瀧野 敏子 院長の独自取材記事
ラ・クォール本町クリニック
(大阪市中央区/本町駅)
最終更新日:2025/07/15

大阪市のビジネス街・本町に位置する「ラ・クォール本町クリニック」は、婦人科や美容の相談などに対応している都市型クリニックだ。瀧野敏子院長は、淀川キリスト教病院をはじめとする医療機関で研鑽を重ね、2004年に女性の健康を支える場として同院を開業。自身の専門性や経験を生かし、働く女性が抱えるさまざまな悩みに対する診療を、ワンストップで提供している。また、日本で働く外国人の診療にも対応できる環境が整っているのも特徴だ。「今後は、訪日外国人への医療提供にも、より積極的に取り組んでいきたいです」と、抱負を語る瀧野院長に、診療への想いや今後の展望について話を聞いた。
(取材日2025年5月2日)
時代の流れとともに女性を中心とした診療に変化
クリニック開業から現在に至るまでの経緯を教えてください。

当院を開業した2004年は、「女性医療」や「性差医療」という考え方が広がってきた時期でした。男性と女性では体のつくりもホルモンも根本的に異なるため、それに配慮した診療が必要ではないかという認識が高まりつつあったのです。私自身もその考えに強く共感し、女性の健康を支える医療に携わりたいと考えるようになりました。また、当時、日本でも低用量ピルが広く認知され始め、月経困難症に対する治療の選択肢が広がったことも大きな転機となりました。開業から20年が過ぎ、社会の変化とともに働く女性の健康ニーズも多様化しています。ここ本町はビジネス街ですので、20~40代の働く女性が多く来院されます。そこで当院では、いわゆる「フェムケア」と呼ばれる女性の健康づくりに特化した診療を中心に行うようになりました。
クリニックの特徴を教えてください。
当院では、婦人科を中心とした診療を行っています。私は日本内科学会総合内科専門医と日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医の資格を持っているため、内科診療や胃の内視鏡検査にも対応可能です。女性は閉経前後からメタボリック症候群になりやすく、血圧やコレステロールの上昇など内科的なケアが必要になるケースも少なくありません。それまで月経関連の不調で通われていた方に対して、そのまま継続的に内科的なサポートもできるという点は、当院ならではの特徴だと考えています。以前は乳腺や甲状腺の超音波検査も行っていましたが、今は専門のクリニックが増えてきましたので、そちらをご紹介するようにしています。
特に力を入れている診療について教えてください。

最近は、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の診療に力を入れています。PCOSは日本ではまだあまり知られていませんが、海外では一般的に認知されている疾患です。近年は、欧米やアジア諸国の出身者を中心に、PCOSの症状で来院される患者さんが増えてきたと感じます。この疾患は、生理不順の他に、急激に体重が増える・ニキビがひどくなる・体毛が濃くなる・頭髪が薄くなるなど、見た目の変化を伴うことが特徴です。原因はまだ解明されていませんがインスリン抵抗性(インスリンが効きにくくなっている状態)を伴うことが多いため、20~30代で糖尿病、高血圧、脂質異常症などを発症する人もいます。さらに不妊症や20~30代での子宮内膜がんなどのリスクもあります。月経不順で婦人科を受診し、検査によってPCOSと診断されるケースもあります。急な体重増加やニキビ、体毛が気になる方は、一度婦人科で検査を受けてみることをお勧めします。
患者の状況に応じ、ワンストップの診療を提供
PCOSだと診断した場合、どのような治療をするのでしょうか?

