安易に外科的な処置に走らない
患者の将来を考えて行う根管治療
木村歯科医院
(北九州市若松区/若松駅)
最終更新日:2021/10/12


- 保険診療
虫歯が進行し、神経が通っている歯髄にまで虫歯菌が達してしまった場合に行われる「根管治療」。なんとなく言葉は知っていても、具体的に、何のために何をしているのか、なぜ何度も通院する必要があるのか、しっかり理解できている人は多くはないだろう。「患者さんから見えない治療だからこそ、丁寧に説明を尽くすことが大切」と語る、「木村歯科医院」の木村英生院長。治療前・中・後のエックス線画像を比較するなどして、治療をしてどのように変わっていったのかを患者と一緒に確認し、責任もって長期経過を観察することを診療ポリシーとする。30年にわたり根管治療の研鑽を重ね、安易に抜歯や歯根端切除などの外科的な処置に走らない治療を大切にする木村院長に、同院の根管治療の特徴やこだわりについて聞いた。
(取材日2021年7月7日)
目次
歯科医師の経験と熟練の手技が求められる根管治療。難症例でも安易に抜歯せず、歯を残して治療後を見守る
- Qまず、虫歯に対する基本的な治療方針を教えてください。
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A
▲患者一人ひとりの口腔内と真剣に向き合いベストな方法を追求する
口の中全部をチェックして、決して虫歯の見落としがないように、そして、小さいうちに治療を行っていくことを基本としています。当院では、最小限の治療介入を行うミニマム・インターベンションの考え方をベースに診療を行っています。ある程度の年齢以上で、唾液の分泌量が減っている人は虫歯になりやすいので要注意。ちゃんと噛めないのに義歯を入れていない、義歯が合っていないのに無理して使っている場合などはしっかり咀嚼できておらず、唾液も少なくなっているはずです。どこも痛くなくても定期的に歯科を受診して、虫歯や歯周病の早期発見・治療・メンテナンスを続けていくのが、患者さんにとって結局一番楽な方法だと思います。
- Q根管治療はどのような場合に行うのでしょうか?
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A
▲一時的な改善ではなく、常に一生涯の口腔内管理を考えていく
虫歯菌が深くに達し、歯根の中の神経や血管が細菌感染や炎症を起こすとかなり痛いはず。でも時々痛みが和らぐこともあり、受診を先延ばしにしている内に神経が死んでしまい、そうなると症状がなくなりまた放置……。そういう相当我慢強くて歯科に対する恐怖心の強い方が多いですね。根管治療は神経を残すための治療から、死んでしまった神経を取り除き薬剤を充填する治療、長期間の放置でできた膿を消毒する治療、さらには歯根嚢胞という膿の袋ができた場合の治療までさまざま。当院では、病巣がある歯根の先端ごと切る歯根端切除などの外科処置はきわめて少なく、根管内の起炎因子を機械的に除去し、科学的に無毒化する治療に取り組んでいます。
- Q治療はどのような流れになりますか?
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A
▲難症例でも安易に抜歯せず、多様な手技を駆使して治療にあたる
まずエックス線を10枚法で撮影し、モニターに映し出して現状を説明します。そして最適だと思われる治療法や治療回数の目安について説明します。治療はまず、神経を抜いた根管内から汚染物質を取り除く掃除をしたあと、その中に消毒薬を詰めて仮のかぶせ物をします。週1回は通院して、中の消毒薬を入れ替えましょう。この治療を4~5回繰り返し、根管の中をきれいに消毒した後に根管充填剤を詰め、歯が割れたりしないようにかぶせ物をしていきます。私はこの根管治療の後も重視していて、この先も歯を残していくために長期間経過を観察し、必要なときに次の手を打てるような準備を常に心がけてます。
- Q表には見えない部分だからこそ、丁寧な治療が必要ですね。
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A
▲根管治療の難易度の高さと歯科医院選びの重要性を語る木村院長
一度根管治療をした歯が再発することもあります。もちろん私が治療しても再発の可能性は当然あります。でもそうならないために、最も治療成功率が高いと考える「下川公一先生方式の根管治療」を実践しています。主な再発原因は歯根の先の汚染物質の掃除がしきれていないことです。歯根の長さを測る機器を入れる部分は細くて肉眼では見えませんし、汚染物質を根の先に押し出す危険性もある根管治療において、完璧と呼べる治療は極めて困難です。だからこそ私は、指先の感覚と機器の動きをリンクさせて、歯根のどの辺りを触っているかを把握できるように研鑽を積んできました。この根管治療は保険診療で行いますのでお気軽にご相談ください。
- Q根気よく治療が続けられるような工夫は何かされていますか?
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A
▲患者の不安を払拭するため、治療の説明はしっかりと行う
この地域の患者さんは、歯科で何をされるのかわからなくて怖がって、いよいよになってからようやく来る方と、小さいときから定期的に歯科を受診することが習慣づけられている方、タイプが両極端なようです。定期検診を受けている方に根管治療を行うケースは少なく、虫歯の程度が悪くなればなるほど、難しい根管治療が必要です。治療を怖がっている患者さんには、データに基づいたわかりやすい説明が大切です。今何をしているのか、毎回具体的にお話しすることで、患者さんがわざわざ言葉にはしない不満や疑問を一つ一つ解消しながら治療を進めていけたらと思います。