中岡 伸悟 院長の独自取材記事
中岡内科クリニック
(奈良市/大和西大寺駅)
最終更新日:2024/10/03

大和西大寺駅からすぐのビルにある「中岡内科クリニック」。内科を中心とした総合的な診療を行うクリニックだ。周辺は電車も通り車も人の流れも多いエリアながら、クリニックには落ち着いた雰囲気が漂う。院長の中岡伸悟先生は、優しく温かい語り口が印象的な先生だ。自身が幼少期に病気で苦しんだ経験から医師をめざし、「今度は私が患者さんに恩返ししたいのです」と医療への熱意をにじませる。そんな中岡院長の姿勢に信頼を寄せ、同クリニックには多くの患者が訪れている。「街の頼れるお医者さん」として地域医療を実践する中岡院長に、患者への思いや理想とする医療についてじっくり聞いた。
(取材日2024年7月18日)
幅広い不調に寄り添い、解決をめざす
中岡院長が医師をめざしたきっかけを教えてください。

私は幼少期に大病にかかったのですが、その時の主治医の先生が素晴らしい方で、私も医師になりたいと強く感じました。大病というのは「ペルテス病」という、股関節の軟骨が減っていく病気です。交通事故がきっかけで発症し、軟骨の自然治癒を待つための治療で3年間の寝たきりを余儀なくされました。家での寝たきり生活はとてもつらい日々でした。窓の外で同年代の子どもたちが遊ぶ声を聞いては、「どうして自分は歩くことさえできないのだろう」と悲しくなったものです。そんな中でも、治療を乗りきることができたのは、周りで支えてくれた人たちのおかげ。主治医の先生や両親、友達の存在に何度も助けられました。治療が終わってギブスを外し、見上げた先生の笑顔が今でも忘れられません。これは強烈な記憶として残っていて、今も目を閉じればその先生の笑顔が思い浮かびます。その経験が私の人となりを形成していますし、医師をめざした原点となりました。
地域のクリニックとして、幅広い診療に対応されていますね。
一般的な病気から専門的な病気まで、幅広く相談に乗ることができると思っています。「何か調子が悪いけど、どこにかかったらいいかわからない」という場合も、気軽に来院してほしいですね。私は研修医時代に多くの診療科をローテーションしましたし、へき地医療に携わる傍ら病理学の研究もしてきました。地域の患者さんが困った時に、最初に相談できる場所として頼ってもらえたらうれしいです。当クリニックではお子さんからご高齢の方まで幅広く受け入れています。実際、お子さんからその親御さん、おじいちゃんおばあちゃんまで、家族ぐるみで患者さんを診させていただくことも多いです。小さな頃に通ってくれていた子が社会人になっても尋ねてきてくれることがあって、喜ばしい限りですね。
漢方治療も取り入れていると伺いました。

漢方の良いところは、西洋医学がカバーできない範囲にも対応できること。私自身が漢方薬を試してみた上で、患者さんにも処方しています。副作用も少ないですし、西洋医学の薬に比べて、漢方薬は一つでさまざまな部分に有用です。最近ではがん治療と併用する分野で期待されていますね。西洋医学との組み合わせで治療の幅が広がりますし、今では医療で本当に欠かせない存在になっていると思います。さまざまな症状に対応できるので、これからも、オーダーメイドで漢方治療を続けていきたいです。
患者の信頼に応えることが真の医療
力を入れている治療について教えてください。

