渡辺 伸明 院長の独自取材記事
渡辺内科クリニック
(西宮市/西宮駅)
最終更新日:2025/07/11

阪神本線・西宮駅から徒歩1分の便利な場所にある「渡辺内科クリニック」。院長の渡辺伸明先生は、大学院で糖尿病の研究を行い、その後も勤務医として糖尿病の診療に携わってきた。そして、2001年の開院以来、糖尿病専門クリニックとして診療を続けている。同院は、患者に最良の医療を提供するため、医師や看護師、薬剤師、管理栄養士などからなるチーム医療を推進している。利便性の高い院内処方を行うとともに、糖尿病療養指導への専門性が高いスタッフを中心に知識や技術のアップデートも怠らない。「マラソンの伴走のように、患者さんの人生に寄り添う治療を心がけています」と語る渡辺院長に、糖尿病診療にかける思いを聞いた。
(取材日2025年6月16日)
糖尿病治療は、病気ではなく人を診るという医療の原点
開業の経緯や糖尿病を専門に選んだ理由を教えてください。

大阪大学医学部を卒業後、大学院で糖尿病とそれに関連するホルモンの研究に従事しました。その後、医学博士号を取得し、大阪大学医学部第2内科や兵庫県立西宮病院で研鑽を積み、患者さん一人ひとりにしっかり向き合って診療したいと考え、2001年に開業しました。糖尿病治療には、病気ではなく人を診るという医療の原点に近いものを感じます。患者さんと人生を共有しながら、生活環境、仕事、家族構成などの背景を踏まえて治療を進められる点が魅力ですね。また、慢性疾患なので長いお付き合いになります。マラソンで伴走する感覚で患者さんに接することができる点も、診療の魅力ですね。糖尿病治療においては、全身に目を配る繊細さが求められますが、医療人としてはやりがいのある疾患だと思います。
この地を選んだ理由は何だったのでしょうか?
以前勤務していた西宮病院に近く、開業後も連携が取りやすかったからです。西宮病院は総合病院で、多くの科を備え、検査機器も充実しているため、紹介して精密検査や高度な治療が可能です。また、西宮市は教育機関や文化施設が集中し、教育や文化活動に適した環境が整っている文教都市です。そのせいか、当院が糖尿病の専門診療をしていることを理解して受診してくれる患者さんが多く、糖尿病の治療は当院で行い、それ以外の疾患は他のクリニックに通うなど使い分けておられます。クリニックの専門性を信頼して治療を任せてくれますし、予約もしっかり守ってくださるので、とても診療しやすいです。
糖尿病治療の方針を教えてください。

初診では病状をお聞きし、各種検査を行い、問診内容と検査データをもとに診察をします。患者さんの生活背景や治療歴、疾患に対する理解の程度などが大切になるため、初診時に時間をかけ、しっかり聞き取りをします。さらに、糖尿病治療には長い年月がかかり、完全に治癒することはないため、治療を中断すると再び悪化することも説明します。患者さんの要望はさまざまで、どんな薬を使っても良いから症状を改善してほしいという方もいれば、薬はできるだけ使わないでほしいという方もいます。また、事情があって運動できない人、仕事柄、外食が多くなる人も。つまり、同じ病状でも、生活環境、年齢、性格などによって治療法が変わってきます。糖尿病はオーダーメイド治療といわれるのは、そうした理由からです。例えば、すべて守れそうな人には生活改善を図り、さまざまな理由で難しそうな人には一部だけでも変えてもらうなどの工夫をしています。
患者に最大限の医療を提供するためのチーム医療
診療の際、心がけていることを教えてください。

