田島 厳吾 院長の独自取材記事
すわやまクリニック
(目黒区/中目黒駅)
最終更新日:2025/01/31

中目黒駅から徒歩7分、駅前の喧騒から離れた昔ながらの閑静な住宅街にある「すわやまクリニック」。洋館風の家屋の階段を登ると、小さな庭が見えてくる。その向こうで待っていてくれるのが、温かな笑顔の田島厳吾院長だ。大学病院などで長年にわたり乳腺外科の研鑽を積み、手術経験も豊富。現在も外勤先でメスを握る日々で、患者の約半数は乳がんに関する相談で訪れる。一方で、さまざまな訴えに幅広く応えるプライマリケアにも力を入れてきたため、家族のかかりつけ医として頼りにする近隣住民も多い。高い専門性と幅広いケア、両輪での診療にかける思いなどを詳しく聞いた。
(取材日2023年9月27日/更新日2025年1月22日)
思い出の家屋を改築したアットホームなクリニック
こちらは以前、おじいさまのご自宅だったそうですね。

玄関前の小さな庭にも、診察室から見える中庭にも、僕が子どもの頃から生えている木があるんですよ。母方の祖父は国立がんセンターの創立にも携わった勤務医でした。晩年は大病を患い、自分がもう長くはないと知っていたのかもしれません。僕が医学部に進んだのをそれは喜んで、時々この家に呼んではいろいろな話をしてくれました。祖父は第2次世界大戦中、軍医として激戦地のフィリピンに赴き、戦後は捕虜として現地の病院で労働。過酷な経験でしたが、その中でアメリカで始まったばかりの全身麻酔を学ぶことができたんです。帰国後、全身麻酔を用いた肺がん手術のパイオニア的存在となりました。今では待合室になっているこの辺りの部屋で、大人のネクタイの締め方、お酒の飲み方なども教えてくれたのが懐かしいですね。
思い出深い場所で開業するまでの経緯を教えてください。
大学卒業後は国立がんセンター中央病院などで研鑽を積み、消化器外科や内分泌外科なども経験しましたが、最終的には乳腺外科を選びました。父が乳腺外科に精通していたという影響もありますが、個人的に強い興味を持つようにもなっていたからです。乳がんのオペは病巣をきちんと摘出するだけではなく、きれいに仕上げる繊細な技術が求められます。さらに、抗がん剤の種類も豊富でホルモン治療などの薬物療法も可能な、内科的な要素も強い点にも惹かれました。ただ、大規模病院ではどうしても大勢の患者さんを次々と診ていかなければいけません。もっと一人ひとりと向き合う診療をしたいと開業を考えるようになった時、すでに祖父母が他界していて、空き家になっていたこの家を思い出したんです。
間もなく開業20年を迎えますね。

幼少期から住んでいて愛着のある諏訪山の地域医療に貢献したいという思いで2005年に開業しましたが、駅前の便利な場所にあるわけではないですし、当初は不安もありました。でも、きちんとした診療をコツコツ続ければ、きっと皆さん足を運んでくださると思ったんです。おかげさまで今ではすっかり地元に根づくことができました。親御さんやお子さんを紹介してくれて、いつの間にか家族全員のホームドクターとして頼りにしていただいていることも多く、医師冥利につきますね。一方、一般内科と同じくらい乳腺外科の患者さんも診ているのですが、こちらは都外からの方も少なくありません。必要があれば、僕が東京共済病院や東海大学医学部付属東京病院で手術をすることもできます。また、開業前に僕が大学病院で執刀して以来の長いお付き合いの方も多くいます。
専門とする乳腺外科は早期発見に注力。手術経験も豊富
乳腺外科にはどのようなタイミングで受診をしたら良いのでしょうか。