私は、専門分野に特化するのではなく、「目の前の患者さんのお役に立ちたい」という思いで診療を続けてきました。病理学で学位を取得しているので、珍しい病気の診断にもある程度対応できることが強みです。より専門的な医療が必要なケースでは、私が実際にお会いして信頼できると思った先生を紹介しています。時には紹介先の医療機関と患者さんをつなぐ相談窓口になることも。手術を怖がる患者さんにじっくりと時間をかけてお話しすると、患者さんも勇気づけられて手術を受けてくれることが多いです。そして退院後明るい笑顔を見せてくれると冥利に尽きますね。患者さんとの信頼関係をつくって、信頼して身を委ねていただけるような関係が理想です。そしてその信頼に応えることが、真の医療ではないでしょうか。
診療で気をつけていることは何でしょうか。
お話をじっくり聞いて、少しでも患者さんの心を軽くできればと思っています。かっこいいアドバイスはできないのですが、お話を聞くだけでもすっきりした表情で診療室を出て行かれる方もいらっしゃいます。心のわだかまりが解けることは、治療を一歩進めたようなもの。体と心は密接に関係しているので、内科では心も診る必要があると思います。時折時間をかけすぎて、待ち時間が長くなってしまうのが目下の悩みです。外来終了後も患者さんのカルテを眺めながらメモをしたりしていると、毎日夜遅くになってしまうんですよね。妻に心配されてしまうのですが、それだけひたむきに医療に向き合えるのは、患者さんに元気になっていただきたいから。幼少期に主治医の先生が私にしてくれたことを、今度は私が患者さんにお返ししたいのです。それが私の役割だと思います。
医師として一番うれしい瞬間はどんな時でしょう。

治療後患者さんが見せてくれる笑顔と、お子さんが「私も医師や看護師をめざしたい」と言ってくれることがうれしいです。例えば、へき地勤務時代、交通事故で顔に傷を負って運び込まれてきた20代の女性の手術を担当した時のこと。傷が残りませんようにと祈るような気持ちで、3時間かかって縫合手術を行いました。後日、その患者さんから笑顔の写真が送られてきた時はこみ上げるものがありました。私が担った医療で誰かが笑顔になってくれる。私の姿を見てまた誰かが医師をめざしてくれる。こんなにうれしいことはないと思います。
患者に慕われ後輩の手本になるような医師をめざして
研修医時代のことを教えてください。

2年間の研修では、その後にへき地への配属が決まっていたため、指導してくださる先生も私たち研修医も必死だったと思います。幅広い診療科をローテーションするのですが、研修の間は奈良県立奈良病院内の医師住宅と病院の間を往復する日々でした。日曜に電話が鳴って、緊急手術の手伝いに行くこともしばしば。でも、そんな大変だった経験が開業した今でも役に立っていると思います。普段厳しい先生も、時間的余裕がある日曜日は指導も優しく丁寧になり、手術の時には手首の角度まで丁寧に教えていただき、本当にありがたかったです。へき地の医療機関で勤務中に病理学で学位を取得したのも、指導していただいた先生のアドバイスでした。私の出身大学では、当時は博士号を取る人は少なかったのですが、医療知識や技術の幅も広がりましたし、その先生には素晴らしい道を示していただいたと感謝しています。
医師としてどんな姿をめざされていますか。
患者さんから慕われて、信頼されるような医師でありたいです。研修医時代に、脳外科の外来前で夜になっても待っている男性を見かけました。その患者さんにわけを尋ねたところ、「信頼している先生がいるんですよ。その先生でないと駄目なんです。いろいろな話を聞いてくれるその先生は、私にとって大事な先生なんです」とおっしゃいました。その言葉を聞いて、胸が熱くなるとともに、自分の将来の医師像が見えた瞬間でした。その先生のように患者さんとの信頼関係をつくるには、患者さんと丁寧に向き合うことが大切です。いろいろな患者さんを診て、同じような方に出会った時に初めて適切な診断ができると私は考えます。診療経験が増えるほどお役に立てる患者さんも増える、それが臨床医です。できるだけ多くの患者さんに手を差し伸べるには、自分の時間を全部使う。それくらいの覚悟がないと、医師は務まらないと私は思うのです。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

家族ぐるみで来られて、親しみやすい地域のクリニックでありたいと思います。中岡内科クリニックに来られた方が「今、中岡さんに来てるんだ」とご家族にも伝えられるような、ほっとできる空間が理想です。私が幼少期に素晴らしいドクターに出会えたように、今度は、私が誰かにとっての目標になれるように研鑽を続けます。患者さんが笑顔を見せてくれる瞬間が、私は何よりも好きです。これからも患者さんが困った時に相談できる地域医療の相談窓口として、役割を果たしていきます。少しでも不調があれば、気軽に当クリニックにお越しください。