患者さんとじっくりお話をすることです。近年、医師がパソコンの画面ばかり見て、患者さんの顔を見ないという話をよく耳にします。そこで当院では、紙のカルテと電子カルテを併用しています。患者さんとお話しする際は、紙のカルテをメモ代わりに使い、電子カルテは同席したスタッフが入力します。また、「食事は腹八分目に」とか「ヘモグロビンを7%以下に」など同じことばかり言われつらくなる、という印象をお持ちの方もおられるかもしれませんが、紙カルテに前回何を伝えたかが書いてあるので、同じ話を繰り返すことなく、患者さんに「受診して良かった」と感じていただける時間になるように心がけています。
内装や設備でこだわっている点はありますか?
当院は待合室を囲んで、採血室、受付、薬のお渡し、栄養相談室、診察室、生理検査室があります。廊下がないため、患者さんの移動がスムーズです。また、糖尿病の合併症を検査するための検査機器は一通りそろえています。ヘモグロビンや血糖値を即時測定する機器やABI(足関節上腕血圧比)検査、神経伝導速度検査、眼底カメラをはじめ、心電図、エックス線撮影、エコー、検尿などです。自動血圧計はあえて置いていません。血圧を測るときに不整脈が見つかることもあるんです。検査結果の説明だけして終わりではなく、診察の中で医師が患者さんに触れて得る情報も大切だと考えています。
スタッフについて教えてください。

当院はチーム医療にこだわっているため、院長の私の他、非常勤医師7人、看護師5人、臨床検査技師4人、管理栄養士4人、薬剤師3人、事務職4人で体制を整えています。特徴的なのは、薬剤師が常駐し院内処方をしていることです。クリニックの近くの調剤薬局ならコミュニケーションも取れるのですが、遠くの調剤薬局に処方箋を持って行かれると処方意図が伝わらなくなってしまう可能性もありますからね。その点、院内処方であれば、薬剤師とカルテを見て患者さんの病状が把握しやすく、詳しい説明ができます。さらに糖尿病療養指導に詳しいスタッフも多く、彼女たちが新人のスキルアップのため、マンツーマンで指導しています。当院に勤務してから、糖尿病に興味を抱くようになるスタッフが多くいます。
勉強会にも積極的に参加していると伺いました。
糖尿病の診療で大切なのは知識や技術をアップデートすることです。開業すると勉強会に出席しなくなる医師もいますが、私は最新情報にふれるため、毎回出席しています。スタッフにも積極的に参加してもらい、意欲がある人には発表もしてもらっています。それによって、クリニックの診療から得た知見を発信し、評価を受けられます。また、患者さんの診療方針を話し合うために、スタッフによる症例検討会も定期的に実施しています。
危険な合併症の兆候が見られたら適切な医療機関を紹介
医療連携について教えてください。

地域の病院の診療内容や検査機器、技術を把握しているので、適切な医療機関を紹介できます。特に網膜症など目の合併症の頻度が高いため、西宮市内の眼科と連携し、検査や治療が必要なときは患者さんの自宅近くのクリニックを紹介しています。それでもなかなか受診していただけない場合があるので、小さな紙に当院での簡単なデータを書いて渡すなど、必要な医療機関へかかってもらえるようサポートしています。糖尿病患者の死因の1位はがん、2位は感染症ですが、次が血管疾患です。そのため、心電図やエコーで循環器疾患が見つかった場合は、提携する医療機関に詳細な検査を依頼します。また、貧血が進んでいたり、便潜血があったりする場合などは、胃や大腸など消化器疾患を疑い、専門クリニックで内視鏡検査をお願いしています。
近年、糖尿病の治療法に変化はありますか?
最近よく使われるようになった治療薬にSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬があります。両者に共通しているのは、血糖値の低下が期待できる点で、前者には心疾患や腎疾患の経過改善も期待できます。薬の活用によって、人工透析になる患者さんが減っていけばと願っています。また、体重を減らすことができれば、治療の進みが良くなることが期待できます。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

患者さんに十分な医療サービスを提供するため、チーム医療を中心に、充実した診療体制を維持していきたいと考えています。また、患者さんが将来も安心して通院できるよう、後進の指導にあたり、その中から当院を継承してくれる人が出てくればと思っています。現在、私が担当しているのは全患者の半数くらいなので、少しずつ他の医師の割合を増やしていくつもりです。糖尿病は保険診療の範囲内で治療しますが、その制限の中で患者さんのために最大限できることをめざしています。治療に対して悩んでいたり、現状の治療法に満足していなかったりする場合は打開策を提示できると思いますので、ぜひご相談ください。