前田 純宏 院長の独自取材記事
まえだ泌尿器科クリニック
(香芝市/近鉄下田駅)
最終更新日:2025/11/19
近鉄下田駅、香芝駅より徒歩約2分、便利な立地のメディカルビル3階にある「まえだ泌尿器科クリニック」。開業20年目に入る医院は白を基調に清掃が徹底され、清潔感があふれている。プライバシー保護のため診療室内の声が外部に漏れにくい構造、バリアフリー設計、女性用・男性用に分かれたトイレなど、老若男女が安心して通えるような配慮が行き届く。院長の前田純宏先生は、母校の京都大学医学部附属病院はじめ複数の大規模病院にて多くの手術に携わってきた。同院では特定の疾患に限定せず幅広く対応。必要に応じて専門の医療機関へ紹介するなど、街の医院の重要な役割である「交通整理」も適切に行う。取材では、わかりやすい説明をモットーとする方針どおりの丁寧な口調で、同院の特徴やこだわりなどを語ってくれた。
(取材日2025年10月9日)
通院困難な現役世代に、随時オンラインを交えた診療を
医師、中でも泌尿器科の医師をめざしたきっかけは?

漠然と人の役に立つ仕事がしたいと思っていました。母方の親戚に医師が何人かいますが、それは直接関係していません。ただ高校の頃に母が入院し、医師や看護師が献身的に働くのをそばで見て、いい仕事だなと思ったのがきっかけです。母の入院という大変な時期と受験期が重なったのですが、今思えば逆にその状況がストイックに勉強へと集中するきっかけとなり、医学部へ進むことができました。その後医局時代に人として魅力があり熱意を持って接してくれたのが泌尿器科の先生だったのと、内科系、外科系両方の専門性を持って診られることから、泌尿器科を選びました。
実際開業していかがでしたか?
これまでは内科の先生や遠くの総合病院まで通ったりされていたところを、近くに泌尿器科ができたということで感謝され、地域の方は泌尿器科を求められていたのだなと感じます。医師会の先生にも歓迎され、親切にしていただいています。特に縁があったという地域ではなかったのですが、選択は誤っていませんでした。泌尿器科は特に他科とのつながりが強い科ですが、医師会で横のつながりがますます強くなり、とてもありがたいことだと思っています。
患者層やよくある主訴は?

患者層としては60歳以上が7割、男女比は7:3で男性が多いです。泌尿器科は9:1でもおかしくないくらいなので、泌尿器科にしては女性が多いと思います。開業して20年たちますが、可能な限り院内をきれいにしているつもりなので、女性が来やすいのかもしれません。多い主訴は高齢者の排尿障害。前立腺肥大症や過活動膀胱などです。
2025年6月よりオンライン診療を開始されました。
泌尿器クリニックとして検尿や検査が必要な場合、初診の場合が多いのですが、それはオンライン対象外となります。では、どのような方がオンライン診療の対象なのかというと、1、2回受診されたけれど、3ヵ月たっても来院されない患者さまなどです。サラリーマンの方で泌尿器科が近くになく、わざわざ探して当院を受診されたのですが、仕事があって診療時間内に受診できないという方が結構おられます。そのような患者さまにオンライン診療を勧めています。
豊富な経験から頻尿、性病、男性更年期、EDを治療
先生のご専門は?

排尿障害と尿路感染症、性感染症ですね。性感染症は病院では診る機会が少なかったので、開業時に勉強会に入って学んだり経験を積みました。性感染症を専門とする医師は奈良県ではまだ少なく、奈良県全域や大阪など遠方からも来られます。交通の便が良いので、ここに開業して期待に応えられているかなと思います。当院は診療中の声が聞こえにくいので安心して症状を話していただけます。もちろんご高齢者の排尿障害などの割合が高いのですが、性感染症においてもかなりウエイトが大きいのではと感じています。
最近多い性感染症は?
少し前まで梅毒でした。梅毒は第1〜4期と進行とともに症状が変わり、その間に症状が消えることもあるので、適切な診断・治療が遅れてしまいます。3、4年前の流行し始めた当時は、梅毒に慣れていない先生方では診断がつきにくかったのですが、今は少し下火になりつつあります。近年、増加傾向なのは喉の性病です。咽頭クラミジアや咽頭淋病はほぼ無症状なので、感染が広がりやすいのです。当院ではうがい薬でできる喉のPCR検査で診断しています。性感染症は常に変化していくので、継続して勉強し、知識の更新を心がけているので安心して受診いただけます。
性感染症についてデリケートな問題に、細心の注意を払って対応されているそうですね。

