前沢 忠志 院長の独自取材記事
みのうらレディースクリニック
(鈴鹿市/磯山駅)
最終更新日:2025/04/10

不妊治療を専門としている「みのうらレディースクリニック」は、近鉄名古屋線・磯山駅から徒歩6分ほどの場所にある。2005年に、箕浦博之先生が開業し、これまでたくさんの患者の笑顔に関わってきた。2024年、そんな箕浦先生の長年の実績と思いを引き継ぎ、前沢忠志先生が新たな院長に就任した。前沢院長は、日本生殖医学会生殖医療専門医として長年不妊治療に携わってきたスペシャリストで、三重大学医学部附属病院の高度生殖医療センター開所時からリーダーとして活躍してきた。箕浦先生の診療理念を受け継ぎながら、さらに新しい治療も取り入れ、日々の診療に邁進する前沢院長に、クリニック継承の経緯や、今後の展望などを聞いた。
(取材日2025年3月6日)
大学病院の先鋭的な不妊治療をクリニックで提供
クリニックを継承した経緯を教えてください。

前院長である箕浦先生との出会いは、10年ほど前です。2014年に三重大学医学部附属病院高度生殖医療センターが開設される時、私が同センターのリーダーを任されました。ゼロから同センターをつくり上げるにあたって相談したいことがあり、当時から不妊治療の専門家として活躍されていた箕浦先生にご指導を願い出たのがきっかけです。そこから月1回の勉強会で顔を合わせ、さまざまなことを教えていただきました。月日は流れて2023年頃、箕浦先生から「そろそろ引退を考えているので、もし良ければクリニックを譲りたい」というお話を頂いたんです。私自身、同センターを軌道に乗せることができたので、今後のキャリアについて考えていた時期でした。そして、一人ひとりの患者さん対してより近い距離で診療したいという思いが強くなっていたこともあり、クリニックの継承を決意しました。
先生が不妊治療を専門にしようと思ったきっかけは何でしょうか?
医学部時代、最初に興味を持ったのは産婦人科でした。生命の誕生に立ち会えることに喜びを感じたからです。そのため、医師になってからの初期研修で済生会松阪総合病院の産婦人科で研鑽を積みました。同病院の産婦人科には当時から不妊部門があり、そこでの治療に携わったことが、不妊治療を専門にしようと思ったきっかけです。妊娠の段階から治療に関われることに驚き、同時に強い興味を持ちました。当時はまだ不妊治療に取り組む病院は全国的にも少なかったので、同病院の不妊部門ではかなり先鋭的で専門的な治療をしていたと思います。その後、さらに不妊治療の研鑽を積むために、IVFなんばクリニックなど不妊治療の症例数の多いクリニックでさまざまな症例に携わりました。
どのような患者さんの来院が多いですか?

患者さんのほとんどは、不妊治療を希望される方です。三重県に住んでいる方が中心ですが、遠方から来院される方もいます。不妊治療は、治療の段階によって週に何回も来院しないといけません。通院の負担を少しでも軽減できるように、四日市市のクリニックと連携した治療にも取り組んでいます。患者さんの年齢層は20〜40代までと幅広いですが、40代では1年経過するごとに治療の成果に大きな違いが出るため、できるだけ早めの治療開始をお勧めしています。
夫婦同席のもと丁寧なカウンセリングを実施
診療で大切にしていることは何でしょうか?

