三重野 雅 院長の独自取材記事
しろくま歯科
(札幌市東区/栄町駅)
最終更新日:2024/08/28

ユニークな名称が印象的な「しろくま歯科」は、2005年の開業以来、0歳児から高齢者まで、実に幅広い世代の患者が来院する地域密着型の歯科医院だ。院長を務める三重野雅(みえの・ただし)先生は、青年海外協力隊で赤道直下の島でのボランティア経験も持つ歯科医師。治療中心の歯科医療に疑問を感じ、予防歯科を広く普及させるため開業に踏み切ったという。「すべての人が、自分の歯で一生おいしく食事をできるようにする。それが歯科医師の存在理由」。穏やかな語り口の中に、熱く揺るぎない想いを込める三重野院長に、クリニックの診療や予防歯科の重要性をはじめ、数々のボランティア経験についても大いに語ってもらった。
(取材日2021年2月17日)
叔父に憧れ歯科医師の道へ
とてもユニークなクリニック名ですね。

クリニックを開業するにあたり、老若男女、誰にとっても親しみやすく、覚えやすく、かつインパクトのある名称にしたいと思っていたんです。そこで考えを巡らせた結果、「しろくま」という名称を思いついたんです。特段、私自身が「しろくま」が好きなわけではないのですが(笑)。ただ、その名称のおかげもあってか、開業から15年以上がたち、地域の皆さまに密着したクリニックに成長できたと自負しています。知らず知らずのうちに、院内に白熊のぬいぐるみも置かれるようになったりして。いつの間にか、私も「しろくま」が好きになってきたのかもしれませんね。
歯科医師をめざしたきっかけは何でしょうか。
叔父が歯科医師をしていたんです。子どもの頃、叔父によく治療をしてもらっていました。口腔内のさまざまなトラブルに対応し、それらを解決し、患者さんから感謝される。とてもやりがいのある仕事だと感じ、叔父への憧れが募って徐々に自分自身も歯科医師になりたいと思うようになったんです。小学校の卒業文集にも、将来の夢は「歯医者さん」と書いてましたね。その後、高校・大学と部活動で汗を流しながら勉学に励み、念願の歯科医師になることができました。卒業後は、出身大学の付属病院の口腔外科第二講座(現・顎顔面口腔外科学分野)に入局。骨折、腫瘍、外科矯正、インプラント(人工歯根)など、多岐にわたる症例を経験させていただきました。
勤務医から開業に至った経緯を教えてください。

大学病院での勤務を経て、複数の歯科医院で歯科医師として働いてきたのですが、経験を重ねるほどに、治療中心の歯科医療に違和感を覚えるようになったんです。自分の歯で一生おいしく食事をするためにも、予防歯科こそが大切だという結論に至り、その想いに則った診療を実践するために、開業することを決意しました。ただ時折、「この場所を開業の地に選んだ理由」を聞かれることもあるのですが、すみません、特別な動機は何一つありません。不動産屋さんに勧められたからです(笑)。でも今となっては、この街で開業して本当に良かったと思っています。患者さんの年齢層も職業も実に多彩。さまざまなバックボーンを持つ方々とのふれあいを通じて、多くの刺激と学びの機会をいただいています。
「人の役に立ちたい」という想いがすべての原点
海外でのボランティア経験もあるとお聞きしています。

