前、私は伊予市にある愛媛医療生活協同組合伊予診療所で所長を務めていたのですが、そこで患者さんから「松前町で開業してくれないか?」と言われたことが後押しになりました。より地域の皆さんに密着した医療を展開したいという想いから、自宅から歩いて行けるこの場所に決めたのです。自宅から近ければ、もし夜間に患者さんの具合が悪くなっても、すぐに診ることができますから。そして建物に関しても、勤務医時代から温めてきた理想のイメージを伝えてつくってもらいましたので、思い通りの空間になったかなと思います。
そんなこだわりの院内について、ぜひ教えてください。
まず、患者さんの緊張をやわらげ、ゆったりとした気分で過ごしていただくために、待合室と受付の空間は吹き抜けで開放的にしました。そして吹き抜けの壁には色とりどりのステンドグラス、待合室の壁には絵画を飾るなど、いい意味でクリニックらしくない、ギャラリーのような雰囲気をイメージ。実は、ステンドグラスには私や家族、施工してくれた業者さんの名前が彫られているんですよ。また、勤務医時代は病院のトイレに不満を感じていましたので、患者さんに気持ちよく使っていただけるよう、トイレも洗面コーナーも広く明るく。空間レイアウトに関しても、中央の待合室を囲むように診察室や検査室などを配置することで、私たちスタッフが常に患者さんを見守ることができるように工夫しました。
患者ファーストな先生の地元愛、そしてやさしさを感じます。
松前町は妻のふるさとという縁で勤務医時代から長く住んでいますので、地元意識もあります。今でも印象に残っているのは、開業からしばらくたった頃、夜中の1時頃だったでしょうか、患者さんが自宅を訪ねてきたんです。「おなかが痛いのでなんとか診てくれないか」と。そのときは、この場所に開業してよかったと改めて思いました。この近辺に住む方でしたら、できる限り時間外でも診ることができたらと考えています。
それで訪問診療も展開しているのですね。

そうですね。ご高齢の方も増えている地域ですから、通院が難しくなった患者さんに関しては、訪問診療をしています。今は午前診療と午後診療の間の時間帯や、午後休診の日を往診時間として、松前町を中心に訪問できる範囲でまわっています。中には、前職の伊予診療所時代から診ている患者さんもいらっしゃるので、一部伊予市へも訪問しています。
生活習慣病に、食事や運動の観点からアプローチ
先生のもとを訪れる患者さんはどのような症状の方が多いですか?

初診で来られる方は風邪や腹痛などさまざまですが、多いのは生活習慣病の患者さんです。中でも多いのが糖尿病の方で、皆さん定期的に通院されています。糖尿病の治療の流れとしては、まずは生活習慣を見直すことから始めます。いくらお薬を出しても、食事の内容などが良くなかったら、余計に悪化してしまうこともあるんですよ。特に糖尿病の患者さんとは、しっかり時間をかけてお話します。何を食べているか、どのくらい運動をしているかなどですね。こと細かに確認する中で問題が見つかれば、そこを改善していく方法を指導します。もし原因が生活習慣に見当たらない場合は別の疾患が隠れている可能性もありますから、精密検査を行います。
院内には健康ルームもあると伺いました。
これも、生活習慣病の患者さんへの運動指導のために作りました。当院の患者さんはご高齢の方が多いので、無理なく体を動かせるようなフィットネスマシンを導入しています。開院当初は私が実際に運動の仕方を指導していましたが、現在は患者さんに自由に利用していただいたり、外部から講師をお招きし月2回程度金曜日に運動指導なども行っています。程良い運動を習慣づけることで、生活習慣病の改善だけでなく、肩こりや腰痛などの改善もめざせますよ。年をとると、徐々に足腰が弱くなって体を動かすことが億劫になってきますよね。自分の足で歩くことは、健康寿命を延ばすためにとても大切なことですから、少しずつでも運動することを習慣づけていただきたいと思っています。また、料理を作れるキッチンスペースもありますので、運動面だけでなく、栄養士さんによる食事指導を積極的に行い、患者さんをサポートしていきたいですね。
患者さんの健康維持のために、取り組んでいることはありますか?

健康診断や人間ドックの結果って、そのときは「気をつけよう」と思っていても、案外忘れてしまうものですよね。当院では、定期的に通院されている患者さんを対象として、毎年誕生日月に健康診断などの結果を一覧にして再度お渡しする「健康カルテ」の取り組みを行っています。検査値が悪くなってきていないか、何年かの数値の推移もチェックし、改善すべきところを患者さんに自覚していただきます。特に高血圧や糖尿病の方はお薬の副作用が短期的、長期的に表れる可能性があるので、定期的な血液検査が重要。お薬にしても、検査にしても、なぜ必要かの理由をしっかりご説明した上で、納得して通院していただくプロセスを大切にしています。
健康寿命は、毎日の生活を見直すことから
先生ご自身も、健康づくりに何か運動をされているのでしょうか?

週に一度、地域のレクリエーション・バレーボールに参加していますが、きっかけは実は患者さんなんです。診察室でお話ししているとき、「何かスポーツはされていますか?」と聞かれて。大学時代にバレーボールをしていたので誘っていただきました。開業2〜3年目からですから、もう10年以上になります。松前町のレクバレーチームの皆さんと、このときばかりは仕事を忘れてリフレッシュしています。
患者さんと接する中で、やりがいを感じた瞬間を教えてください。
患者さんと一緒に取り組み、成果が感じられる時はうれしいですし、やりがいを感じます。最近では、ある糖尿病のお子さんとの取り組みです。糖尿病の治療を始めた当初は薬の処方だけだったのですが、今は食事や運動の指導をして、一緒に改善に取り組んでいます。食事や運動を含めた生活指導は、患者さんに心から寄り添うことで患者さんに受け入れられて、実践につながっていけると思います。患者さんが私を受け入れてくれて、指導を実践してくれることもうれしいです。こういった患者さんとのやりとりを通して、私は患者さんを診ることが好きなんだと再確認しますね。
最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

開業から15年目を迎えますが、芯はぶれることなく、今後も地域の方の近い存在として、患者さん一人ひとりを最期まで診ることができたらいいですね。そんなお付き合いを続けていけたら、医師としてこんな幸せなことはありません。薬に頼るばかりではなく、食事や運動などの生活習慣を見直すことは、健康寿命を保つ秘訣です。さらに認知症予防など年齢に応じた生活のアドバイスなども積極的に行い、長く元気に過ごしていただくためのサポートができればと思っています。ですから、特に症状がなくても、日々の生活の中で何か気になること、健康診断で引っかかった項目などがありましたら、どうぞ気軽にお越しください。