最も大切にしているのは、治療の説明です。初診時には、さまざまな検査を受けていただきます。検査結果が出たら必ず夫婦同席のもと、1時間ほどかけてカウンセリングを実施し、治療方針を決めていきます。一般不妊治療から体外受精へステップアップする際も同様です。通常の診察時はお話しできる時間が限られているので、私はこのカウンセリングの時間をとても重視しています。ご夫婦がどのようなことに悩んでいるのか、何を求めているのかなどをしっかりと伺いながら、治療内容をご説明します。今までの経験から、不妊治療をしている患者さんの中には、ご自身がどのような治療を受けているのか認識していない方が少なくありません。私は、患者さんご自身が治療内容をしっかり把握し、納得した上で進めることが安心につながると考えているので、何度も説明を重ねます。
治療方針を説明する時は必ず夫婦の同席が必要なのですね。
不妊治療はご夫婦二人三脚で取り組むものです。とはいえ、どうしても女性側の負担が大きくなってしまいます。だからこそ、ご夫婦がそろっている時に、女性側にかかる体の負担やつらさを説明します。負担がかかるのは採卵の日だけではなく、卵巣で卵を育てる期間にも体調の変化や精神的な負担を感じることがあります。そのようなことを治療前にパートナーにも理解していただくことで、妻の体調が優れない時期に、「サポートしよう」という気持ちが湧くものです。体調が優れない奥さんを見て旦那さんが優しい言葉をかけたり、家事を手伝ったりと、精神的なサポートにつながるといいなと思い、説明しているんです。ご夫婦で協力しながら治療に臨む意識をしっかり持っていただくために、治療の節目では必ず夫婦同席で説明を行っています。
治療内容や設備について教えてください。

体外受精や顕微授精など、大学病院と同レベルの高度な治療を提供しています。これらの高度生殖医療に不可欠なのは、先鋭的な機器がそろった培養室と、それらを管理する培養士です。培養士は、受精卵の状態を詳細に観察してより良い培養環境を整えるための重要な役割を担っています。当クリニックの培養士は、長年の経験と技術を持つまさにスペシャリストで、当院になくてはならない存在です。その他、私が院長になってから新たに導入した治療の一つに、卵管鏡下卵管形成術があります。これは、卵管が詰まって妊娠しにくい方を対象に行う治療で、自然妊娠や人工授精での妊娠を望みたい方に行っています。
専門性を持つスタッフとともにチームで患者を支える
スタッフの皆さんとの連携について教えてください。

スタッフの皆さんの技術力には、私も自信を持っています。特に、培養士は前院長の時代から長年勤務しているベテランが多く、安心してお任せしています。培養士の実力があるからこそ、私も日々の診療に全力で取り組めています。受精卵を毎日管理しているスタッフの意見は治療方針を決める際に重要なものになるので、スタッフとのディスカッションは非常に多く重ねています。ディスカッションのもとになるデータの精度もこだわっていて、どんなに些細なデータまでも取って保管しています。開院してから20年間に及ぶ詳細なデータは、今後の治療にも役立つと考えています。
印象的なエピソードはありますか?
私が大学病院に勤めていた頃から担当していた患者さんが、当クリニックで治療を継続してくれたら医師冥利に尽きるなと思います。私を信頼し、転院してまで治療を続けてくださったら、私も並々ならぬ思いが芽生えるでしょうね。そんな方が、妊娠、出産された時は、喜びもひとしおだと思います。また、不妊治療に臨む患者さんの中には、何度移植しても流産を繰り返してしまうという方もいて、さまざまな検査をしても原因がわからないケースもあります。私もつらいですが、なんとかしたいという一心で複数の専門家に相談し、知恵を結集して、力を尽くしています。妊娠継続の喜びは何事にも代えがたいものでしょう。患者さんの笑顔を見ることができれば、私もすべての苦労が一瞬で報われるのだろうと思います。私がこの仕事を続けている理由は「患者さんの笑顔が見たいから」。その一言に尽きます。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

不妊治療を希望する患者さんがクリニックに対して最も気にされるのは、妊娠継続率だと思います。だからこそ妊娠継続率にこだわって、スタッフとともに日々努力をしていきます。私は長年不妊治療に携わっているので、ありがたいことに尊敬すべき先輩方との緊密なつながりがあり、これが私の財産でもあります。今後も治療方針で悩んだ際には先輩方の知恵を借りながら、「わが子を抱きたい」という患者さんの希望に寄り添っていきたいです。初診で来院する際は、情報収集の一つという気持ちでも構わないので、お気軽にご来院ください。