片岡 伸久朗 院長、杉廣 貴史 副院長の独自取材記事
片岡内科クリニック
(広島市安佐南区/緑井駅)
最終更新日:2025/04/28

JR可部線・緑井駅から徒歩3分の「片岡内科クリニック」は、2003年に片岡伸久朗院長が開業。山陽自動車道・広島インターチェンジがすぐ側にあり、遠方からも通院しやすい。片岡院長は1983年に広島大学医学部を卒業後、西城市民病院に勤めワシントンに留学。その後広島大学や安佐市民病院で尽力してきた。杉廣貴史副院長は、2002年香川医科大学(現・香川大学医学部)を卒業後、広島大学病院や市立三次中央病院など総合病院にて研鑽を積み、2022年から同院に勤務。日本糖尿病学会糖尿病専門医である片岡院長・杉廣副院長が二人三脚で糖尿病と向き合い続ける。「技術や知識を常にアップデートしていきたい」という片岡院長と、「糖尿病に対する差別をなくしたい」という杉廣副院長に治療への思いを詳しく聞いた。
(取材日2025年1月15日)
「糖尿病のある方」の生活の質を向上するため尽力
医師をめざしたきっかけを教えてください。

【片岡院長】父が歯科医師でしたので子どもの頃から医療の世界に興味を持っていました。手先の器用さには自信がありませんでしたので、外科の医師や歯科医師ではなく、内科の医師の道を選びました。結果的にとてもやりがいを感じていて、選んで良かったと思いますね。
【杉廣副院長】小学5年生の時に1型糖尿病になったのですが、当時は通院するのが嫌で、自身が医師になれば通院しなくても済むようになると思ったのが最初のきっかけです。実際には医師が自身の治療をすることはできないため、その野望は達成できませんでしたが、当時の思いをベースになるべく通院が負担にならないようにと心がけています。高校生の頃に血糖管理が悪くなり、松江赤十字病院に入院したのですが、そこで初めて1型糖尿病に専門的に取り組んでいる先生と出会い、その姿に憧れ、本格的に医師への道をめざし始めました。
このクリニックを開業されたきっかけを教えてください。
【片岡院長】患者さんからこの辺りにクリニックビルができると聞いたのがきっかけですね。高速道路のインターチェンジからも近く、緑井駅もそばにあり、患者さんに来ていただくにはとても良い場所だと思いました。実際、想定していたとおり遠方からも来院していただけています。平日はご高齢の方が多いのですが、土曜日は糖尿病で悩まれる方の中でも、若い年代の方が多くいらっしゃいます。
【杉廣副院長】「広島いちがたの会」という1型糖尿病の集いの世話人として一緒に活動する中で、地の利に優れた当地で1型糖尿病診療に取り組むことを勧めていただきました。これまで勤めてきた病院でも遠方から通院してくださる方は多かったのですが、電車・バス・自家用車での交通利便性があり、1型糖尿病における専門性の高い医療をより広域の方に提供することが可能になると思い、入職を決心しました。
糖尿病の患者さんと関わる上で心がけていることは?

【片岡院長】糖尿病の管理は血糖コントロールだけでなく、合併症のチェックと糖尿病教育が重要です。特に合併症としての動脈硬化性疾患の早期発見・早期治療にも力を入れており、一つ一つの検査の意義をきちんとお伝えするようにしています。
【杉廣副院長】糖尿病治療の目標は「糖尿病のない人と変わらない寿命とQOL」です。糖尿病のある方が糖尿病と上手に付き合いながら、糖尿病のない人と同じように生活をし、社会活動をして生きていくことをサポートするのがわれわれ糖尿病専門医の役割だと思っています。糖尿病は上手に管理できていれば、健康な人と何ら変わりのない状態です。であれば患ってはいないと思うので、なるべく「患者さん」という言葉は使わないようにしていますね。「糖尿病のある方」という表現をするようにしています。
他の専門との連携を取り、患者を全面的にサポートする
糖尿病に関する患者さんの会も開催されているのですね。

