増田 行広 院長の独自取材記事
さやま耳鼻咽喉科クリニック
(狭山市/狭山市駅)
最終更新日:2025/08/13

患者同士がすれ違わない動線を考慮した回遊式の院内、待ち時間がわかる予約システム、ゾウのかわいいイラスト、スタッフの優しい言葉と笑顔。これらはすべて「患者さんに満足していただくため」と話す、「さやま耳鼻咽喉科クリニック」院長の増田行広先生。エンジニアをめざした時期もあったが、縁あって防衛医科大学校に入学。勉強しながら患者にふれるうちに「人の体の魅力に惹かれた」と振り返る。卒業後は大学病院と航空自衛隊基地での医療活動に従事。アメリカ留学も経て、2006年には当時耳鼻咽喉科が少なかった狭山市で開業した。以降、地域に根差したクリニックとして、患者に満足してもらえる医療の提供を心がけている。終始穏やかな笑顔を見せる増田院長にインタビューを行った。
(取材日2025年7月18日)
子どもから高齢者まで、オールラウンドに治療を提供
待合室にずらりときれいに並んだ椅子が印象的です。

患者さんはお子さんが多いです。子どもは1人で来ることはなく、親きょうだいと一緒なので、待合室に人があふれることもあります。そのため待合室を広くして、椅子も多めに用意しました。院内の動線も工夫しています。入り口の真正面を受付とすることで、すぐに手続きできるようになっています。次に待合室に入り、順番が近づくと診察室の脇の椅子に移動していただきます。診察後は奥の吸入器で処置し、診察室の入り口とは反対側にある出口から出て、最後は、すぐ横にある会計の専用台で会計を行います。このように、患者さんには、受付から診察終了までの間に院内をぐるっと一周していただく設計になっています。患者さんの動線が一方向になり、すれ違う煩わしさを回避できたと思っています。
どのような症状の患者さんが多いですか?
風邪や中耳炎を患った小児と、60〜80代の高齢者がメインですね。高齢者は難聴やめまい、耳鳴りなどの症状を訴える方が多いです。そして花粉症の患者さんは非常に多く、2~3月が患者数のピークです。ただ、私は特定の分野に偏らず、オールラウンドな診療を心がけています。また、高校の耳鼻咽喉科の健康診断も担当しています。患者さんとつながりを深められるのは、大学病院ではあまり味わえない、クリニックならではのやりがいです。小さかった子が立派な高校生になっていて、「先生!」と昔のことを覚えてくれていたということもありました。長年診療してきたことが狭山市の子どもたちの成長に役立っているんだなと感じ、うれしいですね。
お子さんの診察の際に心がけていることはありますか?

子どもは「怖い」というイメージを持つことが多いので、恐怖心を与えないこと最優先にしています。私も子どもと同じような言葉で話すようにして、「こういうスプレーをするけど、怖くないからね」など、一つ一つの治療の説明をして不安の軽減に努めています。初めは苦労するような子でも、ある程度同じ目線でコミュニケーションが取れるようになれば、打ち解けられることが多いです。他には「かわいいお洋服だね」など、身近なことから入ることもあります。ある時、余っていたシールをあげたら、その子がすごく喜びましてね。「これはいけるな」と思い、それ以降、治療を頑張った子にはご褒美のシールや飴をあげることにしています。そんなふうに試行錯誤しながら、診療を続けています。
自衛隊の勤務医を経て、地域医療に貢献したいと開業
開業の経緯をお聞かせください。

