仁杉 直子 理事長の独自取材記事
医療法人仁愛会 ミューズ皮膚科ペインクリニック
(さいたま市南区/武蔵浦和駅)
最終更新日:2025/10/15

JR武蔵野線・武蔵浦和駅から徒歩5分、さまざまな科が集まる医療モールの1階にある「医療法人仁愛会ミューズ皮膚科ペインクリニック」。一般皮膚科、美容皮膚科、形成外科など幅広い診療を行っている。2006年に同クリニックを開業した仁杉(ひとすぎ)直子理事長は、麻酔科医としてキャリアをスタートさせた痛みのエキスパート。痛みに寄り添う皮膚科医として、多くの患者の肌の悩みに向き合ってきた。そんな理事長に、20周年の節目を控える現在の心境や注力していること、今後の展望などを聞いた。
(取材日2025年8月25日)
地域のホームドクターとして邁進した20年
開業からまもなく20年。当時の苦労などはありましたか?

もともとは麻酔科医ですが、皮膚科にも興味があり、開業前に勤務していた戸田中央総合病院では皮膚科医としても診療にあたっていました。開業当時の武蔵浦和は再開発が始まり、人が徐々に流入してきた過渡期。一方で駅から少し離れると長年お住まいの方も多く、開業時から多様な患者さまの構成でした。また、当時は医療モールという施設は目新しいものでした。特にここは約1300坪の敷地に13の科が入る大規模モールです。経験を積んだ専門家が一つの施設に集まっていることに「総合病院のような頼もしさ」を感じていただけたようで、開院当日は多くの患者さんにお越しいただきました。ですから、新たに街に根づく苦労というよりは、日々切磋琢磨しながら今の形ができあがった印象ですね。
近年感じた変化や注力されていることはありますか?
外国人の患者さんが増えました。その傾向は10年ほど前から感じていて、当クリニックでも対応をしていました。ただ、患者さんが話す言語もさまざまで、英語圏の患者さんにはアメリカに滞在した経験もある私が対応していますが、その他の言語が堪能というわけではありません。そこで、最近は中国語が話せる看護師を採用しました。言語によっては翻訳アプリを使用することもありますね。さまざまなバックボーンを持った外国人の患者さんがいらっしゃいますが、お一人お一人に寄り添った対応をしています。
この20年で感じたやりがいなどを教えてください。

初めて来院した時に小さかった子が、大人になってからも当クリニックに来てくれることがあります。子どもの頃は毎週のように通っていて、大人になって久しぶりに会い、「こんなにしっかりした大人になったんだ」と感じる時は大変うれしいですね。親子何代にもわたってご利用いただいている方々にお会いすると、「この街で私は真のホームドクターになれたんだな」と実感します。ありとあらゆる悩みを打ち明けていただき、それに応えていけるように日々医学に関して研鑽を積んできた結果ですので、地元の方々と長くお付き合いできることは大きなやりがいですね。
先進的な技術を導入し、体のケアから患者に寄り添う
各診療科目について、方針や体制などをお聞かせください。

一般皮膚科はこの10年で治療方法が大きく変わりました。アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬など、かつては治りにくいと言われていた疾患も、現在は治療技術の進歩によって改善が見込めるようになりました。それに伴い、高額療養費制度を利用される方も増えています。ペインクリニックについては、皮膚科と関わりの深い帯状疱疹に伴う痛みを訴える患者さんも受け入れています。ただし、現在は保険診療に加えて自由診療も提案できる体制を整えています。また、医薬品もいろいろありますが、痛みの緩和が期待できる一方で意識がぼんやりしてしまう場合もあります。これはご高齢の方に多い傾向です。「アクティブに日常を楽しんでいただきつつ、痛みを可能な限り緩和する」が私のモットーですので、それを念頭に置き、患者さんの予算に応じた適切な診療をご案内しています。
形成外科も診療していることが特徴的です。
現在、形成外科には4人の非常勤医師が在籍しています。いずれも豊富な経験と高い技術を持った医師ですので、患者さんにも安心していただいています。患者さんが訴える症状としては眼瞼下垂や眼窩脂肪による目の下のたるみは非常に多いですね。また、ほくろやイボでお悩みの患者さんも多いため、気になる病変はしっかり取り除く診療スタンスです。私はもともと麻酔科医ですので、当クリニックにも吸入麻酔機を導入しています。ちょっとしたコンプレックスを抱えている方でも、ここで麻酔をかけた上で一定の治療を受けていただけます。簡単な治療を日帰りで行えるという意味で「日帰り手術」という表現をしています。
それぞれの診療科で多い患者さん、あるいはよく見られる肌のトラブルはありますか?

