前田 純雄 院長の独自取材記事
前田内科クリニック
(東大阪市/俊徳道駅)
最終更新日:2024/09/03
俊徳道駅から徒歩7分ほど歩くと、れんが調で温かみのある外観が患者を迎える「前田内科クリニック」。「地域のかかりつけ医として役に立ちたい」と語る前田純雄院長は、長年消化器内科で研鑽を積み、救急医療にも携わってきた経験豊富な医師。1957年から院長の父が産婦人科を営んでいた場所を継承し、1999年に内科医院として再スタートを切った。診療では、病状だけでなく日々の暮らしでの困り事なども細かく聞き取りを行い、その人に合った診療を提供している。通院が困難になった患者には、訪問診療や往診にも対応しているという。丁寧な診療はもちろん、気さくな前田院長の人柄も、近隣住民から親しまれている理由の一つだろう。クリニックの歴史から、かかりつけ医としての心構えまでたっぷりと聞かせてもらった。
(取材日2024年8月8日)
親子2代、60年以上にわたり構えるクリニック
お父さまの代からこの地で開業されているそうですね。
はい。父が1957年に開業してから、クリニック自体は今年で68周年を迎えます。父は産婦人科を専門としており「前田産婦人科」として開業していたんです。戦後の当時は第一次ベビーブームでしたから、たくさんの患者さんがいらしていましたね。その後、父が年を重ねたため、前田産婦人科は閉院。1999年に私が継承し、「前田内科クリニック」としてリニューアルオープンしました。今年で25年目になります。新型コロナウイルスが流行した数年前には院内を改装。待合室には淡いピンク色の壁紙を用いて、患者さんに落ち着いた気分で過ごしていただけるような空間にしています。
先生が医師を志されたきっかけや、これまでのご経歴について伺います。
医師をめざしたのは、やはり父の影響が大きいですね。それ以外に本当に生業としていきたい仕事も見つけられていませんでしたし、一番身近だった職業を選びました。それからは、大学の医学部に入った後、このクリニックを開業するまでずっと、福岡市内の病院に勤務していました。その当時は、消化器を専門とする医局に在籍。中でも特に胃腸の分野について詳しく学びながら、内科診療の基本を身につけました。一般内科の診療が主でしたが、内視鏡検査やがんの発見と治療、入院患者の診療、救急医療の対応にも携わりました。今思うと、非常に多忙な業務でしたね。父の体の具合が悪く、面倒を見るために地元に帰ってきたのが38歳の頃でした。
こちらでは、どういった範囲を診ていただけるのでしょうか。
地域の皆さんのかかりつけ医として、なんでも相談できるクリニックでありたいと考えています。以前は勤務医時代の経験を生かして内視鏡検査も行っていましたが、現在当クリニックが標榜しているのは、内科とリハビリテーション科です。風邪や腹痛、ちょっとした体調不良の症状のご相談から、糖尿病、高血圧症、高脂血症、痛風などの生活習慣病の管理、ワクチン接種などの目的で来院いただくことが多いですね。玄関の横にはクリニックの建物とは別にプレハブを設けており、発熱のある患者さんの検査ができるようなスペースにしています。当クリニックでの治療が難しい場合や、専門的な先生に診ていただいたほうがいい疾患であれば、適切な病院や先生をご紹介します。
多職種との連携を図り訪問診療や往診にも対応
患者さんはどのような層の方がいらしていますか?
地域柄、ご高齢の方にいらしていただくことが多いです。生活習慣病などの病気をお持ちで、電車やバスを使って東大阪市内の大きな病院にかかっていた方が、近所にある当クリニックへいらっしゃるケースや、通われていたクリニックが閉院された方など。例えば糖尿病であれば、長年にわたって日常生活の中でコントロールをしながら付き合っていく必要がありますので、より気軽に通えて、相談しやすいクリニックとして来院いただいているように感じます。もちろん、体調不良を訴えられて足を運んでくださる若い世代の新患さんもおります。新型コロナウイルス、麻疹、風疹、肺炎球菌、インフルエンザ、女性であれば子宮頸がんなど、各種ワクチン接種にも対応しておりますので、ご相談ください。
診療における特徴を教えてください。
患者さん一人ひとりの生活背景について配慮しながらお話しすることです。アルコールはよく飲まれるか、喫煙されているか、運動はされているか、食事では塩分を多く取られているかなど生活習慣を知った上で、どのような暮らしをされているのか、その生活背景を知ることも大切だと考えています。例えば、エアコンのない家で夏を過ごされている生活保護の方がいて、熱中症など命の危険にさらされて毎日を過ごしている場合は、民生委員の方々ともコミュニケーションを取りながら、安全に暮らせるようなさまざまなサポートを行います。近所に暮らす方がほとんどですので、どの辺りで、どんな暮らしをしておられるか、だいたいのことを知った上で、しっかり食事を取っているか、散歩に行っているか、その方に応じた質問をします。そして小さな変化にも気づき、健康でいられるように管理していくことが、かかりつけ医としての重要な役割ではないでしょうか。
訪問診療や往診にもご対応されているそうですね。
ご高齢の患者さんが多いので、通院が難しくなってしまう方もいらっしゃいます。そういった方には在宅医療として定期的な訪問診療を行い、調子が悪いとお電話をいただいたときなどには、臨機応変に往診の対応ができるようにしています。ケアマネジャーさんや介護職の方をはじめ、多職種との連携も重要です。そういった周囲の方から、例えば「あの患者さんの血圧が高い」と聞いてお薬を考え直したり、逆に医師としての視点から気をつけて見てほしいことをお伝えしたりすることもあります。日々、細かく丁寧にコミュニケーションを取ることで、私が担当している患者さんが健康に長生きできるよう、役に立っていきたいと思っています。
たわいのない会話も大切なヒントに
患者と接する上で、院長はどのようなことを意識されているのでしょうか。
じっくりとお話を聞くことを特に意識しています。何か小さなことでも困っていることはないか、変わったことはないか。体調はもちろん、生活面についてもいろいろな話を聞きながら、変化に気づけるようにアンテナを張っています。一見病気に関係なさそうなたわいのない会話から病気の発見につながるヒントが得られて早期治療につながることもありますので、話を聞くことは、診療を行う上で大切にしていることの一つですね。大きな病院にいた頃は、このようにたくさんお話をしていたら、時間がいくらあっても足りませんでした。しかしこうして今、患者さんと近い距離で接することができ、開業医としてのやりがいを感じるところでもあります。
今後のご展望をお聞かせください。
私は今年、68歳になります。健康面は血圧が高い程度で、今のところは元気でおりますが、いつ体を壊してしまうか、何が急に起こるかはわからない年齢ですので、クリニックの継承についても考えていかなくてはいけませんね。現在は私のほか、スタッフは受付と看護師の2人のみですので、増員も考えているところです。2人のうち1人は10年以上にわたって働いており、患者さんのことをよく知り、親身になって接してくれているのでありがたいですね。この地にクリニックを構え続け、地域の皆さんの健康をこれからも支えていける場所であれたらいいなと思っています。
最後に、地域の方々や読者へのメッセージをお願いします。
通院してくださっている患者さんからは、「私よりも早く死んだらいけないよ!」という温かいお言葉をいただいています(笑)。これからも地域の皆さんと近い距離で、長くお付き合いをさせてもらえたらいいなと思っています。健康に関することならなんでもお気軽にご相談ください。