小田 弘明 院長の独自取材記事
小田内科クリニック
(広島市東区/天神川駅)
最終更新日:2021/10/12
広島市東区曙、あけぼの通り沿いに構える「小田内科クリニック」。院長の小田弘明先生は広島県で生まれ育ち、広島大学医学部を卒業。勤務医やアメリカ留学などを経て、2002年に開業した。一般的な内科治療に加えて、専門である腎臓病の治療に心血を注ぐ。「人工透析を受ける患者さんは生活の制約が多い。そんな方々の力になりたい」と、スタッフとともに24時間体制で診療にあたる。生活習慣病の患者に向け、管理栄養士による栄養指導や調理実習を行うなどの取り組みも実施。「医師の仕事はライフワーク」と語る小田先生は、穏やかで謙虚、そして、何よりも患者思い。長年通う患者も多く、地域で愛されている様子がうかがえた。今回は、腎臓病の治療の話を中心にじっくりとインタビューさせてもらった。
(取材日2021年4月1日)
透析患者がどこからでも通いやすいようこの場所で
先生はなぜ医師を志されたのですか?
小学生の時、祖父、祖母が高血圧、脳卒中、半身まひで亡くなりました。父は9人きょうだいなのですが、年を重ねて9人とも同じように高血圧、脳卒中、半身まひになったのです。原因は何だろうと考えたら、わが家は先祖代々塩田を手がけていて、塩分をたくさん取っていたのですね。そういった一連の状況から、家族をなんとかしたいと思うと同時に、自分も病気になりたくないと思い、漠然と医療の分野に関心を抱くようになりました。私の兄は現在、精神科医師で、広島市内で開業しているのですが、その兄が広島大学医学部へ進んだのを見て、私も医師の道をめざすことにしたのです。
開業までの経緯をお聞かせください。
研修医時代は脳神経外科へ進むことも考えましたが、まずは予防が大事だろうと思い、内科へ。特に腎臓内科を専門に経験を積んできました。家族を連れてアメリカに留学したこともあります。子どもが病気になって現地の医療機関にかかり、日米の医療の違いを身をもって感じるなど、医師としての勉強以外にも学ぶことが多かったですね。留学から戻って現在の国立病院機構呉医療センターに4年ほどお世話になり、2002年5月にこの場所で開業しました。
開業にあたりこの場所を選んだのはどうしてですか?
広島には当時、透析を行う医療機関がぽつぽつとありましたが、隣接する府中町だけ透析を行う医療機関が不足していました。そこで、府中町近くで開業しようと、家族で車に乗って空きテナント探しに出かけました。でも、なかなか希望に添った場所がなく諦めかけていたところ、息子が「ここにあるよ」と見つけてくれたのが今の場所です。もともとはジーンズ店だったのですが、ここは良さそうだと思って決めました。大通りに面していてクリニックのすぐ前に車を止めることができ、バス停もすぐ近くなんです。人工透析は週3回行うのが標準ですので、どこからでも通いやすいという点が気に入りました。
腎臓病、生活習慣病のための栄養指導、調理実習も
腎臓病と透析治療について教えていただけますか?
腎臓は、血液をろ過して尿を作り、老廃物や余分な水分や塩分を体の外に排泄する役割を担っています。ところが、腎臓の機能が低下して腎不全になると、この機能が低下してしまいますので、体内に塩分がたまって高血圧に。血圧が高い状態が続くと、腎臓の血管が障害されて機能低下がさらに進み、悪化すると人工透析が必要になることがあります。人工透析は、本来の腎機能の代わりに人工的な方法で血液から老廃物や余分な水分や塩分を排出する方法です。ただ、週3回、1回4時間程度の通院治療が必要な上、食事や飲水の制限などもあり、これを続けるのは大変なことです。そういった患者さんをなんとかして差し上げたいという思いで、当院では30台以上の透析装置を備えて透析治療を行っています。
腎臓病や糖尿病、高血圧の患者さんのために栄養指導も行われているそうですね。
腎不全の方は、タンパク質、塩分、カリウム、リン、水分の制限などの食事管理が必要になります。もちろん糖尿病や高血圧など生活習慣病の方も食事のコントロールは欠かせません。でも、実際にどのような料理を作ったらいいかというと難しいところですよね。当院には管理栄養士が2人在籍しており、クリニックの2階にある調理実習室で栄養指導と調理実習を行っています。患者さん参加型、双方向でやりとりしながら、栄養の取り方や調理方法などをお伝えするというかたちです。興味のある方はお気軽にご参加いただければと思います。
腎臓病の患者さん向けの食事とは、具体的にどういったものなのでしょうか。
基本的には、炭水化物、エネルギーを十分取りながら、体に良いタンパク質を適量取って、良くないタンパク質を控えます。お米、うどん、パンは炭水化物に分類されますが、植物ですから植物のタンパク質も持っているんですね。でも、タンパク質は燃焼すると窒素を含んだ老廃物になり、排せつする時に腎臓に負担がかかりやすいんです。そのため、お米、パン、麺を食べるときは窒素が出にくいものを選ぶという指導をします。塩分を控えるためには、例えば、塩の代わりにだしを使って味つけをします。また、焼き魚などは、焼き目をつけると素材の風味を生かして少ない塩分でもおいしく食べられるようになります。こういった工夫がいろいろあるのです。栄養指導と調理実習を通して、最初は「腎臓病食なんてとても食べられない」とおっしゃっていた方が「食べてみようか」と意識が変わってくることも少なくありません。
患者と一緒に考えながらオーダーメイドの医療を提供
診療の際に先生が大切にしているのはどのようなことですか?
同じ病気だとしても、お一人お一人改善すべき点は違うはずです。そこを患者さんと一緒になって考えていく治療をしたいと思っています。治療のガイドラインはありますが、それでは到底追いつかないものもありますので、患者さんそれぞれに合わせてオーダーメイドの医療を提供していくということですね。ですから、不安なこと、疑問に思うこと、気になることがあれば、些細なことでも構いませんので、気兼ねなくお話しいただければと思います。
お休みの日はどのように過ごされていますか?
人工透析は何かあったらすぐに対処が必要ですから、24時間365日対応しています。夜でも休みの日でも電話がかかってくることもあり、何もない日のほうが少ないくらい。電話がなかったら患者さんが健康な証拠ですから、うれしいなと思いますね。また、医療は日進月歩。新しい情報をいち早くキャッチアップして患者さんに届けるため、日々情報収集と勉強にも努めています。「仕事が趣味」と言ってはなんですが、もうライフワークですね。お休みらしい休みはありませんが、医師になってからずっとこういう生活を続けていますので、6時間以上寝ると腰が痛くなっちゃうんですよ(笑)。ですから、今のスタイルが私には合っているみたいです。
読者へのメッセージと今後の展望をお願いします。
私は日々、患者さんの健康を願って治療をしています。これからもその気持ちは変わりません。風邪や腹痛など身近な病気はもちろん、高血圧や糖尿病などの生活習慣病、腎臓病の方もお困りのことがあれば遠慮なくお越しいただければと思います。そして、開業して20年、クリニックの老朽化が進み、手狭になってきたこともあり、今後は患者さんにゆったりと診療を受けていただけるような環境づくりにも力を入れていきたいと考えています。