桐山 邦徳 院長の独自取材記事
桐山医院
(橿原市/橿原神宮前駅)
最終更新日:2024/07/29

橿原神宮前駅の東出口から、南に歩いて7分。国道169号沿いに「桐山医院」はある。この地域で生まれ育った桐山邦徳院長が、「地域の皆さんのお役に立ちたい」と2005年に開業した。特に力を入れて取り組むのは、生活習慣病の予防と治療。大学病院などで循環器疾患に対応してきた桐山院長は、生活習慣を改善することで病気を根本から防ぐことの重要性に気がついたという。診察では、丁寧に情報を提供して患者の理解を得ながら治療を進めているという。豊富な知識がありながらも気さくで話しやすい雰囲気の桐山院長に、生活習慣病の現状や予防の重要性、「楽しく続ける」生活改善のコツまで、たっぷり話を聞いた。
(取材日2024年6月26日)
生活習慣病の治療に注力。重症化する前の健診が鍵
生活習慣病の予防と治療に力を入れていらっしゃいますね。まずは、現状を教えてください。

当院は、奈良県で2番目に人口が多い橿原市にあります。ベッドタウン化しているため、移住して来られる方や若い世代も多いのですが、やはりご高齢の方もたくさんお住まいの地域です。新型コロナウイルス感染症の流行による受診控えや、市民向けの公開講座が開けていなかったことなどで、生活習慣病がやや重症化してきているといわれています。それだけでなく、3大合併症と呼ばれる腎症や網膜症、神経障害が進んだ状態で医療機関の門をたたく方も多いようです。当院にも症状が進んでから来院される方も多くいらっしゃいますね。退職されて会社の健康診断がなくなる60~70代を中心に、そういった状況が見られますね。
生活習慣病の患者さんに、どのように対応していらっしゃいますか。
生活習慣病の改善をめざすには、患者さんの協力が欠かせません。そのため、最近は情報提供に力を入れています。生活習慣病について解説したパンフレットの他、個々の患者さんに合わせて作成した療養計画書をお渡ししています。計画書には、現状を表す数値と目標値を示して、糖分や塩分をコントロールする必要性をご説明したり、薬を服用していただく理由をご理解いただいたりするために活用しています。それまで漠然とお薬を飲んでいた方には、納得して治療に取り組んでいただけるようになったという手応えを感じています。
生活習慣病の予防と早期発見の意義を、どのように考えていますか?

薬を飲まずとも、運動や食事などによって生活習慣病の改善が見込めるケースがあることが、予防と早期発見の意義だと思います。勤務医時代、20代の患者さんが「喉が渇く」と訴えて来院されました。診てみると、血糖値が高く初期の糖尿病だったんですね。まずはペットボトルのジュースやお菓子をやめてみよう、と指導しました。早期に見つけられたので、薬を飲まない治療方法を選ぶことができたんですね。しかし、進行すると薬物療法から抜け出すのがなかなか難しくなりますし、さらに1つの病気の治療で終わらない可能性が出てきます。生活習慣病は合併症を引き起こす恐れがあるためです。そのため、やはり定期的に健康診断を受け、早期に医療機関を受診していただくことが重要だと考えています。
献血やウインドーショッピングで気軽に確認・改善を
なぜ生活習慣病の治療に取り組まれるようになったのでしょうか。