PCOSは根本から治療することが難しい疾患です。そのため、症状ごとに個別に対応していくことが基本となります。例えば、肥満には、運動・食事療法を行った上で、糖代謝の改善を目的とした内服薬や注射などで治療を行います。定期的な婦人科検診(超音波検査など)で子宮内膜の厚みを測定することも大切です。体毛が濃くなる症状やニキビには、当院で行っている医療レーザー治療で対応可能です。当院では婦人科や内科診療の他に、美容のお悩みに応じた施術も行っているため、PCOSのさまざまな悩みにもワンストップで対応できる体制を整えています。
今後は海外からの訪日客の診療にも対応していきたいそうですね。
はい。近年、大阪の街中でも外国人観光客の姿をよく見かけるようになりました。当院には、もともと日本で働く外国籍の方が多く通院されていて外来患者さんの2割くらいを占めています。スタッフも日頃から外国の方の対応に慣れていますので、その延長として、今後はインバウンドで訪れる観光客や短期滞在者の診療にも対応していきたいと考えています。英語での対応はすでに可能ですし、2025年5月より、自動翻訳機を導入していて、さまざまな国の方に安心して受診していただけるようスタッフのトレーニングを行うなど環境を整えています。言葉だけでなく、文化や感性、医療制度の違いにも配慮しながら、それぞれの方の背景を尊重した診療を提供していけたらと思っています。
オンライン診療にも対応していると伺いました。

オンライン診療は2019年頃から導入しました。当院では主に、患者さんからの相談を受ける場合にオンライン診療を取り入れています。例えば、海外で働く女性が日本に一時帰国した際に検査を受け、帰国後にオンラインで結果の説明を受けるといったケースです。国内では、地元に婦人科が少ない地域に住んでいる方が大阪で受診し、引き続きフォローを希望されることがあります。また、当院は女性の公認心理師と提携しており、PMSやPMDD(月経前不快気分障害)、更年期障害に伴う気分の落ち込みなどに対して、オンラインでの心理カウンセリングをご紹介しています。
女性が自信を持って生きるためのサポートをしたい
ところで、「ひとりオカン・オトン子プロジェクト」とはなんでしょうか?

「ひとりオカン・オトン子プロジェクト」は、ニキビに悩む一人親家庭のお子さん、具体的には18歳以下の女性で治療を希望される方の診療をサポートする、当院独自の取り組みです。当院でのニキビ治療、つまり自由診療のレーザー治療を手頃な価格で受けていただけるという内容です。悩みを抱えたお子さんにも、太陽を浴びたヒマワリのように元気な笑顔になってほしい。そんな思いを込めてこの活動に取り組んでいます。SDGsの3つ目に挙げられている「すべての人に健康と福祉を」の実現をめざし、これからも社会貢献の一環として続けていきたいと考えています。詳細は当院ホームページをご覧いただきたいです。
先生はクリニックの医療法人の理事長でもありますが、理事長兼院長として働く環境整備にも努めているとか。
はい。法人・クリニックのスタッフが健康的に働けるような取り組みを行っています。具体的には、毎朝のラジオ体操や検診を受けた際の費用補助、ヘルスリテラシー向上のための院内講演会、毎年、健康課題を抽出しての特別な取り組みなどです。実はこの取り組みをきっかけに、経済産業省による健康経営優良法人2025の中小規模法人部門で「ブライト500」の認定を受けました。現在スタッフは7人と少数精鋭ですので、各個人の貢献度が大きいです。ブライト500で職員を大切にしていることの認定をいただいていると感じています。また、2025年の取り組み強化の課題は、スタッフの手荒れです。クリニックでよくあるけれど女性にとっては深刻な課題を取り上げて改善する活動をしています。当院の有給休暇の取得率はパートスタッフも含めてほぼ100%で、昨年からは時間単位での取得も可能に。取り組みの内容はホームページやSNSでも発信しています。
今後の展望や読者へのメッセージをお願いします。

現在も、日本在住の外国人の方に対する診療に対応していますが、今後はインバウンドで訪日される方も含め、特に女性向けの医療体制を充実させていきたいと考えています。日本で働く外国人女性の中には、日本語が堪能でも、医療的な悩みを言葉でうまく伝えるのが難しいという方が少なくありません。そうした方々に、より適切な医療を提供するため、言語だけでなく文化や価値観の違いを理解し、受け入れる環境を整えていきたいと思います。また、国籍を問わず、体の不調を感じた方はぜひお気軽にご相談ください。女性が自信を持って仕事や日常生活を送れるよう、私自身の専門性やこれまでの経験を生かしつつ、女性精神科医師、公認心理師とも連携しながら、心と体の両面からサポートしてまいります。
自由診療費用の目安
自由診療とは胃の内視鏡検査/1万3500円、レーザーを用いたニキビ治療/1万円~