私は防衛医科大学校の出身です。自衛隊のための医官を養成する大学なので、卒業後は防衛医科大学校病院と自衛隊の基地での勤務を繰り返しました。防衛医科大学校病院では臨床にあたり、基地では健康診断や健康管理など基本的な医療にあたりました。自衛官は皆健康なことが多いですから、治療するとしても風邪や通風、高血圧、水虫などがほとんどでした。ある意味特殊な状況で医療に従事する中で、臨床に専念したいという気持ちが次第に強くなりました。人生は一度きりですから、悩んだ末に開業の道を選び、この地に開業しました。大学と病院の近くでなじみがある地でしたし、以前から狭山市には耳鼻咽喉科の医師が不足していると聞いていたので、この辺りで開業すれば地域に貢献できると思いました。
自衛隊の医師としては、どのような経験を積まれたのですか?
航空自衛隊に耳鼻咽喉科の医師として従事していました。宇宙医学も学びました。宇宙医学はとりわけ耳鼻咽喉科と関連が深いんです。人間が空を飛んだら体にどんな変化が起きるのかを学び、1999年にはアメリカに留学して上級航空宇宙医学を研究しました。航空事故などでどっちが上か下かわからなくなるバーティゴ(空間識失調)という現象があるのですが、その原因も研究しました。同院には基地で働くパイロットが来院することもありますし、一般の患者さんで「飛行機に乗ると耳が痛くなる」と訴える方もいます。留学や自衛隊勤務の経験は現在の診療でも生きていると思います。飛行機に乗って耳が痛くなるのは気圧の変化が原因です。気圧が変化すると、耳と鼻が体内の気圧の調整を行いますが、風邪や花粉症で鼻が悪いときはうまくいかなくなるんです。鼻が悪いときはできるだけ飛行機に搭乗しないか、一時的に粘膜を収縮させるための薬を使う方法があります。
医師をめざしたのはなぜですか?

当初は工学部でコンピューター関係を学びたかったんですが、2浪目の年、実力模試のつもりで10月に防衛医科大学校の一次試験を受けたら合格したんです。あくまでも工学部をめざしていたので2月に一般の大学も受験したのですが、不合格でした。どうしようかと悩みましたが、防衛医科大学校に入ることにしました。すると医学も面白くて「アマチュア無線や機械ばかりいじっていたけれど、人間の体の構造も魅力的だなあ」と思ったんです。コンピューターと違って患者さんには感情があり、「ありがとう」と喜んでくれますからね。そうやって人に認められるときは、本当にやりがいを感じます。
患者に満足して帰ってもらうために努力を続けたい
スタッフ間のコミュニケーションも大切にしているそうですね。

毎日、診療が終了した後にスタッフ全員で終礼を行っています。自衛官を診ていた頃の習慣や文化が自分の中に残っているのかもしれませんね。内容は近々の予定の確認が多いですが、ポジティブな話をすることも心がけています。また、スタッフのモチベーション上げる取り組みもしています。例えば、ボーナスの支給前にスタッフのアピールタイムを設けています。自分がどんなことを頑張ったかをアピールしてもらい、それによって減点方式ではなく加点方式でボーナスの査定をするようなシステムにしています。
お忙しそうですが、休みは取れていますか?
以前は日曜のみ休診で週6日診察をしていましたが、体力的なことも考え、数年前から木曜も休診日にしました。10年以上前にぎっくり腰になり、運動しなきゃと真剣に思い、ゴルフを始めたので、休日は仲間と一緒にゴルフに行くことが多いですね。基本的に飽き性なのですが、ゴルフは仲間がいるから続いています。皆でビールを飲みながらおしゃべりするのも、続く秘訣かな。定期的に運動して、健康に気を使っていきたいですね。
今後の展望をお聞かせください。

当院の理念は、患者さんに満足して帰っていただくことです。そのためにはどうしたら良いか考え、回遊する動線を作ったり、ウェブ受付システムを導入したり、笑顔やあいさつを欠かさず対応を心がけたりしてきました。大人であっても子どもであっても、患者さんに「来て良かった」「また来よう」と認めてもらうことが必要だと思っています。スタッフにも、笑顔でのあいさつや「お大事に」の声かけに気を配ってもらっています。患者さんの来院のきっかけも、ほとんどの方が「知り合いに聞いて」と答えていて。人に勧めていただけるということは、その理念がある程度実現できているのかなと思っています。これからも、いざというときに駆け込んでもらえる地域のクリニックとして、皆さんが満足のいく医療を提供していきたいです。