もともと私は、不整脈や高血圧症、腎疾患など循環器疾患が専門です。これまでに勤めてきた奈良県立医科大学や平井病院では、カテーテルを用いた狭心症の治療や、不整脈のアブレーション治療など、心臓に関係する治療を中心に担ってきました。特に虚血性心疾患や心筋梗塞については、糖尿病や高血圧症、脂質異常症のある方がどうしても動脈硬化を起こしやすく、治療をしても再発することがどうしても多いんですね。そういった患者さんに対応しているうちに、根本的に改善をしていくことが必要だと思うようになりました。よって、2005年にここを開業して以来、地域のかかりつけ医として、生活習慣病の治療に力を入れて取り組んでいます。
この20年での変化と、患者さんに呼びかけていることを教えてください。
飽食の時代が進み、糖尿病の患者さんが多いなと感じます。この病気はすべての血管に影響するため、他の疾患の患者さんと比べても全体的に血管が細くなっています。特に日本人は糖尿病になりやすいともいわれていますので、積極的に介入していく必要があるなと考えています。患者さんに呼びかけていることとしては、まずは間食を減らすこと、そして飲み物をジュースから水に変えること。あとは、丼や麺類は、かき込んで食べられる分速く食べ過ぎてしまいますし、塩分やカロリーも高いので、避けたほうがいいでしょう。肉や魚などのメインに野菜がついて、白米があるような定食を選ぶのが良いと思います。これはコンビニでお弁当を買う時にも心がけてください。その上で階段を使うとか、友達と一緒に歩いてみるとか、楽しみながら続けられるような運動をしてみるのもお勧めです。ウインドーショッピングも結構歩くので推奨していますよ。
受診の目安はありますか?

会社の健康診断を受けていない自営業の方や、退職後の方で、特に気になる症状がない場合は献血に行くのをお勧めしています。よく街中でも呼びかけていますよね。あれを受ければ、血液検査の結果をもらえるし、誰かの役にも立ちます。人のためにもなりながらチェックができるって、すごく良いと思いませんか? そして、40歳を過ぎると特定健康診査もありますから、そういったものを忘れずに受けていただけたらと思います。その他に、家族が使っている家庭用の血圧計を使ってみるのも良いですね。最近では図書館で利用できる場合もありますよ。その他、多飲・多尿など気になることが出てきたら、早めに受診してください。
祖父の死を機に医療の道へ 母校で命の授業も
先生はそもそもなぜ、医師を志したのですか。

もともとは宇宙が好きな少年で、医師の道は考えていませんでした。ですが、高校2年生の時に親族が亡くなりました。とても元気で、健康づくりのために毎日歩いている人でした。しかしある時急に病気で亡くなってしまったんです。一瞬で、人の死は訪れるということを目の当たりにして衝撃を受けました。例えば、高血圧症を患う人が寒い夜に外へ歩きに出たら血圧が上がって危ない。冬の入浴時は気をつけなければならないのと同じですね。健康には知識も重要です。地域に医療知識を広めることで、祖父のようにある日突然亡くなってしまうことを予防し、地域の人の力になりたい、病気の治療をしていきたい。そう思って医療の道に進みました。
そして、ご自身の地元で開業されたのですね。地域での取り組みを教えてください。
母校の小学校で、健康診断に加えて「命の授業」を年に1回担当しています。おなかの中で赤ちゃんが育って生まれるまでの過程を伝えながら、命の大切さを一緒に考えています。いじめの問題もなくなりませんから、道徳教育の重要性を感じています。新型コロナウイルス感染症の流行でここ数年は中断していましたが、今年から再開します。楽しみですね。みんな一生懸命、感想文を書いてくれますよ。日々の診療でも、私の祖父や父を知っているという患者さんがいらしてくださいます。地元で開業できた喜び、やりがいを感じていますね。
今後の展望とメッセージをお願いします。

橿原市でも高齢化が進んでいますから、通院できなくなる人も今後増えてくるだろうと見ています。介護施設と連携しながら、往診も進めていく必要があるだろうと考えています。今現在も、長く通ってくださっている患者さんが通院できなくなった場合に、ご自宅へ伺って診療させていただいています。お子さんがいらっしゃれば一緒に来院することも可能ですが、そうではない方はやはりこちらから伺わなければなりません。そういう方への対応を、当院だけでなく社会全体で考えていけたらと思います。そして、生活習慣病の予防と治療は、これからも重点的に続けていくつもりです。定期的に健康診断を受け、生活を改善することができれば、健康増進につながるでしょう。まずは、多くの方に健康診断を受けていただけたらなと願っています。