北浜 直 院長の独自取材記事
北浜こどもクリニック
(川崎市高津区/溝の口駅)
最終更新日:2025/07/16

東急田園都市線溝の口駅・梶が谷駅から徒歩10分弱の医療ビルにある「北浜こどもクリニック」。院内はカラフルな家具に囲まれ、熱帯魚の泳ぐ水槽や星空の写真、コインゲーム機などが点在し、まるで子育てサロンに来たような明るい空間が広がる。北浜直(きたはま・ただし)院長は、クリニックのコンセプトとして「子どもに誠実な医療」「母親へのケア」「エンターテインメント性」の3つを掲げ、「どんな些細な相談も大歓迎です」と笑顔を見せる。3人の子どもの父親でもあり、医師と親、両方の視点で育児相談にも応じる。自身の趣味である天体観測を地域の子どもたちとともに行うなど独自の取り組みも実践するパワーあふれる北浜院長に、診療の特徴や今後の展望などを聞いた。
(取材日2025年3月26日)
「クリニックは楽しい場所」と思ってほしい
院内全体が「お子さんが快適に過ごせる空間」となっています。クリニックのコンセプトを教えてください。

当院は、「子どもに誠実な医療」「母親へのケア」「エンターテインメント性」の3つをコンセプトに掲げています。「子どものため」を第一に、負担がかかる検査や投薬を行わず、丁寧な説明を心がけることで、お子さんにとって安心できるような医療の提供をめざしています。また、お母さんのケアにも力を入れ、健康診断や育児相談、美容相談など、お母さんのニーズにも幅広く対応しています。さらに、クリニック全体をお子さんたちに人気のキャラクターを使って装飾したり、水槽を設置したりと、診察に来たお子さんが退屈せずに楽しめる空間づくりに徹底的にこだわっています。スタッフ全員でアイデアを出し合い、温かみのある空間で、お子さんとお母さんの心も元気にする、そんなクリニックをめざしています。
キッズスペースにはゲーム機もありますね。
おもちゃや絵本などが置いてあるクリニックは多いと思うのですが、当院はとことんエンターテインメント性に振り切って、ゲーム機まで置きました(笑)。ゲーム機といってもテレビゲームのようなものではなく、昔ながらのコインゲームです。見つけた時は壊れかけの状態だったのですが、自分で修理して使えるようにしました。お子さんに「クリニックは楽しい場所」と思ってほしい、この一心で、工夫を凝らしています。また、エンターテインメントからは少し離れますが、僕の趣味である天体観測を地域の子どもたちとともに楽しみたいと、毎年クリニックで天体観測会を開催しています。この天体観測会は、毎回約100人もの参加者が集まる人気イベントで、普段、望遠鏡で星を見る機会が少ないお子さんたちにとって、貴重な体験となっています。お子さんの病気を治療するだけでなく、心も豊かにする、そんな場所をめざしています。
2010年の開業以来、近隣だけでなく遠方からも患者さんが訪れるそうですね。

そうですね。お子さんのアレルギーに悩む全国の保護者の方が、ホームページやブログなどで当院の取り組みを知り、来院くださっています。一番遠方ですと沖縄ですね。当院では、開業当初からアレルギー治療に力を入れており、特にアトピー性皮膚炎の治療においては、0歳から成人まで患者さんの年齢や症状の変化に合わせ、多角的なアプローチを行っています。アトピー性皮膚炎の治療において、近年注目されているのが紫外線療法と注射薬です。紫外線療法は、皮膚の炎症を抑え回復を早めることを目的に皮膚へ紫外線を照射する治療法。一方、注射薬は、近年登場した新しいタイプの薬剤です。これらの治療法と従来の塗り薬やスキンケア指導を併用し、患者さんに即した治療を提供しています。
アトピー性皮膚炎と夜尿症の治療に注力
アトピー性皮膚炎の治療で大切にしていることを教えてください。

