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高橋 道知 院長の独自取材記事

高橋クリニック

(大阪市平野区/平野駅)

最終更新日:2026/08/12

高橋道知院長 高橋クリニック main

大阪メトロ谷町線の平野駅から徒歩約5分。幹線道路から少し入った、落ち着いた住宅街を歩いていくと、「高橋クリニック」の白い壁と、明るいテラコッタ調のエントランスが見えてくる。吉野・川上村の杉材をふんだんに使った院内には木の香りが漂い、観葉植物や飲み物が用意されたナチュラルで優しい空間だ。院長の高橋道知先生は、東洋医学的なアプローチや治療法を基本としながら、西洋医学の良さも取り入れることで、一人ひとりの患者により適した医療の提供をめざしている。症状の根本を捉えて人間本来の健やかさへ導くことを大切にする高橋院長に、東洋・西洋医学の違いや、同院の診療方針について話を聞いた。

(取材日2026年7月17日)

人間を全体的に診て、根本にアプローチする東洋医学

医師をめざしたきっかけや、開業した理由を教えてください。

高橋道知院長 高橋クリニック1

米国の医療ドラマに憧れ、外科の医師をめざしました。大学病院の三次救急と呼ばれる、一次や二次救急よりも命の危険が高い、最も重篤な患者さんが運び込まれる現場で、執刀に没頭していました。当時は、頭や胸、おなかの手術もすべて自分で対応していて、夜間に急患の呼び出しがかかるとタクシーを飛ばしました。しかし、命を救うという達成感の裏で、拭えない葛藤もあったんです。救急の仕事は危機を脱すれば次の医師へバトンをつなぐ「流れ作業」の一部のような側面があります。また、本来、心と体は切っても切り離せないものです。ただ疾患名をつけることが診断とされ、局所の病変だけを診て、人間全体を診ない西洋医学に、どこかむなしさを抱いていました。心身を切り離さず、人間を全体的に診る東洋医学の思想こそ私が求める医療だという思いが年々高まり、理想とする診療を実践するため、1992年に開業を決意しました。もう34年になります。

なぜ東洋医学に興味を持ったのですか?

幼少期から生きる意義を模索していた私は、学生時代に禅の哲学書を読みあさり、鎌倉の円覚寺で座禅に打ち込むなど、古今東西の思想を探求してきました。その中で出合った東洋医学の考え方の根本は「陰と陽」のバランスです。過剰なものは排出し、不足したものを補いながら、食事や睡眠といった養生といわれる生活習慣の中に、病の根源を見出して是正していきます。対して西洋医学は、検査結果や臨床試験でのエビデンスなどのデータを重視し、悪くなった局所を中心にアプローチします。具体的には、東洋医学では、鼻炎の原因を「食べ過ぎによる胃腸の熱」と捉えた場合、おなかの治療をします。「鼻炎なのにおなか?」と驚かれると思います。局所ではなく体全体や生活を見直し、人間の健康に焦点を当てて根本原因に働きかける姿勢こそが、東洋医学の大きな魅力だと思っています。

診察の流れについてお聞かせください。

高橋道知院長 高橋クリニック2

当院の診察は、患者さんの顔を拝見する瞬間から始まっています。表情や顔つきを診れば、抱えているストレスや不調のおおよその見当がつきます。その後は問診で生活全般をお聞きし、舌診や、おなか・背中の触診へと進めます。特に東洋医学的なアプローチとして、脈や舌、背中の緊張具合を診ることで、ご本人が気づいていない不調の根本原因まで推測することに努めています。患者さんはつらい症状を感じていても、体の「何が悪さをしているのか」まではわからないことが多いもの。だからこそ丁寧な診察で本当の原因を突き止め、体の状態をひもといた上で「こういった治療法がありますよ」と提示し、改善への道筋をともに作ることを大切にしています。

東洋医学と西洋医学の“良いとこ取り”をした治療計画

治療には東洋医学のみを用いているのでしょうか?

高橋道知院長 高橋クリニック3

治療法は東洋医学だけに限らず、患者さんの困り事や要望を一番に考えて決定します。西洋医学と東洋医学にはそれぞれの強みがあります。東洋医学の得意分野として、例えば生理痛では、単に鎮痛剤で痛みだけを抑え込むことをめざすのではなく、漢方で子宮の血流・冷え・自律神経の改善をめざします。一方で、西洋医学の薬が適切と判断すれば躊躇なく処方しますし、心筋梗塞などの急性期疾患であれば速やかに大規模病院へご紹介します。東洋医学と西洋医学が互いの強みで補い合い、患者さんに適した治療計画を一緒につくっていくことこそが、当院のめざす医療です。

どのような漢方薬がありますか?

