藤井 真 院長の独自取材記事
ふじいクリニック
(泉大津市/松ノ浜駅)
最終更新日:2025/09/08

南海本線松野浜駅から徒歩約16分、海外の城を思わせるオフホワイトの外観が目を引く「ふじいクリニック」。ホテルのラウンジのような温かみある待合室で迎えてくれるのは、藤井真院長だ。関西医科大学卒業後、救急医療から整形外科診療まで経験を積んだ藤井院長。「話すのが好き、聞くのが好き」という性格から、手術よりも患者との対話を重視する道を選んだ。2005年の開業時、内科を担当する義母、皮膚科担当の妻とともに3診療科体制をスタート。病気だけでなく人全体を診ることを大切にし、患者の尺度に合わせた診療を実践している。3診療科連携のメリットや、医療連携への姿勢、地域医療への思いなどについて話を聞いた。
(取材日2025年8月13日)
対話重視の診療で3診療科連携を実現
まずはこれまでのご経歴をお聞かせください。

1999年に関西医科大学を卒業後、附属香里病院で整形外科と麻酔科を経験し、その後、八尾徳洲会病院では救急診療を中心に研鑽を積み、社会保険滋賀病院を経て交野病院へ。交野病院では部長と2人体制で、脊椎から関節手術まで幅広く担当しました。ある時、上司が病気で1ヵ月半ほど不在になり、一人で整形外科を切り盛りすることに。それをなんとかやり遂げたことで自信がつきました。一般的な整形外科や外傷もしっかり診られるようになったと感じ、専門の外来だけでなく幅広い分野を経験できたことが開業への大きな後押しになりましたね。
開業の経緯についても教えてください。
勤務医時代は、整形外科の医師として手術中心の毎日を送っていましたが、私はどちらかというと、外来で患者さんとお話ししているほうが好きでした。どんな治療が必要か説明したり、注射やお薬、検査の相談をしたりすることに魅力を感じていたと同時に大事に思っていたことでした。実際に手術等をするよりも、それまでの導入の部分というか、どういった治療が整形外科にあるかといったことを患者さんに伝える、そういう役目にもっと集中できたら……と思ってたんです。ただ、勤務医時代は午前に外来、午後は手術というスケジュールが中心で、外来に思うように時間をかけられませんでした。ちょうどその頃、皮膚科の妻と内科の義母も退職のタイミングが重なり、それなら3人で始めようと。それから現在まで、同じスタイルで20年やってこられたので、良かったと思っています。
3診療科体制の特徴について教えてください。

整形外科、内科、皮膚科の3診療科があることで、診療科目ごとに異なるクリニックに行かなくとも、一つのクリニックで診られるので、患者さんの通院負担を大幅に軽減できていると思います。内科と皮膚科は午前診のみですが、一度に3科受診することも可能です。ご年配の方だと移動も大変だと思うので、一ヵ所で済むむメリットは大きいのではないでしょうか。このシステムで20年間やってきて、地域の皆さんにも喜んでいただけていると思います。
病気ではなく「人全体」を診る診療姿勢
診療で心がけていることを教えてください。

問診票に「何が困っているか」は書いてもらいません。それは私が直接聞くようにしています。患者さんが生活している背景や仕事の環境が必ず影響していますから、話を聞きそこからイメージしていくことが大事だと思っています。例えば「痛いけど買い物には行ける」という方には「買い物に行けるってすごいですね」と伝えるなど、患者さんの尺度にこちらが合わせることが大切なんです。そうすることによって、痛みの治療だけでなく、その人が本当は何に困っていて、どうなりたいのかを理解する。病気だけ見ていると解決の糸口が見えません。その人全体を診ることで、単に症状を取るのではなく、気持ちの面でも元気になってもらえると考えています。
医療連携についてはどのようにお考えですか?
当クリニックでは手術に対応していない分、専門の先生への紹介という橋渡しの役目を大事にしています。スポーツ外傷の方には専門のスポーツ整形の先生を、関節置換が必要な方には手術が得意な先生を紹介します。一度紹介したからそれで終わりではありません。もし「行ったけど先生と話が合わなかった」「日程が合わなかった」ということがあれば、違う病院を探し紹介します。その患者さんにとって、良い先生に出会うまでサポートし、巡り合ってもらえるようにするのが私の仕事だと思っています。
クリニック内での連携も多いのでしょうか?

そうですね。例えば、整形外科で脇腹の痛みを訴える患者さんに対してエックス線撮影をする際に、湿疹があれば、その痛みは整形外科疾患ではなく、もしかしたら帯状疱疹など皮膚科の疾患の可能性があります。その場合、すぐに皮膚科へ診療を依頼するといった連携ができますし、院内ですぐに適切な治療をすることもできます。他にも、リウマチの方で血液検査で肝機能や血糖値の異常が見つかれば、すぐ内科へ紹介できます。血圧が高い方も内科で診てもらえる。体は複合的にいろんな要素があるので、内科的なこと、皮膚科的なことも含めて総合的に診られるのは強みですね。他科の所見に気づいた時、すぐに診察できる体制は患者さんにとって大きなメリットだと思います。
地域の身近なかかりつけ医として
スタッフさんについても教えてください。

スタッフは、受付5人、看護師7人、診療放射線技師、リハビリテーションの助手3人がいます。皆さん家庭を持つお母さんたちで、お子さんの扱いも上手です。診察時間も5時半と短縮し、スタッフが長く勤められるよう配慮しています。特にリハビリ助手はパワフルで、患者さんとのコミュニケーションが抜群。リハビリ室でなにか気になることがあればすぐに報告・相談してくれるので安心です。診療放射線技師も難しい部位の撮影を担当してくれるので、私は診療に集中できます。それぞれの専門性を生かしたチーム医療ができていると思います。
今後の展望について教えてください。
クリニックとしては、多職種連携を重視し、訪問看護、訪問介護、訪問リハビリなどとの連携を深めていきたいです。また、私医師個人としては、泉大津市医師会に所属し、地域包括ケアシステムの会議にも参加しています。そこでいつも思うのは「患者さんが中心なはずなのに、なぜ患者さんが会議にいないのか」ということ。机上の議論ばかりでなく、住民の代表や自治会の方も入って意見を聞くべきだと発言しています。医療の中心は患者さんであり、地域住民、市民です。本当に困っている人、家から出られない人の声を聞き、誰一人取り残さない医療体制を作っていきたいと考えています。
読者へのメッセージをお願いします。

医療の敷居が高いのは絶対に駄目だと思っています。何でも相談できるかかりつけ医を当クリニックではめざしていますので、痛みじゃなくても困っていることがあれば気軽に相談してください。「こんなこと言っていいのかな」と思うようなことでも、本人が困っているなら十分な相談事項です。そこに重大な病気が隠れている場合もありますし、そうでない場合もある。それを見分けるのが外来の役目です。いつでも相談できる、いつでもかかれるアクセスの良さが重要。必要なら専門の医師を紹介しますし、他科の診療も受けられます。受診をためらっている方は、あまり気負わずに一歩踏み出してみてください。