これも開業当初から行っていることですが、当院では0歳の赤ちゃんの頃から、しっかりしたスキンケアを指導しています。乳児湿疹のうちから早期に適切な治療や指導を行うことで、アトピー性皮膚炎への進展を予防することをめざしています。単に塗り薬を処方するだけでなく、スキンケアの指導を丁寧に行った上で保湿剤などの薬を処方し、塗り方などについても詳しく説明しています。アレルギーの治療は長期にわたって通院してもらうケースが多いので、遠方の方には必要に応じてオンライン診療で対応するなど、治療を継続しやすいアプローチも心がけています。
他に力を入れている診療はありますか?
当院では、2018年頃から夜尿症の治療を始めました。きっかけは、夜尿症は小児科でよく受ける相談であるにもかかわらず、従来の「いずれ治る」といった曖昧な対応をされて、治らずに困っている患者さんが多く、専門医療機関への紹介も数ヵ月待ちという状況だったためです。医療が進歩し夜尿症の治療法が確立され、開業医でも対応可能になったことから、皆さんのお力になれるよう自ら学び、治療に貢献することを決意しました。夜尿症は、不登校や発達、育児など、多岐にわたる問題と関連していることがあります。当院ではお子さんや保護者の方と対話をしながら、これらを含めた総合的なサポートを提供しています。
診療上、心がけていらっしゃることは?

「子どものため」を一番に考えることでしょうか。当院では子どもに負担がかかる不必要な検査や治療は行いません。また、お子さんの風邪にむやみに抗菌薬(抗生物質)を処方することもいたしません。子どもの風邪は9割がウイルス感染であり、抗菌薬では治せないどころか、体内の良い菌まで殺してしまったり、薬に強い耐性菌を育ててしまったりとデメリットが大きいからです。開院から一貫してこの方針ですから、多くの方にはご理解いただいています。ご理解を得るために、親御さんに抗菌薬のデメリットを一から説明して差し上げることもあります。
母親からの育児相談にも対応
育児相談にはどのように対応していますか?

お子さんの健康状態はもちろん、学業や不登校、夫婦関係など多岐にわたる相談に応じています。特に、近年増加傾向にある不登校の相談には力を入れており、僕自身の考え方や子育て経験に基づいたアドバイスを提供しています。育児相談は通常の診療時間内に行い、相談料は特に設定していません。相談内容によっては診療時間が長引くこともあります。そのような場合は、診療時間外に時間を設け、じっくり話を聞くようにしています。「こんなことで小児科に行ってもいいのかしら?」と悩まれるお母さんも多くいらっしゃいます。そんなとき「いつでも、どんな症状でも来てください」と門戸を広げている拠点があるだけで、気も楽になりますし、子育ても少し楽になるのではないでしょうか。医療の専門家としてだけでなく、人生経験豊富な相談相手として、保護者の方のさまざまな悩みに寄り添い、サポートしています。
先生がそこまで向き合われるルーツは何でしょうか?
少しつらい話になってしまいますが、僕たち夫婦の長男は未熟児で誕生して、すぐに亡くなりました。小児科医として毎日大勢の未熟児を助けてきたのに、どうしてわが子を救えなかったのだろう……。当時はそんな思いにさいなまれ、自分の非力さを感じる日々でした。でも、その後3人の子どもが元気に生まれてきてくれ、今では3児の父親です。2度目の出産にあたって、妻が感じる不安は相当なものだったと思います。また同じようなことになってしまうんじゃないかと。そんな妻のそばにいて、妊婦さんの抱える不安の大きさに改めて気づかされました。そうした経験から、悩みを抱える患者さんの気持ちにもっと寄り添えるようになったと感じています。最初の子、妻、そして元気に育っているわが子たち。家族から教えてもらうことはたくさんありますね。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

日々の睡眠時間は約3時間。診療の合間に勉強し、先進の医療情報を取り入れています。その昔、救急やNICU(新生児集中治療室)にいたので、短時間睡眠でも平気なんですよ。また、3人の子どもを育てている経験が、診療にとても役立っています。特に、思春期のお子さんや中学校受験の相談に関しては、自分の経験に基づいたリアルなアドバイスができるので、親御さんたちも安心して相談してくれるとうれしいです。「立派な親になってこそ、初めて小児科医」と恩師から言われたことがありますが、本当にそのとおりだと思います。これからも新しい医療を学び続けながら、親御さんの気持ちに寄り添った、温かい医療を提供していきたいと思います。どうぞお気軽にお越しください。