当院で扱う漢方薬は、携帯しやすく飲みやすい顆粒や錠剤などのエキス剤が中心ですが、それだけにとどまりません。エキス剤はいわば既製品のため、患者さんごとの体質や症状に完璧にフィットしないケースもあるからです。そこで当院では、院内薬局に多彩な生薬を備え、ご希望や症状に合わせて調剤する煎じ薬もご用意しています。不調へのアプローチ以外にも、多様なお悩みに対応可能です。「どのような飲み方が自分に合うか」という段階から丁寧にご相談に乗りますので、どうぞ気軽にお声がけください。

どのような症状の患者さんがいらっしゃいますか?

高橋道知院長 高橋クリニック4

発熱や風邪、腹痛、生活習慣病などに加えて、不眠や頭痛、冷え性、生理痛、動悸などさまざまです。既存の治療で結果が出ず、遠方から来院される方も多いです。例えば、抗がん剤の副作用の負担を和らげたい方や、「西洋薬を飲み続けると肝臓を悪くしてしまう」と心配する双極性障害の方もいらっしゃいます。患者さんには「こうすれば良くなることが期待できますよ」と正しい道筋は伝えますが、本当の意味で治していくためには、患者さんご自身の「治したい」という意識と、日々の取り組みにかかっていると思います。症状が消えると自己判断して通院をやめてしまう方もいると思いますが、数ヵ月後に再発してしまう恐れもあります。「自分が感じている症状」と「本当の体の状態」は必ずしも一致するとは限りません。根本的な要因を解決できるよう、当院は常に患者さんに寄り添い、伴走していきます。

“体を整えて心を治す医療”をめざしていきたい

心の病気で通っている患者さんもいるとお聞きしました。

高橋道知院長 高橋クリニック5

心の病気は心療内科などへ行くのが一般的です。しかし「心の病も体から治したい」というのが私の信条です。日々のストレスが原因で体に生まれる緊張やゆがみが、心の不調を引き起こすことも少なくありません。漢方で自律神経から来る不調を整えたり、背中などの体の緊張をほぐすようにアプローチしたりすることは、脳や心を休ませることにもつながります。当院では統合失調症や双極性障害をはじめ、心の悩みを抱える方も多く来院されます。抗精神病薬などの西洋薬も活用しつつ、従来の治療で改善が見られない場合や副作用でお困りの方には、漢方などを用いて回復への土台を整えていきます。

印象に残っている患者さんはいますか?

まだ、東洋医学を知らなかった頃、三次救急部門での勤務医時代のことです。当直中に搬送されてきた患者さんで、脱水のため大量の汗をかいていました。ところが、いくら点滴で水分を取っても体の内臓に吸収されず、結局亡くなりました。当時はなすすべなく見送るしかありませんでしたが、今なら推測できます。胃腸が冷え切っていたため、いくら水分を与えても吸収できなかったのではないかと。おなかの触診などで冷えを見抜いて温めていれば、内臓の吸収力や循環力を取り戻し、救えたかもしれません。世間では脱水や重い夏バテには点滴が効果的と思われがちですが、冷えた胃腸を放置して点滴しても、根本解決にはならないと思っています。一般論や症状だけにとらわれず、目の前の患者さんの体に直接触れ、原因の本質を見抜くことこそが、医師の役割だと実感しています。

読者へのメッセージをお願いします。

高橋道知院長 高橋クリニック6

健康の基本は日頃の養生、つまり、日々の生活習慣を調え、自らの体と心を大切に養うことにあります。私自身、若い頃は不摂生を重ねましたが、そのツケは10年後、20年後に現れるもの。だからこそ日々の睡眠や食事を丁寧に積み重ねることが欠かせません。食事面では、日本の豊かな旬の野菜を取り入れましょう。食物繊維を取ることで腸内細菌の中で多くを占める日和見菌を味方につけ、健康につなげると良いと思います。体の不調や緊張は、自己判断だけで本当に治ったかどうかを見極めるのは困難です。症状が落ち着いたからといって放置せず、気になる場合はいつでも気軽にご相談ください。