乳がんは早期発見が可能で予後もいいとはいえ、ここ10年で患者数は倍増していて、年間約9万人の新規患者が発生しているとされています。40代、50代がピークですが、30代でも80代でもリスクはあるので、30歳を過ぎたら定期的にチェックしていただければと思います。内臓のがんなどと違って触診でも探れますし、注意のしがいがあるとも言えます。やはり、胸のしこりを自覚していらっしゃる患者さんが多いですが、お気づきではない場合も少なくありません。僕はマンモグラフィの読影に関しても、しこりになる前の超早期乳がんを数多く探ってきた経験もあるので、特に自覚症状はないものの家族歴があって心配という方もご相談ください。ただ、若い方は乳腺が厚くてマンモグラフィでは見えにくい場合もあるため、まずは超音波検査をお勧めしています。
診察室のベッドサイドに超音波検査装置を置き、内科診療でも活用されていますね。
超音波では乳腺だけではなくリンパ腺、甲状腺、頸動脈なども見ています。3タイプのプローブを装備して、体中ほぼすべてを網羅していますね。内分泌外科での経験を生かして、バセドウ病などの甲状腺疾患の患者さんも継続して診ています。また、消化器外科でキャリアをスタートしているので、胃、大腸、肝臓などに関してもある程度は専門的なスキルがあります。高度医療が必要となったら患者さんのご希望に応じて紹介できるように、東京共済病院、慶應義塾大学病院などと密に連携しています。プライマリケアに携わる医師は、信頼できる紹介先のカードがいかに多いかが大事です。また、目黒区医師会副会長として目黒区内のクリニック同士の連携も推進していきたいと思っています。
診療にあたって大切にしていることをお聞かせください。

患者さんが自分の友達、家族だったらどうするかと考え、病気だけではなくその人の背景を見ることを大切にしています。患者さんと同じ目線になってライフスタイルを理解し、お話にできるだけ耳を傾け何を求めているのかを探り、心配や動揺に寄り添います。実際、本当の友達も「厳吾、診てくれ」と、よく来るんですよ。小中学校時代からの同級生たちなのですが、だんだん、糖尿病、痛風、高コレステロール血症などを患う年齢になってきたのだなと、そして僕自身、健康に注意しなければと思うようになりました。
日常的な内科の悩みも気軽に相談できる癒やしの空間
先生ご自身の健康維持法はありますか。

走ることですね。目黒川、西郷山、世田谷観音などのコースを、その日の気分で軽くジョギングしています。2019年の目黒区主催のマラソン大会に参加して完走できた時は「練習して良かった!」と思いました。新型コロナウイルス感染症流行で中止になったままですが、再開したらまたエントリーしたいのでトレーニングは続けています。週に1回は所沢の病院、月に2回は東京共済病院、東海大学医学部付属病院などへ出勤をしているのですが、その日は最寄り駅の1つか2つ前で電車を降りて走ることもあります。
今後の展望についてお聞かせください。
これまで続けてきたことを、まずは踏襲していきたいです。開業以来ずっと院内処方なのですが、それは薬を受け取るためだけに諏訪山を降りるお手間をかけたくなかったからです。近所の方々に配慮しながら、風邪、腹痛、皮膚のかぶれなどの日常的な悩みを気軽に相談できる場所であり続けたいと思っています。同時に、専門としてきた乳がん関係のご相談にも変わらず力を入れていきたいです。精神的にもつらい状態でいらっしゃる患者さんも多いので、スタッフたちの温かな対応もありがたく思っています。これからも力を合わせて和気あいあいとした雰囲気を守っていきたいですね。同時に、何か新しいことも始めてみたいという希望もあります。長年通ってくださっている方々もご高齢になってきたので、往診や訪問診療も必要になってきています。患者さんの新しいニーズに応えていきたいですね。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

どなたでも心安らかに過ごしていただけるよう、癒やしの色である緑をベースにした院内づくりにこだわりました。スリッパ、椅子、天井、さらにパッと見たかぎりでは白にしか見えない壁も、じつは薄いグリーンなんです(笑)。諏訪山もこの20年で変化もあり、大きなお屋敷の跡にマンションが立つなどして、子育て中のファミリーも増えています。長年通ってくださっている患者さん同様、新しい患者さんも歓迎しています。同じマンションの人たちがたまたま前後の予約枠で、待合室で楽しそうにお話ししているのを見るのは僕たちの喜びでもあります。気軽に立ち寄っていただければうれしいです。