桑江 秀樹 院長の独自取材記事
桑江クリニック
(大阪市住之江区/北加賀屋駅)
最終更新日:2025/05/09

大阪メトロ四つ橋線・北加賀屋駅から徒歩15分、市営住宅に隣接する地域にある「医療法人 桑江クリニック」。桑江秀樹先生が院長を務める同院は、8階建てのビルの2階に診療所を設けており、入り口を入ると木目を基調とする広々とした待合室が患者を出迎える。通常の外来診療のための診療室と処置室の他に、患者の体質改善のための参考書籍などが並ぶ部屋が設置されており、患者の精神面のケアにも積極的に取り組んでいる。泌尿器科疾患の診療や、漢方薬などの東洋医学的アプローチを用いた幅広く精力的な取り組みの様子、予防的診療として早期に受診してもらうことの重要性について、桑江院長に詳しく話を聞いた。
(取材日2017年7月6日)
医師である父の背中を見て医療の道へ
医師をめざすことになったきっかけを教えていただけますか?

私の父が医師をしており、その姿を見て自分も医師を志しました。実は、医師になることを迷っていた時期もありました。学生の頃は、医学よりむしろ動植物や農学に興味を持っていたからです。また、医学部に進むということは医療の道に専心して職業を選ぶことになりますので、言い換えれば他の職業への道が閉ざされます。ただ、父が当時はまだ日本になかった形成外科のアプローチから患者さんを治療しようと努力しており、漢方薬に関しても熱心に研究する姿を見ていましたので、最終的には医療の方向へ進みました。
大学時代に熱中していたことはありますか?
もともとスポーツが好きだったので、大学のクラブはラグビー部に入部しました。それが思っていた以上に楽しいものだったので、大学の勉強そっちのけで熱中していました。ラグビーの特徴であるチームプレーの精神に惹かれたところもありまして、自分でもチームの一員になって活躍したいという思いがありました。チームスポーツの連帯感や勝利を分かち合う精神を味わってみたいと思ったのです。残念ながらケガをしてしまって裏方に回らざるを得なくなったんですけれども、振り返ってみるととても楽しい思い出です。
泌尿器科をお選びになった理由は何でしょうか。

自分がもともと外科系の科に興味があったことが理由としてありますが、それに加えて泌尿器科というのは、外科系的な側面と内科的な側面がありまして、医学部の中でも専門的な立場になります。消化器は外科も内科も扱う科目ですが、泌尿器は独立した診療科目なのでそのスペシャリストとして一目置かれており、他科の医師から意見を求められることが多いのです。また、泌尿器科では手術も行うので外科的な知識と技術が必要とされますし、泌尿器科を志す医師が少なく、慢性的に人手不足で引く手あまたなのです。そうした事情から、さまざまなチャレンジができる可能性があるということと、責任感を持って仕事ができるということを感じ、泌尿器科を選択しました。
西洋薬に加えて漢方薬を処方することで病気に対処
開業のきっかけはどんなことですか?

泌尿器科になってから間もない頃は、自分の医療技術の向上をめざしてひたすら努力していました。その中で、尿失禁や頻尿などの命に直接関わるわけではないけれど、生活に支障を来し、なおかつ薬で症状を抑えるしかない病気をお持ちの患者さんを治療することもあったのです。そんな薬の中には副作用が出るものもあります。「症状を抑えたいけれど、薬の副作用はつらい」と苦しむ方々を診て、何とかしたいと思うようになり、漢方薬を用いた診療を行ったことをきっかけに、東洋医学に魅力を感じたのです。症状のみを診るのではなく、背景にある患者さんの体質や生活習慣も診て治療する東洋医学を行う場合、大きな病院では対応できない、患者さん一人ひとりに合わせた個別の診療が必要です。そこで思い切ってクリニックを設立し、個々の患者さんに寄り添っていこうと決意しました。
診療にあたって気をつけていらっしゃることはありますか?
まずは問診のために十分な時間を取って、患者さんの話にきちんと耳を傾けるようにしています。同じ病気の診断を出しても、漢方ではその人の体質や生活習慣によって処方する薬や指導方法は異なるため、病名がわかったら終わりではなく、詳しく問診を聞く必要があります。その際には、患者さんが何を求めているのかということも大切にしています。患者さんが何を望んでいるのかによって、その後の治療方針も変わってきますので、なるべく早く察知してあげて、患者さんに合った治療や生活指導を提案したり、飲みやすい薬を使ったりするように配慮しています。また、検査を行うときにも患者さんが痛がらないようなやり方でやるようにしています。しなければならない検査はもちろん行うのですが、なるべく痛みが少なくなるように気をつけています。
通常の西洋医学的診療とは違った対応も行っていらっしゃる理由は?

私が行っている漢方薬を使用した診療方法は、西洋薬とは違った効果が期待できます。また、症状そのものだけでなく、患者さんの体質改善や精神的な安心・安定に配慮してさまざまな施術を行っているので、そういった面でもアプローチしています。それぞれの患者さんの症状を軽減することができ、何よりも医師である私自身がやりがいと喜びを感じています。治療に関する選択肢を増やすことができたということも大きいですね。西洋薬を使っていると、ずっと飲み続けなければならないということがあるのですが、漢方薬を使った場合は「廃薬」といって薬を中止しやすいのが大きなメリットです。
恥ずかしいと思わず、気になったら受診に来てほしい
往診をする上で気をつけていることは何ですか?

とにかく丁寧に診療内容を説明するようにしますね。往診をしなければならない患者さんというのは自力で移動することができず、それに伴って筋力が落ちると同時に理解力も落ちてしまいます。認知症を発症する患者さんも多いので、じっくりと時間をかけて丁寧に説明します。患者さん自身が判断できない場合はご家族と一緒に話をして、病状の説明と治療方針を理解できるよう外来の患者さんよりも時間をかけて説明するようにしています。また、施設に入所されている方もいるので、その場合はいつもご家族が一緒にいるわけではありません。そういった場合は治療内容がご家族にうまく伝わっていないことがありますので、家族向けのレポートを作成してご自宅に発送するようにしています。
医師をしていて良かったと思うのはどんな時ですか?
何よりも患者さんの喜ぶ顔を見るのが医師冥利に尽きますね。振り返ってみると、父親が漢方薬の研究をしていて、それにならって自分も勉強してきたことが今とても役立っています。漢方薬は保険が利く薬なので、たくさんの方にその存在を知っていただき、患者さんさえ承諾くだされば選択肢はいくつもあることを知ってもらいたいと思います。
これから泌尿器科を受診しようと思っている方にメッセージをお願いします。

恥ずかしがらずに気軽に受診してもらいたいですね。気になる症状があるときに、命に関わる問題ではないとか、恥ずかしい、我慢すればいいと思って受診を後回しにする方が多い印象です。当クリニックでは、なるべくプライバシーを保てるような部屋の構造にしていますし、スタッフにもそのような教育をしておりますので、当クリニックに来てもらえれば少しでも生活の質を上げられるようなお手伝いができると思います。また、恥ずかしいと感じる検査や痛みを伴う検査は最小限にして、超音波や採血、検尿だけで発見できる病気もありますので、安心して来ていただければと思います。