涼しさや暖かさを感じられる素材の服が増えていますが、肌への摩擦を助長してしまうことがあり、冬に肌の乾燥がひどくなったと訴える患者さんは多いですね。また、女性の更年期障害への対応にも注力しています。体の内側からケアをしないと肌以外にも影響が出るとされています。特に20~40代以降は、膣の状態が変わって違和感を訴える女性の患者さんは増えています。さらに男女問わず熟年層の尿漏れによる肌トラブルも最近よく耳にしますし、若い方でも産後の尿漏れは少なくありません。塗り薬もありますが、体そのものをケアすることで肌のトラブルを改善する必要があると考えており、そのための治療やケアを導入しています。フェミニンの「フェミ」にテクノロジーの「テック」をかけ合わせた「フェムテック」という言葉があるのですが、多くのご相談をいただく中でこの言葉を大切にしています。
スタッフさんの存在も大きいのでは?
開業から20年が経ち、当時40歳で入職された方が60歳で定年を迎える時期になりました。ここ数年若手に入れ替わりましたが、自分の子どものような年代のスタッフと働くのは楽しいです。長く勤めてくださった方が定年退職されるのは寂しいですが、新しい風が入ることでクリニックの雰囲気も新しくなりました。現在は私を含め医師3人が50代で全員女性です。そこに20代から30代の若い世代が加わり、医師とコメディカルのバランスが非常に良いと感じています。医師たちが仕事や人生を教え、スタッフが成長で応えてくれる。お互い持ちつ持たれつで良い関係を築けています。
皮膚疾患の根本にある体の健康から患者をサポート
先生がお考えになる皮膚科の上手な頼り方はありますか?

SNSで自分の顔を見る機会が増え、肌について深く考える方が増えていますが、どこに行けば良いのかわからないと感じている方も多い印象です。価格を含めて情報に惑わされることもあり、結局遠方受診をしたり、治療をお受けにならなかったという方も少なくないようです。情報の取捨選択は難しいですが、私のように地道にキャリアを積み、長年地域に根差しながら知識と技術を身につけた専門家に頼ることが、実は近道であるという場合もあります。そうした点を信頼して、気軽に相談に来ていただけたらと思います。
今後の展望を教えてください。
より人間味のある診察というか、患者さんの人となりを理解した上で、栄養管理や予防医学に携わりたいと思っています。実際、隣の整形外科クリニックと連携し、姿勢の改善や筋肉を鍛えるための体幹トレーニングについて以前から指導しています。また新たな取り組みとして、水中での運動を提案し、本来体に備わっている機能を使ってもらうことで、予防や身体機能の向上につながることにも取り組んでいます。関節をやわらかくするような運動を陸上でするのは、特に高齢の方は難しいのですが、水の浮力を使って体を動かして関節をやわらかくすることで循環を良くし、ひいては皮膚の状態の改善につなげたい狙いがあります。そういった体の根本的な改善もめざすことで、患者さんに貢献したいですね。
痛みの緩和ももちろん大切ですが、患者さんの日常的な健康をケアする方針に変わりつつあるのですね。

診療をおざなりにしているわけではありませんが、保険診療だけでは痛みを治しきることはめざせないということをこの10年で感じ、自分の健康は毎日の生活の中でコツコツと培うものだと思ったんです。高齢化が進み、ニーズも変わる中、10年20年という長期的な目線で日本人の食の大切さや、自分で健康を意識しながら皮膚の病気を予防していく。それを啓発する立場の医師になったんだなと思っています。先ほどお話しした「フェムテック」という考え方も組み合わせながら、保険診療も含めて先進的なのものを取り入れ、地域の皆さんに愛されるクリニックであり続けたいと思っています。
自由診療費用の目安
自由診療とはほくろ(自由診療の場合)/5500円~