【片岡院長】以前は食事会やウォークラリーなども行っていましたが、今はコンサートと講演会という形で患者さんのための会を開いています。講演会は食事や運動、インスリンなどの薬物の話をはじめ、糖尿病と関係の深い肝臓や心臓、腎臓などいろんなテーマで、ご専門の先生にいらしていただいて行っています。
糖尿病について知っておくべきことはありますか。
【杉廣副院長】糖尿病について、皆さんに正しい知識を持っていただきたいですね。糖尿病への誤った認識による社会的偏見は、スティグマ(不名誉な烙印)と呼ばれます。具体的には、生活習慣が悪いから発症した、糖尿病だから早死にするなどと周囲から決めつけられ、それによりだらしない人と扱われたり、生命保険や住宅ローンにおいて不利を被ったりすることもあります。生活習慣は発症の一因にはなりますが、元の体質も大きく関係します。日本で糖尿病の方が増加した原因の一つは高齢化社会ですが、年を取ることは誰も避けられません。また治療の発達により、糖尿病のある人とない人での寿命差は年々縮小しています。私はJADEC広島(広島県糖尿病協会)の会長を務めており、このスティグマの払拭をめざし、糖尿病がある人々の権利を守り、特別な病気でないことを啓発する活動をしています。
日々の診療で大切にされていることを教えてください。

【片岡院長】糖尿病が専門とはいえ、血糖値だけ良ければ問題ないとは思っていません。糖尿病の方も他の病気になる可能性があるため、日本内科学会総合内科専門医として幅広い病気への理解を深め、糖尿病の方の病気に対して、時には他院と連携を取り対処します。また、糖尿病でない方と同様にがん検診や骨粗しょう症予防の啓発にも取り組んでいます。
【杉廣副院長】「糖尿病専門医はキャッチャーの役割だ」と初期の指導医に教えられました。糖尿病のある方をピッチャーとした場合、打たれないよう、つまり上手に管理できるよう一緒に投球内容ともいえる治療内容を組み立てていきます。もし打たれたら、要するに合併症などが起きた場合は、他科に診療を依頼します。そのために普段から全身を診る心がけと知識、他科との連携が必要です。片岡院長は本当に守備範囲が広く、深く理解されていますので、私も少しでも追いつけるように日々勉強が欠かせません。
どんなスタッフさんがいらっしゃいますか。
【片岡院長】向上心のあるスタッフばかりで、それぞれが自分の役割に責任を持ち積極的に患者さんに対応してくれています。スタッフの中には管理栄養士が1人、臨床検査技師が5人、看護師が5人います。また6人の受付スタッフについても糖尿病の勉強会に参加するなど学んでくれており、窓口としてポイントを押さえて患者さんの話を聞いてくれています。医師への報告も徹底していますので、とても頼りになります。
糖尿病に関する悩みを、気軽に相談してほしい
今後の展望についてお聞かせください。

【片岡院長】よくT字型の医師という言い方をしますが、糖尿病については縦に深く見る、全体についても幅広く見るだけでなく、深くも見ていきたいと思います。糖尿病である方が他の疾患にも悩まされることがあるため、近隣の医師と緊密な連携を保ちながら講演会などで先進の医療についても学び続け、常にアップデートしていきたいと思っています。医師として、より良質な医療をめざすことには終わりがないと感じますね。
【杉廣副院長】片岡院長が築き上げられたこの恵まれた環境の中で、自身が1型糖尿病との付き合いの中で得ている知識、経験、人的交流を生かした診療を皆さんに提供し続けていきたいと思います。また社会活動を通じて、今後も糖尿病であるすべての方が生きやすい世の中にしていきたいです。
最後に、読者にメッセージをお願いします。

【片岡院長】当院は院内検査が充実しており、血糖値・HbA1cだけでなくほとんどの生化学検査、血栓や心不全の検査、尿中のアルブミン検査、血液ガス分析などが即日で結果を出せます。そのため、より早く病態に即して対応できると考えております。
【杉廣副院長】インスリンでの治療に関してお悩みのことがあれば、ぜひ当院に相談に来ていただければと思います。当院は検査機器など高い水準のものを取りそろえており、インスリンの自己分泌能なども院内で検査し、即日治療方針に反映することができます。2型糖尿病では適切な評価を行うことで、インスリンの注射回数が減らせたり、インスリンから離脱できるケースも少なくありません。インスリンを使っていて不安、疑問に思うことがありましたら、ご来院ください。