梅本 真三夫 院長の独自取材記事
うめもとクリニック
(枚方市/長尾駅)
最終更新日:2025/07/04

杉山手バス停留所のすぐそばにある「うめもとクリニック」は、内科、呼吸器内科、循環器内科を扱い、2002年の開業以来、地域の患者の健康を数多く支えてきた。「幅広い症状の患者さんに対応し、地域医療のゲートキーパーとして尽力することが私の役割」と語る梅本真三夫院長。クリニックを支えるスタッフもベテランぞろいで、その安心感はクリニックの温かい雰囲気にも表れている。落語好きな梅本院長は、その軽妙な語り口も魅力の一つであり、相談に訪れる患者に対しても等身大の言葉でわかりやすくアドバイスを行っている。そんな梅本院長に、診療に対するこだわりや地域医療への想いを聞いた。
(取材日2025年4月24日)
地域医療のゲートキーパーとして、幅広い症状に対応
クリニックの患者層や主訴について教えてください。

この辺のエリアは古くからの住宅も多く、開業当初は中高年の方が多かったのですが、最近は世代交代や住宅開発の影響もあり、子育て世代など若い方も増えました。現在は中学生くらいの方からご高齢の方まで、幅広い世代の方が来院してくださっています。なるべくたくさんの患者さんが来院できるよう、診療時間はできる限り幅広く設けており、朝8時から診療を開始しています。内科や呼吸器内科などを扱っていますので、多岐にわたる症状の方が来られます。風邪や咳はもちろんですが、頭痛や腹痛、気分が落ち込むなど精神的な症状や、水虫などの皮膚の症状まで何でも相談に来られますね。
地域のかかりつけ医として、意識されていることはありますか?
私の仕事は、地域の一次窓口の役割を果たすゲートキーパーと考えています。門戸を広く構え、どのような症状の患者さんもまず受け入れることを心がけています。病状や重症度などを評価をした後に当院で診察するか、専門外であれば他の病院へ紹介するかを判断しています。紹介後もそれで終わりではありません。紹介状は綿密に作成し、紹介先の医療機関からはフィードバックをもらい、その後の診断や治療経過についても極力把握するようにしています。近隣の医療機関と常日頃から連携を取り、迅速に適切な場所へ患者さんを導くことこそ、開業医の重要な役割だと思っています。時には手術や検査を迷っている患者さんの背中を押すこともありますね。医療情報が膨大なために、患者さんがご自身で判断するのが難しいケースも多々ありますので、そんな時は選択や決定を患者さんに丸投げせずに、水先案内人としてサポートすることも意識しています。
診察におけるこだわりはありますか?

1つ目は紙カルテです。紙カルテを使い続ける理由は、学生時代から慣れているため使い勝手が良いことに加え、書きながら自分の考えを整理できる点です。診療中に患者さんの顔を見ずに画面ばかり見るのは避けたいと思っていますし、患者さんとのコミュニケーションの中で得た気づきをしっかり記録することのほうが私には合っていると思います。2つ目はエックス線フィルムです。パソコンの画像で見るのではなく、自分の目で透かしてみたり、斜めから見たり、さまざまな角度から読み取ります。フィルムのほうが比較読影がしやすく、慣れ親しんだ方法を使うことで適切な診断へとつながると考えています。その一方で、パソコンでの事務作業やオンラインでの予約受付などは取り入れて、良いとこ取りの柔軟でハイブリッド型のクリニックをめざしています。
問診を重視し、経験知をフルに生かした診療を実施
新型コロナウイルス感染症を振り返って感じることはありますか?

新型コロナウイルス感染症が増えた当初は、これまでの歴史で猛威を振るったペスト、天然痘、コレラ、スペイン風邪……それらに対峙した古人に思いをはせながらも、得体の知れない相手への不安から、まるでお化け屋敷に迷い込んだような感覚を味わいました。そんな状況でも、手探りで情報を集め、無我夢中で出来る限りの感染症対策やPCR検査、ワクチン接種などに対応してきたことで、結果的にさまざまな面でクリニックの体制がバージョンアップしたとも考えています。パンデミックから数年たった今、記憶は風化しつつあり、過去の出来事のような風潮ではありますが、次のパンデミックへの備えとして、今回の経験を決して風化させず、振り返りと反省・分析を重ねることが必要だと考えています。現在も時々不意打ちのように感染者が出ることがあるため、感染症の診察は、新型コロナウイルスに準じた対応をしています。
咳の治療についてもお聞かせください。
百日咳の流行もニュースになっていますが、見分けるのはとても難しいですね。咳の症状は人それぞれ異なり、100人いれば100通りのパターンがあります。理論やガイドラインを参考にしつつも、個々の症状に応じて考える必要があり、応用問題に近い面があります。そのため、診断においては問診が非常に重要な役割を果たします。患者さんの話を丁寧に引き出しながら、「何かおかしい」と感じるポイントを掴むことで、おおよそ8割の見立てがつくので、その後、必要な検査を通じてデータを収集します。こうした問診については、経験知がものを言う領域でもあります。画一的な検査や診断に頼るのではなく、患者さん一人ひとりの状況に応じた対応を重視しています。
頼もしいスタッフの方がそろっていると伺いました。

当院のメンバーは、医師である私と、看護師、事務スタッフの計6人です。20年近くほぼ同じメンバーでやってきて、一緒に歳月を重ねてきました。とにかく皆とても仲が良くて、明るく元気。地元出身のスタッフもいるため、中には患者さんと地域コミュニティーで深くつながっている人も。アットホームな雰囲気で接してくれています。ベテランぞろいで頼もしい限りです。クリニックを五重塔に例えるなら、要となる心柱は間違いなくスタッフたちです。医師一人でできることには限界があり、日々の診療はスタッフの支えによって成り立っていると実感しています。
これからも地域の健康を守り続けていくために
先生ご自身が書いた本を出版されたと伺いました。

桂真風というペンネームで『Passengers』という本を出版しました。電子版もありますよ。医師人生の中で感じた想いを少しずつ書きためていて、いつかまとめて一冊の本にしたいと考えていたのですが、新型コロナウイルスの流行がきっかけで出版となりました。これまでさまざまな患者さんの人生に伴走し、向き合い、そして看取ってきました。自分という医療人の中に、生き続けている人々の想いをつづっています。
新しい試みも始めているそうですね。
はい、ピラティススタジオの協力で、月に1度、休診日にクリニックの待合室を利用して教室を開催しています。主に高齢の方が参加されています。姿勢の悪化がさまざまな病態や不調を引き起こす可能性があるため、ピラティスを通じて姿勢改善を図り、健康維持をめざしています。ピラティスと聞くとハードなイメージを持たれるかもしれませんが、70歳の私でも無理なく参加できる内容です。初めてピラティスに挑戦される方も、なじみのあるクリニックの待合室なら気軽にご参加いただけるのではないでしょうか。
今後の展望をお聞かせください。

「いつまでも元気」というのは童話の世界の話で、私も古希を迎えます。診療の質を維持しつつ、地域の患者さんを長く診ていける体制を整えるために、少しペースを落とす必要があると考え、スタッフと話し合い、2025年4月より水曜日午後の診察を終了することにしました。かっこよく言うなら、ゲートキーパーとして地域の健康を支える使命を一日でも長く果たせるように、少し身軽になったという感覚でしょうか。体力を温存しながら、これからも時流や風潮に惑わされず、しなやかで穏やかな「一隅(いちぐう)を照らす」スタンスを貫きたいと考えています。そしてこれからも、地域のすべての患者さんにとって、健康に関する悩みを気軽に相談できる窓口であり続けたいと願っています。