井田 憲蔵 院長、竹林 明枝 先生の独自取材記事
IDAクリニック
(京都市山科区/山科駅)
最終更新日:2025/07/15

山科駅から程近い商業ビルの6階に居を構える「IDAクリニック」は、思春期前の小さな子どもから高齢者まで幅広い女性の悩みに応えるクリニックだ。前院長の急逝から3日後には診療に立っていたという井田憲蔵院長。また、前院長を尊敬し現在の診療スタイルにも大きな感銘を受けたという竹林明枝先生が新たに仲間に加わり、生理痛などの一般診療から専門性の高い不妊治療など、さまざまな女性のライフステージに寄り添った診療を行っている。穏やかな口調ながら熱い思いを持つ2人の医師に、こだわりや注力する診療について聞いた。
(取材日2025年6月20日)
急逝した父と新たな仲間とのつながり
まずは、これまでのご経歴や継承の経緯をお聞かせください。

【井田院長】実は初めから医師になることも産婦人科に進むことも考えておらず、東京大学の薬学部を卒業後、もう一度医学部に入り直したんです。卒業後は栃木県の足利赤十字病院で初期臨床研修をスタート。各診療科を回っている間に麻酔科の先生から勧められたのをきっかけに、産婦人科の医師として歩むことを決めました。10年ほど勤務した後、当院の継承を視野に、父と親交の深かった神戸の英ウィメンズクリニックで生殖医療を学んでいました。そんな中、父が突然亡くなってしまって……。急な事態に戸惑いましたが、英ウィメンズクリニックの理事長に背中を押していただき、3日後にはここで診療に立っていました。
竹林先生は2025年の5月よりこちらで診療されていますね。
【竹林先生】私は滋賀医科大学医学部附属病院を中心に、20年ほど生殖医療を軸に経験を積んできました。前院長は人類遺伝学の専門家で滋賀医科大学病院で月に2回ほど外来の担当もされていました。症例の相談をさせてもらうなどとてもお世話になっていましたし、尊敬する先生だったんです。急逝されたことや井田院長が継承されたこともお聞きしていて。共通の知人の紹介で院長に初めてお会いしたのですが、患者さんファーストで丁寧に真摯に診療されている姿に誠実さを感じました。私自身、患者さんとより向き合う診療をしたいと考えていたときだったので、ここでならフットワーク軽くいろんなことに対応できて、分娩は扱っていませんが、その分落ち着いて診療ができると思い、IDAクリニックで勤務することを決めました。
竹林先生が加わったことで、不妊治療の専門性がより高まったと聞いています。

【井田院長】ええ。当院の不妊治療は、基本的にはオーソドックスな保険診療で行ってきましたが、日本生殖医学会生殖医療専門医であり、不妊治療のエキスパートである竹林先生が来てくれたおかげで、今後、提供できる選択肢の幅を増やせることになりました。従来から取り入れていた診療も含め、不妊の悩みをトータルサポートする体制を整えて、患者さんがより安心して治療に望める環境をつくっていければと思います。
【竹林先生】私なりの視点で気づいたことも少しずつお伝えしながら、不妊治療の選択肢を増やしていければと思っています。また、同じ女性として患者さんの気持ちや体の面で実際に理解できることも多いはず。これまでの経験と知識を生かして、皆さんのお力になれればうれしいですね。
丁寧なカウンセリングでカスタムメイドの不妊治療を
診療で大切にしていることは何ですか?