性感染症では淋病かもしれませんからパートナーも調べてくださいね、などと診断がついたかのように対応してしまうと、結果が陰性でも男女間の信頼関係が崩れてしまうことがあります。そのため診断が決定的でない限り相手には話さないなど、対応には注意を払うようにしています。
男性更年期とED治療の患者さまも増えているのですか?
うつ症状や神経症の症状が見られても心療内科に行けない、行きたくないという熟年男性には、男性更年期が隠れている場合があり、経験数が多い当院では適切な診断治療が可能です。また、ED治療に関しては男性の泌尿器と直結していることもあり、受診される方が多いです。ED治療はより効果が期待できる薬を求められる傾向があります。それに、副作用のことやどのように薬を使ったら良いか、どの薬が向いているか、ということを患者さまと向き合って治療にあたっています。私の場合、長年の多種の薬の処方経験をもとに患者さまのニーズに対応していますので、ご安心いただければと思います。
プライバシー重視、解りやすい説明、確かな診断が目標
設備面でのこだわりを教えてください。

泌尿器科なので特にプライバシー保護を意識しています。内装は白を基調にし、きれいに保てるよう清掃を徹底しています。プライバシーについては設計の段階からこだわって、奥まった所に診察室を配置してもらいました。中待合で次の患者さまが待つ医院が多いのですが、ここはそれをせず、診察室の厚い扉を完全に閉めて密閉状態にします。また診療の待ち時間がスマートフォンでわかるシステムを導入し、順番近くになってから院内で待つ流れになっています。トイレは障害者/男性用、女性用、職員用と分けていて、トイレを待つことのないよう、気分良く使っていただく工夫をしています。医師会でIT部門を担当していることもあり、マイナ保険証への適切かつ迅速な対応はもちろん、10月からマイナスマホにも対応できるようにしています。電子処方箋により患者さまの服薬歴をはじめとした医療情報を共有できるので効率的に診療治療を受けられます。
診療に際して心がけていることは?
わかりやすい説明と適切な診療をしていくことです。他院で薬を服用し続けているけれど、どういう病気で何の薬か理解していない患者さまもいます。病院などでは時間的に難しい手術についてわかりやすく説明するのが困難な場合もあります。しかし当院では診療内容をわかりやすく丁寧に伝えています。また、患者さまは聞いてほしくないかもしれませんが、正確な診断のため聞くべきことはしっかり聞きます。例えば問診に「おしっこが漏れる」とあっても、我慢できない場合と残尿が漏れる場合で、お薬も異なります。また、何時に寝て何時に起きますかと聞くと、中には夜7時から朝6時まで長時間眠る方もいるでしょう。それでは4、5回トイレに行っても普通です。先入観にとらわれず専門家として適切に診断することを心がけています。
希望により大規模病院同様の2~3ヵ月処方を積極的に導入されていると伺いました。

当院のような診療所では一般的に、2週間や1ヵ月に1度の通院を求められてきました。大規模病院は3ヵ月に1度の通院で処方を受けられます。これは大規模病院の場合、病状が安定している患者さまは通院負担と病院側の診療負担を軽減させるためです。しかし、近年、高齢者も医療費負担が2割、3割と増しています。このような状況を鑑み、当院では医療上問題ない患者さまには、要望や需要に応じて2ヵ月、3ヵ月処方を実施しています。
今後の展望を教えてください。
理事を務めている奈良県医師会の活動の中で、医師間の横のつながりがさらに深まり、異なる診療科との病診連携が可能になりました。このネットワークの中で私の役割は、疾患によって適切に交通整理をすること。高齢化社会では医療連携にはニーズがあり、存在価値があると感じています。今後も医師としてできる最大限のことを行っていきたいです。