ええ。かねてより海外で働いてみたいという気持ちがあったのですが、ある時、JICA(国際協力機構)の青年海外協力隊で開発途上国などに対する援助・協力するための活動員が募集されており、迷わず応募しました。その後、ミクロネシア連邦のコスラエ島に赴任。赤道直下、人口7000人のとても小さな島でホームステイをしながら、コスラエ病院に2年間勤務しスタッフの指導などに明け暮れました。そこで経験したことはとても一言で表すことなどできませんし、私の人生においてかけがえのない財産になっていると思います。ただ2年間の活動を終えて帰国した際に、携帯電話が急速に普及していることに驚愕。その時の私は、まさに浦島太郎状態でしたね(笑)。
今もボランティア活動に熱心に取り組まれているそうですね。
献血は、およそ2週間に一回の頻度で行っています。先日、無事に通算130回目の献血を終えました(笑)。また、ヘアドネーションの活動にも参加しています。ヘアドネーションとは、病気などにより髪を失った方々に、医療用かつらの材料として、髪の毛を寄付すること。現在の風貌からは想像できないかもしれませんが、かつては2年半、髪を伸ばし続けたこともあったんですよ。さらに、盲導犬候補の子犬を約10ヵ月間育てるボランティアのパピーウォーカーに参加したこともあります。いろいろな場所に一緒に出かけ、人間と暮らす喜びを経験させることが主な目的で、10ヵ月たって別れる時はもちろん悲しくなりますが、これから目の不自由な方のために活躍してほしいという期待のほうが大きいです。人の役に立ちたいという気持ちは、不思議なほど、絶えることがありません。この想いがなくならない限り、これからもボランティアに携わっていきたいと思います。
ボランティア精神が日々の診療で生かされる場面はありますか?

患者さんの立場に立った診療を提供できるよう努めています。これは診療やボランティアに限ったことではなく、相手の立場に立つということは、とても大切なことだと思うんです。治療をして歯の痛みを払拭することは患者さんのためになりますが、本当の意味では患者さんの役に立っていない。患者さんの意識が変わらないまま、治療に次ぐ治療を繰り返していけば、いずれ歯を失うことになりかねないからです。歯を守るための治療が、歯を失う結果を招くのはあまりにも皮肉。ですから、そもそも治療をしなくていい状態を長きにわたって保つ、つまり予防歯科を重視することが何より患者さんのためになると考えたんです。当院が予防歯科に重点を置いた診療を提供しているのも、そうした私の考えに基づいています。
めざすは患者の意識変化と予防歯科の普及
診療する上でこだわっていることは何でしょう。

極力痛みの少ない治療を提供することを心がけています。誰だって痛いのは嫌ですからね。また、患者さんに歯に関する知識を持っていただく、言葉を換えればデンタルIQを高めるためのコミュニケーションも大切にしています。歯の健康にとっての最大の敵は無関心。関心がなければ、自分の歯の現状を知ろうとする意欲も、歯をより良くしていこうという希望も生まれません。ですから地道に愚直に、自分の歯に関心を持ってもらうための努力と工夫を重ね、患者さん自身の意識変革を促す。それが、自分の歯で一生おいしく食事をするためのベストな方法だと思っています。また当院では、患者さん一人ひとりの歯の状態をまとめた「お口の検査表」というものをご用意しています。これまでの治療の経緯や現在の状態などを詳細に記録したもので、歯の健康づくりのために多くの患者さんに役立ててほしいと思っています。
チーム医療も重視されているそうですね。
患者さんと真摯に向き合おうとすればするほど、チーム全員の力を結集させる必要があります。歯科医師、歯科衛生士、歯科助手。お互いに補完し合いながら、抜け目なく患者さんをサポートしていくイメージです。この点については、当院の掲げるクレド10ヵ条にも、しっかり書かせていただいています。また当院では予防のスペシャリストである歯科衛生士による予防処置を実践。歯ブラシの使い方の指導も意欲的に行っています。こうした取り組みが功を奏してか、メンテナンスやクリーニングのため、定期的に当院を訪れる患者さんは増えてきており、患者さんの意識が少しずつ、しかし確実に変化してきていることを実感しています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

ぜひ、歯が痛くなる前に来ていただきたいですね。歯科医院は、歯が痛くなってから行く場所ではなく、特に異常がなくても定期的に通う場所だと思っていただきたいんです。それが常識だと一人でも多くの患者さんに思ってもらえるよう、予防歯科の普及に努めていきたいと考えています。また当院の特徴の一つに、開業当初から通ってくださっている患者さんが多いことが挙げられます。子どもの頃から来ていた患者さんが立派に成長していくのを見るのは楽しみであり喜びであり、何より虫歯なく過ごせていることがうれしく、誇らしいです。これからも予防歯科に重点を置いた歯科医療のレベルアップに努め、すべての患者さんに「変わりがなくて良かったですね」とお話しできる診療を提供していきたいです。