【井田院長】もちろん不妊治療も大きな軸ですが、生理がつらい方から妊娠を希望される方、出産後また生理が来たら痛みの相談など、女性の幅広いライフステージに対応できることが当院の強みです。さらに思春期よりも前の小さなお子さんが股を打ってしまったときや高齢の方のポリープ切除など、幅広い年齢の方のご相談を受けつけています。大切にしているのは、どんな方も少なからず不安を抱えて来られるので、疑問点をそのままにして帰らせないこと。最後に必ず「ほかに何かありますか」と聞き、すべては解決できなくても解決への道筋を立てるよう心がけています。
【竹林先生】忙しい女性が多いので、平日の昼間に何度も通院することは負担になります。いかに仕事と両立させるか、ライフスタイルや希望に合わせた方法を提案するかなど、患者さんに寄り添った診療を重視しています。
こちらの不妊治療の特徴について教えてください。
【井田院長】お一人お一人にカスタムメイドの医療を提供しているのが特徴の一つかと思います。導入している不妊治療についてはホームページでもご確認いただけますが、当院は人工授精、体外受精、顕微授精といった手法とそのための検査に対応しつつ、漢方処方など東洋医学の観点からも不妊にアプローチしています。こうした選択肢を用意した上で、検査前のカウンセリングを丁寧に行い、ご希望に寄り添った提案につなげているんです。
【竹林先生】検査前のカウンセリングの丁寧さは、入職当初、私も驚いたほどでしたよ。また、生殖医療専門医としての私の知見を生かし、妊娠・出産と切り離せない遺伝の分野を含め、さまざまなご相談に乗れるのも特徴と言えるのではないでしょうか。また、最新の情報も取り入れるよう努力を続けていますので、疑問があればぜひお伝えください。
妊婦さんへの出生前カウンセリングについて詳しくお聞かせください。

【井田院長】これから生まれてくる子が元気かなと心配になるのは当たり前のこと。検査できるなら知りたいというのが、人間の心理でしょう。ただ、いろいろな検査があり、検査をしたからといってわからないこともあります。遺伝に関する専門知識を持つスタッフが時間をかけてカウンセリングを行います。カウンセリングの結果、検査を受けないと選択される方も一定数いらっしゃるんですよ。ちなみに、カウンセリングを担当するスタッフは当院の屋上庭園の管理も担っていて、春にはイチゴやブルーベリー、夏はグリーンのカーテンにもなるゴーヤなど、四季折々の植物を育ててくれています。庭園は誰もがほっとする場所としての一面もあり、そんなスタッフだからこそ気遣いのあるカウンセリングが実施できるのだと信頼を置いています。
つらい経験をシステム構築や啓発につなげる
院長が大切にされている「お守り」があるとお聞きしました。

【井田院長】足利赤十字病院に勤務していた当時、子宮頸がんで亡くなった患者さんからいただいたプレゼントを、いつも胸のポケットに入れています。緩和ケアにも携わっていたので、子宮頸がんで痛ましい亡くなり方をする患者さんを数多く見て、当院に来てからは「かかりつけの患者さまの中から一人も子宮頸がんを出さない」と誓いました。子宮頸がんはワクチンで予防できるものの100%ではないので、定期的な検診で早期発見につなげられるということも周知していきたいところです。
院長の熱意について、竹林先生が驚かれたことがあるそうですね。
【竹林先生】院長が作成した初診のときに必ず聞く「問診セット」の中に、子宮頸がんワクチンの接種有無の欄が設けられているんです。ピルを希望される方や生理痛のご相談などでも必ず聞くようになっていて、漏れのないシステムができています。反対にワクチン接種で来られた方には「生理痛は大丈夫ですか」と聞くなど、あらゆる側面から女性のお悩みをサポートされているんです。院長を慕って来院される患者さんは多く、その信頼の厚さはひしひしと伝わっていますので、普段から気軽に相談できる関係性が大きな病気の予防にもつながるのだろうと感じています。
最後に、今後の展望をお聞かせください。

【井田院長】父から受け継いだ基本的な診療理念は変えず、患者さんのためになるような診療をできればと考えています。不妊治療などの専門性の高い分野も提供しながらも、女性の人生に寄り添う診療を実直に続け、どんな小さなことでも相談できるクリニックでありたいですね。
【竹林先生】生殖医療を軸として長年経験を積んできたので、その知識を発揮したいということ。そして、常に患者さんに寄り添った診療をしたいというのが、私の思いです。院長のデータ管理や診療システムなど、どれを見てもとても丁寧に患者さんと向き合っていることが伝わってくるので、私も見習いながら患者さんとの信頼関係を築いていきたいです。