迫田 晃子 院長の独自取材記事
迫田晃郎クリニック
(鹿児島市/騎射場駅)
最終更新日:2024/12/06

騎射場電停近くにある「迫田晃郎クリニック」は、内科、外科、消化器内科、消化器外科、泌尿器科、小児泌尿器科、小児外科を標榜し、幅広い疾患に対応するクリニック。迫田晃郎先代院長が2005年に開院、2016年に現在の場所に移転。「かかりつけ医」として地域の信頼を集めている。2018年に同院を引き継いだ迫田晃子院長は日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医、日本泌尿器科学会泌尿器科専門医、日本小児外科学会小児外科専門医の資格を有し、前職の東京女子医科大学病院の泌尿器科では、子どもから大人まで数多くの機能外科診療に携わってきた。現在も鹿児島や東京の病院で手術を執刀するスペシャリストとして活躍しながら、気さくで親しみやすい雰囲気でクリニックでの診療に注力する迫田院長に話を聞いた。
(取材日2024年8月19日)
多くの学びと経験、専門性を生かして地域医療に貢献
クリニックの開院から今までを教えてください。

現在のクリニックからほど近い場所に、先代が2005年に開院しました。父はそれまで鹿児島市医師会病院の院長を務めていて、開院した当時は72歳でした。引退しても良い年齢だったのですが、「信頼してくれる患者さんを体力が続く限り診続けたい」という信念で前職を定年退職した翌月より開業しました。開院した2005年当時、私は聖路加国際病院の小児外科に所属していました。2016年にクリニックが現在の場所に新築移転した年に東京女子医科大学病院の泌尿器科 腎臓病総合センターへ異動し、大学が休みの土曜日は月2回、鹿児島に戻り父と一緒に診療をしていましたが、2018年の10月に父が急逝したためその翌日よりクリニックを引き継ぎ現在に至っています。
幅広い疾患に対応されていますね。
父は消化器外科が専門でしたが、年齢や疾患に関わらず患者さんを診ていましたね。私ももともと一般外科の中でも主に消化器外科を専門にしていたのですが、聖路加国際病院で働き始めた頃から、小児外科で小児がんや泌尿器の疾患に携わりました。小児の外科疾患にも対応できるよう2005年に聖路加国際病院の小児外科で研鑽を積ませていただくこととなりました。そこで小児外科疾患の患者さんだけでなく、多くの小児がんや小児泌尿科疾患の患者さんと関わることになり、その子たちの将来にとって機能外科が重要であることを実感しました。さらにこの分野についてロンドンの小児病院Great Ormond Street Hospitalで研鑽を積みました。ロンドンでは子ども病院の中で泌尿器科に所属し、オンコロジー、腎・泌尿生殖器系疾患などを専門的に学びました。
ロンドンでも学ばれていたのですね。

そこで学んだことが、今一番役に立っているように思います。それまでも良い師に恵まれていましたが、日本では「優れた技は見て盗め」という職人気質な文化があり、手取り足取り教えてくれるということはありませんでした。一方ロンドンのBossたちは外科の技術に関して、細かいところまで丁寧に教えてくれました。その経験を生かして自分は後輩たちにわかりやすく丁寧に技術を伝えられるよう心がけています。
「みんなを笑顔に」をモットーに幅広い疾患に対応
設備面や中庭のある院内についても教えてください。

設備面の特徴としては、エコー、レントゲン、心電図、血管年齢測定など一般的な検査装置の他、尿流測定検査室を設けています。トイレで普通に排尿するだけで膀胱機能を評価することができ、尿の勢いや残尿を診ることで排尿機能の病態を知ることができます。中庭にあるジューンベリーの木には「みんなを笑顔に」という木言葉があります。がんでつらい人も、痛みで苦しい人も、どんな患者さんでも笑顔になれるような診療ができたらという当院のモットーの象徴です。
どのような患者さんが多いのですか?
0歳から100歳以上の患者さんを診ています。小児の患者さんでは機能的な問題で悩まれている方が多く、特に夜尿症や排泄機能の障害、便秘などが多いです。便秘も奥が深いというか、ただ下剤を飲めば治るというものではありません。また便秘が改善されれば排尿障害が良くなることもあります。大人もそうですが、便秘や頻尿に対して、ただお薬を処方するのではなく、腸や膀胱の機能だけでなく、心の問題なども全部トータルで診ることが大切です。患者さんの生活環境、家族関係、クリニックまでどうやって通院しているかなど「かかりつけ医」として患者さんのバックグランドを理解することは先代の父の方針でもあり引き継いでいきたいと考えています。
ご専門の機能外科について教えてください。

機能外科は本来の臓器機能が失われている人の生活の質を改善するための外科分野です。先天性の疾患、例えば腎臓がない、膀胱が機能しない、便が出せないといった方には腸で膀胱を作ったり、便を出せるように洗腸路を作成すれば、旅行に行けたり温泉に入れたりと、普通の人と同じような生活が送れることも期待できます。膀胱に腫瘍ができる小児がんの場合、膀胱や前立腺など全部取らなければいけないのですが、それを再建し普通の子どもたちと同じように生活できるように治療する、そういった自立できる生活のために工夫をするのが機能外科です。
現在も他院で手術をされるそうですね。
専門の小児泌尿器の手術は、鹿児島の泌尿器科で手術をさせてもらったり、以前勤務していた聖路加国際病院で大きな手術がある時は、非常勤としてお手伝いさせてもらっています。毎週水曜日は鹿児島市医師会病院で消化器外科の手術をしているのですが、当院が紹介した患者さんの手術を行い、術後は病院で回診し患者さんの顔を見ています。その後はタイミングを見て、当院で経過を診るという流れです。
自分の体の声に耳を傾け生活の基本を大切にしてほしい
地域にとってどのようなクリニックでありたいとお考えですか。

イギリスにはジェネラルプラクティショナー(GP)という制度があり医療の最初の入り口として存在する医院があります。。当院も「かかりつけ医」として幅広い疾患に対応し、治療することができますが、必要時は適切なところへ紹介できるようにしています。
今後の展望についてお聞かせください。
遠方にお住まいで当院まで通えくなった患者さんに対しては、近くの病院をご紹介していますが、今後はオンライン診療などを活用しつつ、何らかの交通手段を整えることができればいいなと考えています。また待ち時間対策として、子どもたちの待ち時間が楽しくなるような環境を整えたいです。現在オンライン診療にも対応していますが、それを活用して全国の患者さんを診ていきたいですし、今後医療はそのような流れになっていくのではないかと思っています。そして、スタッフが働きやすい環境づくりにも注力していきたいと考えています。今は多様性の時代なので、スタッフ一人ひとりの環境に合わせた働きやすい職場をめざしていきたいですね。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

生活習慣病で体重を気にされている人も多いと思いますが、年齢を重ねてから食べずに体重を無理に落とすと、筋力が減ってしまいます。食欲の有無は健康のバロメーターでもあるので、極端な食事制限をするのではなく、しっかり食べてしっかり寝るという基本を大事にしていただきたいと思います。最近患者さんにお伝えしているのは「自分の体の声に耳を傾けて」ということです。眠ければ寝る、食べたい時は食べる、疲れている時は無理せず休む、水を飲みたい時は飲む、そういう体の声に耳を傾けて、無理をしないことが良いと思います。当院では患者さんの訴えることは、どの科でも、どんな内容でも、恋の悩みであっても聞くという気持ちで診療しています。待ち時間対策を考えつつ、患者さんの話はできる限り聞くようにしていますので、心配なことがあったら何でも相談してください。